第百四話 蜜香ロイヤルミルクティーの試み
ストレートでの味わいを確かめた朔夜は、
次なるステップとしてミルクとの組み合わせに取りかかった。
「ストレートでも十分に甘い香りが立っていたけれど、
少し肌寒くなるこれからの夕方には、
濃厚で温まるミルクティーが絶対に喜ばれるはずだ」
朔夜がつぶやくと、スツールの上でクロノが
「うんうん」と相槌を打つように小さく尻尾を揺らす。
◆
小さな手鍋に少量の湯を沸かし、
惜しみなく蜜香茶の茶葉を投入して濃く抽出していく。
茶葉がふっくらと開き、深い琥珀色の濃縮液ができたところで、
新鮮なミルクをとぷとぷと注ぎ入れた。
弱火でじっくりと温めると、ミルクのまろやかな香りと
蜜香茶の花のような甘い香りが溶け合い、
厨房中を満たしていく。
沸騰直前で火を止め、茶こしを通してカップへと注ぐと、
淡く優しいクリーム色のロイヤルミルクティーが完成した。
◆
「よし、完成だ。仕上げにほんの少しだけハニードロップの蜂蜜を垂らして……」
湯気とともに立ち上る極上の香りに、
クロノも身を乗り出して、金色の瞳をキラキラと輝かせている。
朔夜はふうふうと息を吹きかけ、一口ゆっくりと含んだ。
「……あ、これは美味しい。
ミルクのコクに茶葉の香りが全然負けてないし、
後味の蜜のような甘みがより引き立っている」
◆
「クロノ、大成功だよ。
これなら夕暮れ時に冷えた身体を温めるのにもぴったりだ」
朔夜が微笑みかけると、クロノは満足そうに
「にゃふん」と喉を鳴らして朔夜の手に頭をごつんと擦り付けた。
表の通りからは、夕方の買い物客たちの賑やかな声が聞こえてくる。
晩夏から秋への架け橋となる、黒猫亭の新しい看板ドリンクが
ここに誕生したのだった。




