第百一話 祭りの余韻と秋の香草茶
百日記念の賑やかな一日が明け、黒猫亭にはいつもの落ち着いた朝が訪れていた。
看板を磨き終えた朔夜が店内に戻ると、カウンターの上でクロノが満足そうに長々と手足を伸ばしてくつろいでいる。
昨日は一日中みんなに可愛がられて大活躍だった看板猫も、心地よい達成感に包まれているようだ。
「クロノ、昨日は本当にお疲れ様。みんなすごく喜んでくれたな」
朔夜が声をかけると、クロノは金色の瞳をとろんと細めて「うにゃぁ」と喉を鳴らした。
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カランコロンと、いつもより少し早い時間にドアベルが鳴った。
「おはよう、サクヤさん。昨日はお祝いの席にお邪魔できて嬉しかったわ」
入ってきたのは、薬師のセレスさんだった。
手には丁寧に麻布で包まれた小さな籠を提げている。
「セレスさん、おはようございます! 昨日はありがとうございました」
「これね、百日のお祝いのお返しというわけじゃないのだけれど……今朝、薬草園で採れたばかりの『月光草』と秋の乾燥ハーブよ。サクヤさんのお店のお茶に使えないかしらと思って」
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包みを開くと、ふわりと澄んだ爽やかな香りと、どこか懐かしい甘い香草の匂いが店内に広がった。
「わあ……すごく清々しい香りですね。少し柑橘のような爽やかさと、深みのある甘さがあります」
「そうでしょう? 季節の変わり目で夏の疲れが出やすい時期だから、身体を温めて胃腸を整えるブレンドにぴったりなのよ」
カウンターから身を乗り出したクロノも、籠のハーブに興味津々で鼻を近づけ、くんくんと匂いを確かめている。
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朔夜はさっそく湯を沸かし、セレスさんのハーブを使った新しい温かいお茶を淹れて差し出した。
「ふう……とても優しくて、身体の奥まで染み渡る味ね」
「セレスさんのおかげで、秋に向けた素敵な一杯ができました」
百日という節目を越え、秋へと移りゆく風の中で。
黒猫亭のカウンターには、またひとつ新しい温もりが静かに溶け込んでいくのだった。




