スポーツの秋
食堂の前で小林と別れて少し歩くと、外の広場で時和がバスケットボールをしていた。大学の片隅にあって、普段はラグビー部が練習を行っているのだが、練習が始まるまでは誰でも利用できるのである。ラグビーの邪魔にならないところに、朽ち果てたバスケットゴールが一つ立っていた。
あの人たちは時和の学部友達だろうか。他の五人とも髪の毛を様々な色に染め、三対三で入り乱れる様は虹のようである。
俺は近くのベンチに座って、ブラックの缶コーヒーを開けた。夏ほどではないが、昼の日向はまだまだ温かい。スポーツに打ち込むのは結構だが、六人は日頃の運動不足が祟っているのか息も絶え絶えに動き回っていた。
時和も含めたチーム髪明るめの方が、ボールを長めに持っているので押しているのだろうが、シュートは入らない。というか、少なくとも俺がぼんやり眺めていた二十分の間では誰も入らなかった。全員がダウンしたところでお開きになったようである。目ざとく俺を見つけた時和が俺の方へとよれよれ歩いてきて、ベンチに倒れ込んだ。これは、救援が必要なほどの疲労だ。
「はあ、はあ。藤崎。よ。」
「よう。」
俺が持っていた、汗を抑えるシートをとりだして、彼の額を拭いてやる。
「スポーツドリンク奢って。」
「キュウリ味でいいなら。」
「いい。」
近くの自動販売機で、キュウリ味のミルクを買って渡した。
「お前。これ、お前。スポーツドリンクじゃないじゃん。」
「キュウリ味でいいって言ったじゃないか。」
「いや、まあ、そうだけどさあ。」
あれこれ言いつつも、紙パックにストローを刺す。寝転がったまま、器用にキュウリ味のそれを飲んだ。
「でも、美味いしさあ。これ。」
「よかったじゃん。」
彼は勢いよくすすり、空の紙パックをゴミ箱に投げ入れた。
「で、勝ったの?負けたの?」
「いや、そういうんじゃないから。俺たちの戦いはもっと高尚なやつだから。」
「お前のいいところは、嘘つかないところだって、自分で言ってたじゃないか。」
「負けた。一対ゼロで負けた。俺、中学のとき、バスケ得意だったんだけどなあ。体が動かなかったよ。なんでだろ?」
それは多分煙草のせいだと思ったが黙っておこう。その後俺は、時和の多少傷ついた心を助けるのに、打ち込んだ。




