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アリアーゼの花嫁修業 〜婚約破棄された最強令嬢の無自覚スパダリムーブが聖女を射抜き、世界を救う〜  作者: 遠崎カヲル
第三章 花嫁修業2 伝説の包丁

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21/55

Gカップ

 「まずは一つ目の試練じゃ」


 長老は懐から、一つの水晶玉を取り出した。

 澄んだ丸い玉だった。手のひらほどの大きさで、淡く、光を宿している。


「これは、ヴェリタスの瞳という魔道具じゃ。嘘をつけば、たちどころに赤く光る」


 長老はそれを、三人の前に掲げた。そして、アリアーゼをまっすぐに見据えた。


「おぬしは、なぜ、オリハルコンを手に入れようとするのか。答えよ!」


 アリアーゼは、胸を張った。そして。


「オリハルコンで、伝説の包丁を作るためですわ!!!」


 静寂が辺りを包んだ。


「……えっと?」


 長老の口から、間の抜けた声が漏れた。

 澄んだ水晶玉は、ぴくりとも反応しない。


 長老は慌てて咳払いをした。


「ご、ごほん。で、では問おう。その包丁で……何を、するつもりじゃ!」


「もちろん、お料理ですわ!」


 ……やっぱり、水晶玉は光らなかった。


「え……あ、そうなの? そのためのオリハルコン?」


 長老は、水晶玉をまじまじと見つめた。何度覗き込んでも、玉は澄んだまま。一点の曇りもない。


 リオナはそっと、ため息をついた。アッチムはそっぽを向いて口笛を吹いている。


 長老はしばらく、水晶玉とアリアーゼの顔を交互に見比べていた。やがて、観念したように口を開いた。


「……とりあえず。悪いことには、使わなそうぢゃから。クリアでいっか。うん」


 自分に言い聞かせるように、こくり、と頷いた。


    ◇ 


「で、では、二つ目の試練じゃ!!」


 長老は、気を取り直すように、声を張り上げた。ちょっぴり、威厳が戻った。

 長老は懐から羊皮紙と羽根ペンを取り出すと、さらさらと、何かを書きつけた。


「これは、神聖な古代文字じゃ。これを読み解き、その質問に答えよ!」


 長老はそう言って、三人の前に羊皮紙を差し出した。


「まあ!」


 アリアーゼは羊皮紙を受け取ると、まじまじと見つめた。そこには、見たことのない文字が書かれている。


「……だめですわ。さっぱり、分かりませんわ」


 横からアッチムが覗き込んだ。


「あー、この文字、見たことあるっすねぇ。でも……意味は、忘れたっす!」


「……」


 リオナは無言で、二人の間から羊皮紙を受け取った。


 (ここは、わたしが読むしかない、ということですね)


 神殿ではいくつもの古代文字を学んだ。この程度の古代文字なら読めるはずだ。リオナは文面に目を走らせた。


 そして。


 リオナの顔は、みるみるうちに赤くなった。思わず、羊皮紙から目を逸らしてしまう。


「どうしましたの、リオナ」


「い、いえ、あの……」


 リオナは、羊皮紙と長老の顔を交互に見た。


「これ……本当に、答えないと、だめですか……?」


「試練ぢゃからな」


 長老は、しれっと、言い放った。


 リオナはうつむいて、押し黙った。羊皮紙を握りしめた手が、微かに震えている。やがて、覚悟を決めたように顔をあげると、小さく息を吸った。


 そして。


「……と、トップが、90。あ、アンダーが、65……の、Gカップです」


 消え入りそうな声で、そう答えた。顔が、耳まで真っ赤だった。


「うむ!」


 長老は満足そうに、大きく頷いた。


「見事な、おっぱ――い、いや。見事な、知識ぢゃ! 若いのに大層な物(?)を持っておる! 二つ目の試練もクリアぢゃ!」


 リオナは、羊皮紙を、地面に叩きつけたい衝動を、必死でこらえた。


    ◇     


「よし。では……最後の試練じゃ」


 長老は、こほん、と咳払いをして、居住まいを正した。

 明らかに気配が変わった。声にも、これまでとは違う重みが宿った。


「これぞ、最大にして、最難関の試練じゃ。あそこに見えるのは、オリハルコンの眠る霊峰ゼルガイアじゃ。その入口には、古のゴーレムが、番人として据えられておる」


 長老は、ゆっくりと告げた。


「あれを、打ち破ってみせよ。この五百年、達成者がいない最大の試練じゃ。あのゴーレムを打ち破らぬ限り、霊峰への入り口は……」


「ちょ、長老大変です!」


 長老の声を遮るように、里の男が一人駆け寄ってきた。


「なんじゃ、騒々しい。今、大事な所なんじゃ!」


「そ、それが、その、試練のゴーレムが! 何者かによって倒されたようです!」


「……な、なんじゃと!」


 長老は目を見開いた。


「……あ、あの」


 アリアーゼが、申し訳なさそうに、長老に声をかけた。


「霊峰の入口の前に、いらした方でしたら、もう倒しましたけれど」


 長老の、動きが、止まった。


「あの、大きな、石の人形の方ですわよね。ここへ来る前に、ばったり、お会いして」


「あー。あれ、無駄じゃなかったんですねー」


 リオナは遠い目をした。


「あー! だから、見覚えあったんすねー! すっきりしたっす!」


 アッチムが、ぽん、と、手を打った。


 長老は、口を半開きにしたまま、固まっていた。やがて、わなわなと身体が震えだした。


 そして。


「…………試練クリアじゃああああ!!」


 里中に、長老の、悲痛な叫びが、こだました。!

三つの試練、まさかのあっさり(?)クリアです!

次回、新たな聖獣とご対面します。

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