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アリアーゼの花嫁修業 〜婚約破棄された最強令嬢の無自覚スパダリムーブが聖女を射抜き、世界を救う〜  作者: 遠崎カヲル
第三章 花嫁修業2 伝説の包丁

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三つの試練

 改めて、三人は、崩れたゴーレムを、振り返った。


 あれだけの死闘の末に倒した。だが、何の変化もない。宝が出るでも、扉が開くでも、道が現れるでもない。ただ、残骸が残っているだけだった。


「結局、こいつ……何だったんすかね」


 アッチムが、崩れた残骸を、つついた。


「分かりませんわ。扉の番人かと思ったのですけれど」


 そう言って、アリアーゼも、首をかしげた。


「でも、なーんか……ちょっと、見覚えある気が、するんすよねー」


 アッチムが首を傾げる。


「そんなことより、これからどうするんですか?」


 リオナが、不安そうに尋ねた。


「そうですわね……」


「そうっすねー」


 アリアーゼとアッチムは顔を見合わせた。だが、それ以上言葉が出てこない。

 リオナは小さくため息を吐いた。


「それならば、やはり、グラニス族の方々を頼るのが一番じゃないですか?」


 リオナの言葉に、アリアーゼはパッと表情が明るくなった。


「まあ! さすが、リオナは賢いですわ!」


「そうっすね。それが一番、てっとり早そうっす!」


 そんな事を言う二人に、リオナはギュッと拳を握りしめた。こめかみがピクピクと脈打っている。


(あんたたちのせいで、遠回りしたんじゃねーの?)


 かろうじて口にはしなかった。


    ◇ 

    

 それから、三人は、里を探して、歩き回った。

 だが、これ以上ないほど迷った。目印はない。街道も見つからない。

 陽も次第に傾いてきた。


「今日も野営でしょうか……」


 リオナは大きなため息をついた。

 アリアーゼが腕を組み、空を見上げる。


「空から見られれば、すぐですのに……」


「あっ」


 アッチムが、ぽんと手を叩いた。


「うち、そういや飛べるっす」


 次の瞬間、いつもの丸っこい鳥へと姿を変える。


「そんじゃ、いってくるっす!」


 ぱたぱたと羽ばたき、そのまま空高く舞い上がっていく。

 アリアーゼとリオナは、ぽかんと、その姿を見送った。


「……」


「……わたしたち、結構疲れてるんですね」


 リオナは、ぼそっとつぶやいた。


 ほどなくして、アッチムが勢いよく舞い降りてきた。


「見つけたっす! こっちっす!」


「まあ! さすがですわ!」


 アリアーゼの表情が、一気に明るくなった。

 リオナはホッとため息をついた。


 三人は、アッチムの案内で森の奥へと進んでいく。

 しばらく歩くと、木々がふっと途切れた。その先には、大きな岩山を背にした、美しい集落が広がっていた。


「ここが……グラニス族の里」


 リオナは、思わず肩の力を抜いた。

 感動よりも先に、疲労感が襲ってきた。


    ◇ 


 三人は里へと足を踏み入れた。


 石を積んだ家々が、身を寄せ合うように、立ち並んでいる。畑を耕す者、水を運ぶ者。素朴な暮らしの気配が、そこにあった。

 里の者たちが、三人に気づく。


「旅人……?」

「冒険者か? 久しぶりだな」


 ざわめきが、広がっていく。

 やがて、人垣の奥から、一人の老人が杖をつきながら進み出た。白い髭を長く伸ばし、深く皺の刻まれた顔をしている。里の長、といった風格だった。


「よくぞ、参られた。わしはこの里の長老じゃ。して、こんな辺ぴな里に何用かな」


 長老は、三人をじろりと見回した。


「はい」


 アリアーゼが進み出て、優雅に一礼した。


「お初にお目にかかります。わたくし、アリアーゼ・フォン・ローレンスと申します。ぶしつけながら、お願いごとがありまして、参上いたしました」


 アリアーゼが名乗ると、長老は目を見開いた。


「その名……もしや、グランベル最強騎士、アリアーゼ殿か?」


「そう呼ばれた時期もございましたわ。今は国を離れ、一介の修行者でございます」


 長老は目を細めた。


「失礼だが、噂は伺っておる。王太子から婚約を破棄されて、国を出たと。それは、誠であったか。それで……アリアーゼ殿の願いとは、何かな?」


 アリアーゼは、静かに居住まいを正した。


「では、単刀直入に申します。わたくし、伝説の素材、オリハルコンを求めて、この地に参りましたの」


 その瞬間、その場はしんと静まり返った。


「オリハルコン……やはり、そうじゃったか」


 長老の目つきが変わった。


「いかにも。この地にはオリハルコンが眠っておる。しかし、あれは聖なる金属。求められるままに渡せる物ではないのじゃ」


「存じております。ですが、わたくしには、どうしても手に入れなければならない理由があるのです。何か条件があるのなら、お聞かせくださいませ」


 アリアーゼが言い終わると、長老は一度、静かに目を閉じた。

 リオナは、不安そうに二人のやり取りを見つめている。


 やがて長老は、ゆっくりと口を開いた。


「あれを求めて、これまで幾人もの者が、この里を訪れた。じゃが……」


 長老の声が、低くなる。


「みな、私利私欲に走った、欲深き者ばかりじゃった。力を誇る者、財を求める者、名声を欲する者……。ゆえに、我らは、その者たちに、等しく三つの試練を課してきた」


 長老は、まっすぐアリアーゼを見据えた。


「試練を乗り越えし者にのみ、オリハルコンは授けられる。おぬしたちに、その試練を受ける覚悟はあるか?」


 アリアーゼは、一歩前へ進み出た。


「もちろんでございますわ」


 その声に、迷いはなかった。


「この五百年、ただの一人も試練を乗り越えた者はおらん。途中で諦めた者もおれば、命を落した者もおる。それでもか?」


「望むところですわ!」


 アリアーゼは、迷いなく頷いた。


「……よかろう」


 長老は、ふっと口の端を上げた。

ついにグラニス族の里へたどり着きました。

次回、オリハルコンを手に入れるための試練が始まります!

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