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アリアーゼの花嫁修業 〜婚約破棄された最強令嬢の無自覚スパダリムーブが聖女を射抜き、世界を救う〜  作者: 遠崎カヲル
第三章 花嫁修業2 伝説の包丁

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役割分担してみました

「あいつには、剣は効かないと思うっすよー」


 岩の上にちょこんと座ったアッチムが、足をぶらぶらさせながら、のんびりした声で言った。


「アッチム様! あなたも手伝ってください!」


 リオナが叫ぶ。

 アッチムはひらひらと手を振った。


「あー、うち、まだ本調子じゃないんで。戦うのは無理っす」


「役立たず!」


 リオナが、声を荒げる。


「まあまあ。その代わり、いいこと教えてあげるっす」


 アッチムは、悪びれもせず、ゴーレムを指さした。


「あいつを攻略するには、段階的に動きを封じるといいっす」


 アッチムはリオナに向き直った。


「まずは足っすね。リオナ、できるっすよね?」


 ――さすが、聖獣。

 腹立たしいけれど、こういう時の見立ては的確だ。リオナの頭に、一瞬で攻略の絵が浮かんだ。


 リオナは両手を前に構えた。


「アリアーゼ様! 支援します!」


「頼みますわ!」


 ゴーレムが、再び拳を振り上げた。

 その動きは、速い。だが、それだけではなかった。アリアーゼが横へ動こうとするより先に、ゴーレムの拳は、その逃げ道を塞ぐように振り下ろされていた。


「……!」


 アリアーゼはとっさに身体をひねり、その拳を避けた。


「こちらの動きを先読みしているようですわね」


「かしこまりました。ならば!」


 リオナは、すぐさま詠唱した。


「大気の風よ、集え!  砂を巻き上げ、その目を塞げ!」


 突風が、砂と小石を巻き上げ、ゴーレムの眼窩へと吹きつける。

 だが、ゴーレムは片腕を上げ、事もなげにそれを払いのけた。


「防がれた……!?」


 砂煙が晴れる。ゴーレムは、微動だにしていなかった。


「賢いですわね」


 アリアーゼが、剣を構えたまま、目を細めた。


「ただ大きいだけの、木偶の坊ではないようですわ」


「アリアーゼ様、笑っている場合では……!」


「うふふ。だからこそ、燃えるのですわ」


 アリアーゼの声は、どこか楽しげだった。

  

    ◇ 


「やはり、足を止めるのが先決ですね! 大地の水よ、集え。滲み出て姿を現せ!」


 リオナの目の前の地面に亀裂が走り、隙間から、水がじわりと滲み出した。


「アリアーゼ様! こちらへ!」


 アリアーゼは、一瞬でリオナの意図を悟った。 


「承知しましたわ」


 ゴーレムの拳が迫る。

 アリアーゼは、その間合いを正確に見極め、拳が届く寸前で身を翻す。


「ゴーレムさん。こちらですわ」


 挑発するように微笑み、後方へ跳ぶ。ゴーレムは逃がすまいと、その後を追う。

 そして、ゴーレムの足が濡れた地面にかかった。


「今だ! 地面の水よ! 氷となりて、その足を繋ぎ止めよ!」


 リオナの詠唱と共に、地面からメキメキと氷が生えた。

 氷はゴーレムの足に絡みつき、地面へと繋ぎ止めた。


「ひゅー。やるっすねえ」


 アッチムは口笛を鳴らし、感心したように言った。


「次は腕っすね。あいつ、関節が弱点っすよ」


「関節……」


 リオナは、ゴーレムの体を、素早く観察した。岩の体は隙間なく硬い。だが、腕や脚の付け根だけは、岩と岩の継ぎ目が、わずかに覗いている。


「アリアーゼ様! 関節を狙います! 対象は右腕です!」


「承知しましたわ!」


 ゴーレムは、なおも動こうと足に力を込める。だが、氷ついた足はびくともしない。


「いきますわ!」


 アリアーゼは、一気に右腕の間合いへ飛び込んだ。


「グ、ゴォォッ!」


 ゴーレムはアリアーゼへ向かって右拳を振り下ろした。アリアーゼは軽やかに身をひねり、その一撃をかわす。


 拳が地面にめり込み、右腕が伸びきった。


「よしっ!」


 リオナは両手を突き出した。


「大気の風よ、集え! あの岩を浮かし、放て!」


 先の尖った大岩がぶわっと宙に浮き、ゴーレムの伸びきった腕の付け根へ突き刺さった。


 ――バキンッ!


 関節が砕け、右腕が地面へ崩れ落ちる。


「グ、ゴォォォッ!」


 ゴーレムは左腕だけを残し、怒りの咆哮を上げた。


「上出来っすね!」 


 アッチムが再び口を開いた。


「アリアーゼ! あいつの本体は後頭部の魔石っす!」


「お任せくださいませ!」


 アリアーゼは、にやりと笑った。


「グ、ゴォォッ!」


 残された左拳が唸りを上げるが、アリアーゼは軽やかに身をかわした。拳は勢いよく地面へと突き刺さる。


「いただきですわ!」


 アリアーゼは、その腕を駆け上がった。あっという間に肩へ飛び移る。


「終わりですわ!」


 剣が一直線に振り下ろされた。


 ――パキィン!


 後頭部に埋め込まれた魔石へ、剣が深々と突き刺さり、魔石は砕け散った。


「ゴ、ゴォォォォォォッ!」


 ゴーレムは悲鳴を上げるように全身を震わせた。巨体に無数の亀裂が走る。

 やがて。


 ――ズズゥン!


 ゴーレムは音を立てて崩れ落ちた。


    ◇ 


「やったあ!」


「やりましたわ!」


 リオナとアリアーゼは、同時に駆け寄った。二人は勢いよく抱き合う。

 頬と頬がぴたりと触れた。リオナは我に返った。


(あれ? アリアーゼ様、近くね?)


 リオナは顔を真っ赤にして、石人形《ゴーレム》のように固まった。


 アリアーゼ様の頬が、自分の頬にピタリとくっついて離れない。 

 リオナの鼓動が意に反して早くなる。


(アリアーゼ様、近すぎますー!)


 リオナの内心をよそに、アリアーゼは、うっとりと目を細め、頬をすりすりと擦り寄せている。


「ふふ。リオナの頬、やわらかいですわ」


 リオナの心臓は、今にも飛び出しそうだった。これ以上は、気を失ってしまうかもしれない。


 その時。


「はいはーい。いちゃいちゃするのは、そこまでっすよー」


 アッチムが、ぱんぱんと手を叩きながら言った。

 その瞬間、リオナは弾かれたように、アリアーゼから飛びのいた。


「い、いちゃいちゃなんて、してませんっ!」


「あら」


 アリアーゼが、きょとんと、首をかしげる。


「楽しかったですのに」


「もう! お二人とも、からかわないでください!」


 リオナは、真っ赤な顔のまま叫んだ。ださい!

初めての共闘で、巨大なゴーレムを打ち破りました。

次回、グラニス族の里へ。オリハルコンを手に入れるための試練が始まります。

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