98.死神とのデート
その後、死神はしばらく私の屋敷に居座った。
理由を聞くと、
「理由なんて必要?なんとなくってだけ」
と返された。
…確かに…必要ないかも。
そんなわけで、私の屋敷に一柱、同居神が増えた。
…同居神とは?
「一緒に街を回ってみない?」
死神がニコリとした表情でそう提案してくる。
「わかった」
今日は特に何も予定無いし。
軽く支度をして、死神用の服を作って、着せて、屋敷を出る。
「どこか、行きたいところあるの?」
「いや。ただ◆◆ちゃんと一緒に街を歩きたいなって」
うん?今…何か…
「あぁ、まだ明かされてないんだ。まぁいいや」
「…?」
「あ、気にしなくて良いからね。ソフィア…ちゃん?」
…まあ…いっか。
死神と手を繋ぎ、エストブルクの中央道路を練り歩く。
「ね、ソフィアちゃん、あれ買ってよ」
死神がそう言い指差した先にはピアノがあった。
黒く、そこそこの大きさがある物で、楽器店の店頭に出されていた。
「んー…弾けるの?」
「弾く?あぁ…あれ楽器なんだ。てっきり『お手軽断頭台』の類いかと…」
「…『お手軽断頭台』…?」
「冗談、冗談。深い意味は無いから」
「そっか」
今度はレストランに来た。
「好きなの頼めば良いよ。私が払うから」
そう言うと死神はウェイターを呼んだ。
「えっとぉ…これとこれとこれと___くださいっ!」
そんな風に、抑揚ある声で死神は言う。
年相応…というか、なんなら肉体年齢より5歳幼い印象を受ける。
ちらっとウェイターがこちらを向いたので、軽く頷くと『かしこまりました』と言い、厨房へ歩いていった。
私は死神の保護者扱いされてるらしい。
「そんな声も出せるんだ?」
「元からこんな声…いつも通りだよ?お姉ちゃん!」
抑揚のある声で死神はそう言うと、ペロッと舌を出す。
「そっか。たくさん食べるんだよ、妹ちゃん」
そう言って撫でると、死神の顔は『にへっ』となった。
「ふふふっ……やっぱり変わらないね…◆…ソフィアちゃんは」
「…変わらない?」
何の話…?
「うん。少し優しくなり過ぎた気はするけどね?」
…優しくなり過ぎた?
まあ…いいや。
「お持ちしました」
死神の頼んだ食べ物が運ばれてくる。
ケーキに、シュークリームに、フレンチトースト…
甘いものばかりで、見ているだけで胃もたれしそうだった。
「いただきます!…う…ぐん…っ……薄〜っ…ソフィアちゃんも一緒に食べてよ」
…仕方ない。
「わかった」
まずはフレンチトーストから手をつけることにした。




