97.玉依政変
『新聞ツィタデレ
玉依皇国にて政変。
___日、本紙の玉依皇国支部より臨時の魔信報があり、___皇国首都の無血開城があったとのこと。___『将軍』の安否は不明であり、政変を起こした勢力は我が国と関係の深い『蝶州国』とみられている。______新政府の動向によっては、我が国との友好関係が更に強固なものと___』
薩長同盟による倒幕運動っぽい動き…
「あら?あんたの前世でも似たようなことが起きていたの?」
と、イザベラ。
最近は仕事があまりないから…と、ここ1ヶ月ほど、虚空からではなく、生身の身体同士で話している。
…イザベラ、もしかして私の前世、知らないの?
「あんたの記憶と経歴は一通り把握してるわ。でも歴史はそんな覚えてないわよ。担当外の世界線の歴史なんて覚えるだけ無駄なんだから」
そっか。
一週間後。
『新聞ツィタデレ
ライヒ=玉依間の国交締結!
___日、玉依皇国の新政府はライヒとの国交締結を発表______これは"ライヒ=蝶州友好条約"の_____また"ライヒ=玉依友好条約"に関しても前向きに議論され___』
流石ラディナ…手を打つのが早い。
「そういえばラディナも前世は同じ国で生きてたのね」
と、イザベラ。
まぁ、不思議なことに、私の周りには前世日本人が多い。
「あぁ、それは簡単な話。結論から言ってしまえば、魂の卸し役と魂の転生役がコネで繋がってるから、偏りやすいってわけ」
2個のマカロンを両手で持ち、イザベラはそんな説明をする。
「へぇ…」
なんとも世知辛い話に思える。
「実際、あんたを私に投げてきた死神…あ〜卸し役も、うちのお得意様だし」
へぇ…どんな神様なの?
「……今から話してあげるから、絶対心の中でその神の名前復唱しないでね?」
何故?
「…名前を言うと反応してくるから。普段は仕事こなしつつ複数人を流し見…って程度みたいだけど」
なんで反応されるのがだめなの?
「…面倒なのよ」
…そっか。わかった。
「じゃあ、紹介するわ。その神の名前は___
「ねぇ、何の話してるの?」
おおよそ人間とは認識できない…無機質な声。
声の方向を向くと、そこには前世の私がいた。
…12歳の頃の姿だろうか。
「チッ…相変わらず悪趣味ね?全部見てたわけ?」
イザベラは不機嫌そうに言う。
…これが…言ってた死神なのだろうか。
「ふふっ…イザベラはおかしなことを言うんだね。常に見てるんだから、行動を見逃すわけないでしょ」
そう言って死神はマカロンを一つ取り、口に放り込む。
「ん、甘い」
…ここだけ切り取れば、ただの12歳の私である。
「ふん、10年近く放置してた癖に。それに、見てる時間にも限りがあるでしょ」
イザベラはそんなことを呟く。
「まぁ、面白くなさそうなところは見てないよ?」
そう言いながら死神は私にマカロンを一つ手渡してくる。
受け取ると死神は私に微笑んだ。
「いつも思うけれど…どうやって面白いか、面白くないかを判別してるわけ?」
イザベラは私の貰ったマカロンを強引に奪い取り、死神の口に押し込む。
「ん…ぐん…ぐ…いきなりは良くないよ。イザベラ」
「質問に答えなさい」
「まぁ、強いて言うなら『絶対神の導き』ってところ」
「はぁ…?」
「あるでしょ?私達、神でも変えられない理は。後はまあ…察して。これ以上喋ると、この子に悪影響だし」
そう言って、死神はこちらを向いた。




