93.ヴィナの服探し
ミオ視点
とりあえず、年相応の私服を着て、ヴィナを連れてエストブルク市街を回る。
目が合った相手には全員、人差し指を口に運ぶジェスチャーで『黙っていて欲しい』の意を示す。
ほとんどの相手はこくりと頷いていたので、まぁ大丈夫だろう。
「何か気になる服とかある?」
今、手を引いているヴィナに対して、そう問う。
「え…えっと………」
ヴィナはそう言い淀む。
「お金は私が出すから、好きなの買って」
私にはヴィナの好きな服なんて分からない。
「その…じゃあ…ここの服屋さん…見たい…です」
ヴィナはモジモジとしながらそう言い、一つの服屋を指差す。
「わかった」
言われた通りの服屋に来店。
中には古着がたくさんあった。
…古着屋らしい。
ヴィナは早々に奥へと消えていった。
私も何か見ようかな…
その古着屋は女物が少なめで、あまり魅力的なものは見つからなかった。
極端に高級そうなものか、極端に庶民的なものしかなく…私の好みには合わない。
「ミオ様…どう…でしょう?」
ヴィナはそう言い、試着中と思しき服を見せてくる。
…私の今着ている服に雰囲気が酷似している気がする。
「ねぇヴィナ…本当にそれで良いの?」
「…えっ………えっと…私…こ、これが良い…と…思って」
「そっか。それなら別に良いのよ」
「…!ありがとうございます!」
ヴィナの顔に、パッと笑顔が咲いた。
…本当にこれが、少し前まで『誘拐犯の成人女性』だったものの姿なのだろうか。
支払いを済ませて、次は新生活を始めるヴィナ用の雑貨を買うことにした。
ヴィナの手を引き、そこら辺の雑貨店に入店。
何故か今度は1人で動かず、私の手を引いて歩き回った。
刃物エリアや工具品エリアには何故か近づかないルートで、雑貨店内を隅々まで確認。
ヴィナは、時計や歯磨き等、ちゃんと必要なものを全て揃えていた。
支払いを済ませて退店。
臨時ボーナスで釣った部下達に、買ったものを運ばせて、ヴィナと共に昼食のためレストランに入店。
ヴィナにメニューを渡し、注文が決まり次第、ウェイターを呼んで注文を伝える。
…意外というか、年相応というか、ヴィナは甘味を多めに頼んでいた。
私は人間の味覚を失ったので、特に味なんかは気にせず、スタンダードなサラダとステーキを頼む。
栄養が摂れればそれで良い。
とても薄味な肉をナイフとフォークで切り、口に入れつつ、ヴィナを観察する。
ヴィナはナイフとフォークに手こずりつつ、私を真似してステーキを食べていた。
…あまりナイフとフォークは扱ったことがないらしい。
今度…扱い方教えてあげようかな。




