89.ミアとロザの共同生活
「おはよう!ミア!」
私がぱちりと目を開けると同時に、目の前で寝転がっていたロザがそう声をあげた。
「おはよう」
そう返すと、ロザはニコッと笑った。
「今日はどんな夢を見たの?」
「うーん…学校の夢…かな」
校舎の屋上から夜空を眺める夢…
「そうなんだ!良いなぁ…見てみたい…」
ここ10年、二人で血を飲みあった結果、口に出さずとも思っていることが通じるようになった。
性格も二人が混ざったような感じで…元がどんなだったかは忘れてしまったものの、多分前とは違う。
無論、口調や好物なんかも混ざり…ある意味、楽な生活になった。
同じ価値観だし…同じ食べ物が食べたくなるし…不安の周期も同じなので何かと楽である。
「今日は…」
「フレンチトーストね。わかった」
「うん!一緒に作ろ〜」
「ふっ……ふふふふっ…隙あり〜っ!」
フレンチトーストを作っていると、後ろからロザに噛み付かれた。
…私も吸血したくなってきた。
バッと振り返り、押し倒してロザの首筋を噛むと、ロザの噛み付きも強くなった。
「ぷはっ…もうお腹いっぱい」
少しすればロザは私の身体から歯を引き抜いて、そう言った。
…私も満足。
口を拭って、フレンチトースト作りを再開する。
「やっぱりフレンチトースト最高ー!」
ロザはできあがったフレンチトーストをほうばって、そう言う。
私も一口食べると、その気持ちがよくわかった。
滑らかな蜂蜜に、カリッとしたパンの外面に、ふわっとした内面…それに甘い匂いと味。
食べ終わり、キッチンで食器を洗い終えたところで、
「あ、もうそろそろ時間!」
とロザが言い出した。
…そうだ、今日は仕事があるんだった。
「…早く着替えないと」
私はそう言い、席を立って、血で汚れた服を脱ぐ。
ロザも同じ行動をし始めた。
…間に合うだろうか。
二人で飛行魔法を使ったことで、ギリギリ定時に間に合った。
血で汚れていない服を身にまとって、この10年ですっかり要塞化された宮殿…宮城に入る。
発展に伴い、皇帝の権力が強化され、個人崇拝も強化…警備も増えたのである。
もっとも、現皇帝はちょっとやそっとのことでは死なない不老不死の存在なので、警備なんて無駄だと私達は思っているけれど。
「ラディナ〜」
二人で皇帝に拝謁する。
「あ、おはよう………うん?もしかして朝、吸い合いした?…匂うわよ?」
……バレた…
「ごめんなさい…悪ふざけで」
そう返す。
「別に二人のプライベートに踏み込むつもりは無いから、好きにすれば良いけど…匂いを持ち込まないで欲しい。……私も欲しくなるから」
そうラディナは言う。
「「はーい」」
…仕事のある日は朝から吸い合うのはやめよう。




