87.誘拐犯は死ぬ運命
引き続き、ミオ視点
1件目。
そこは古ぼけた家でたくさんの植物が絡みついた、時代に取り残されたような構造物と言えた。
ドンと扉を蹴り開けて、乗り込む。
そこには小さな子供たちが4人いた。
…え?
「あ、えと…大丈夫?」
4人は首を横に振る。
…どういう状況…?
「えっと……助けに来たよ」
そう言って4人に近づき、1人ずつ撫でると、子供達は雪崩を打つかの如く途端に泣き出した。
「っ…っ…怖かった…」
「…っお母さんのところ帰りたい…」
「ご飯食べたいよ…」
よくよく観察してみると、子供達がいた場所には血で描かれた魔法陣らしきものがあった。
…何かの儀式の生贄として拐われた…?
「とりあえず、今すぐ温かいところへ案内するから…このお姉さんにしっかり掴まってて」
そう言ってリムリーを指差すと、リムリーはこちらを向いて小さく頷いた。
4人は群がるようにリムリーに掴まって、リムリーはパッと消える。
そして10分ほどした後、帰ってきた。
「『シヴグラードカ』に預けてきた」
「ありがとう。とりあえずこの魔法陣は後回しで、次行こう」
「わかった」
リムリーはそう言って私に抱きつくと、次の瞬間には2件目となる家に着いていた。
2件目。
そこは廃棄された屋敷らしかった。ツタが1階を侵食し、さながら魔女の隠れ家のような雰囲気がある。
蹴ってもなかなか開かないため、収納から銃杖を取り出し、ドアノブ部分に発砲。
続けて蹴ることで開けることができた。
…薄暗い屋敷の中、そこには少女が1人だけいた。
中央階段の上の方、ちょこんと座り、こちらを見ている。
………反応は1人分以上あるはずなのに…
「…そこのお嬢ちゃん…ここで何してるの?」
「…」
「お姉さんに教えてくれない?」
「…」
怪訝に思ったのか、リムリーがひょこりと顔を出す。
それを見たからなのか、少女の口は開いた。
「目的の子どもなら、ここにはいない。それにしても…死神なんか引き連れて、なんとも物騒ね」
私には何故かその声が…人間のものとは思えなかった。
「元、死神ですが…」
何故かリムリーは敬語でそう話す。
…知人?
「匂いは相変わらず死神よ。気質もまた同じ」
少女は両手を肩の高さにあげ、首を傾げた。
「あ…はい。では、失礼します」
私に口を挟ませない勢いで、そうリムリーが言い、扉を閉じた。
「誰?あの子」
「…この世界の…いや、また今度話すから…今は捜査を続けよう」
言い淀んだリムリーの顔を見て、本当に言いたくないんだと察することができた。
「わかった」
大人しく従って、次に行く。
3件目。
そこは1件目と似通った家だった。
扉を蹴り開けると、椅子に縛られた市長の娘がいて、その周りには二人の男女がいた。
まだ2人ともこちらに振り向ききれてない。
…とりあえず制圧しよう。
指を鳴らすと家の中の植物達が目にも止まらぬ速さで成長し、男女に絡みついた。
「ぐっ…植物魔法…!?」
「噂は本当だったのかよッ…」
2人がそうほざく。
「お前らが犯人?」
相手を完全に拘束できたところで、いつもよりドスの効いた声でそう言い、2人を睨みつける。
「ハッ!ならどうなるんだ?」
男は状況をわかっていないのか、のうのうとそう返してくる。
っ…チッ…
パチンと指を鳴らして、植物魔法で男の人差し指を裂く。
男は激しく叫び、痛みを表現する。
…そんなことはどうでも良い。
「お前らが犯人だということはわかった。で、動機は?」
「最近、調子の良い『エストブルク・マフィア』に…罪を被せて…ちょっとばかし勢いを…弱めよう…かと」
女は何故かそう言い淀む。
「そんなことのために子供を誘拐…?」
…イラつきが止まらない半面、冷静に相手を分析もしていた。
「…その訛り…あんたらルーシル人か」
「…っ!?」
女が動揺する。この反応は…どうやら当たりらしい。
となるとリヴァ・マフィア辺りの回し者か…
まぁ、どうせこの2人は逃げられないし、市長の娘を解放して、家に帰すまで放置しても良いだろう。
その後に…ちょちょいと虐めてあげれば色々と情報も吐くだろう。
「大丈夫?」
拘束を解き、そう言って抱きしめる。
「うん……っ…!ミオお姉ちゃんが来るって信じてたもんっ…!頑張って耐えたよ…っ……!」
大粒の涙を零しながらそう言ってくれた。
「ありがとう…本当によく耐えたね…」
この子は本当に…強い。
…今すぐ帰してあげよう。




