82.信仰契約
引き続き、ミオ視点。
「とりあえず契約する神様を個室に呼んでおいたから、話して、合うようだったら契約して。合わなかったら別に断って良いからね」
ソフィア姉はレオと私にそう言うと、立ち上がり、私たちの手を引いて歩き始めた。
…っ…ソフィア姉の手…っ…冷たくて気持ちいい…
レオが先に個室へ入り、私はその隣の個室に入った。
「初めまして」
扉を開けて飛び込んできた女神の姿は…それはもう美しかった。
段々と黒くなる深緑の髪に、鋭い赤の目、黒いドレスと銀の薔薇のブローチ…そして周りに舞う綺麗な黒い微粒子。
…あ、挨拶を返さないと。
「こ、こんにちは」
「そんな褒めても何にもないよ」
…っ…心の声、聞かれてた?
ハスキーな声の女神様は瞬きの合間に目の前まで歩み寄り、私の鼻にツンと触れた。
やばいっ…この女神様好き!
「私は少し前まで、二百年間ほど死神をやってたの」
一度、女神様と共に腰を落ち着けて、幾らか話をする。
死神…なんだか格好良い…
「あ、貴女が思っているようなものじゃなくて…もっと事務的で、大変なの」
そう言っている女神様の無表情な顔が、一瞬苦みを帯びた気がした。
…鎌を持って走り回る職業なのだろうか。
「書類を持って走り回る職業」
…思った以上に世俗的というか…
「でも、格好良い」
そう本音を言うと、
「ふっ…面白い子」
そう女神様は評価してくれた。
嬉しいっ…
「…それで、契約の話をするけど、まずは確認。私で良いの?」
「もちろん!」
「…私、上位神じゃなくて準上位神よ?一般的な信仰契約よりもレベルが低いかもしれないわ」
…?だからどうしたのだろう。
私は女神様が好きだから契約するのであって、別に能力…とか…あっ心読まれてるんだった__
「ええ、全部聴こえてる……ありがとう。私も貴女が好きだわ」
………っ…えっ!?
やばっ…神様に告白されちゃった!
「じゃあ、契約をするから…ちょっと目を瞑っていて」
そう言って女神様は私の目に手を翳す。
目を瞑る。
…女神様は何かをしているのか、ぶつぶつと呪文らしき言葉を唱えている。
しばらく待っていると、唇に感触を覚えた。
柔らかく…冷たい感覚………唇?
そこから何か柔らかい…温かいような、冷たいような液体が入り込んでくる感覚がした。
えっ……待ってっ…今キス…
「はいできた。目を開けて良いよ」
目の前には女神様の綺麗な顔があった…けど少しだけさっきとは違う。
♣︎の形をした黒い…タトゥー?が右頬に書いてあって…
「貴女にも付いたのよ。これで契約成立ね」
そう言って女神様は優しく私の右頬に触れた。
やばっ…距離が近い…
「あ、ごめん。人間の距離感が分からなくて…」
スっと女神様は距離を取った。
「だ、大丈夫!」
むしろ常に近距離でも…
「あ、そういえば貴女…名前なんて言うの?」
女神様がそう聞いてくれたので
「ミオ・シヴグラードって言うの!」
とちゃんと答えた。
あれ?
「女神様の名前って?」
「私は上位神じゃないから…名前は無い。まぁでも、グリム・リーパーから取って…リム・リーとか呼んでくれれば良いよ」
「わかった!リムリー様!」
「『様』は要らない」
「んっリムリー!」
「それで良い」




