78.死神
非ソフィア視点
神界というのは世知辛いものである。
賃金概念を無理やり『保有魔力量の受け渡し』に置き変えた、ほぼ無賃労働の体制に、登録がすごく面倒な『自分の世界を作る』という行為…上位神は下級神が支えているため、好きに出歩いたり、人間にちょっかいをかけたりできるゆとりがあるものの、下位神にはそんなものは無い。やりがいがあるとすれば、自分が担当している世界の『推し』を支えることができる…くらいなもので、それすらも基本的に10年ほどで配置を変えられるため、あまり…やりがいにはなっていない。
…私の場合は最悪である。上司は精神論でなんでも解決しようとする上位神で、担当部署は一番評価点数の低い『死神部』。その世界線における死者の管理と、魂の移送をやる日陰部署で、やることは結構大事なのに、冷遇されている。
今日も今日とて…207年目の感謝されない仕事が始まる。
真っ暗な空間の中、大きな伸びをして、自分なりの一日を始めた。
今日の私のノルマは122件。全て今日中に他世界線へ送らないと、どんどん魂が摩耗して、転生時の記憶が変に減ってしまう。
この間、新人のやらかしが発覚して、2年近く放置されていた魂の存在が浮き彫りになり、そのせいで現在、魂の容量に余裕がある世界線があまりない。
ちなみにその新人は即日解雇され、記憶を削除、デバフ付きの『再出発』の措置が為されたのだそう。
…まぁ…妥当だろう。
この世界で生きていくのに、人間界以上に大切なのは人脈ならぬ『神脈』である。
早速、その『神脈』の一つに連絡し、80人の枠を確保。
もう1つには断られたものの、残りはたった42人である。
…足で稼ごう。
他世界線の転生部へアポを取り、『うわっ…死神部だ』なんて貶されながら、優しい神を探し、枠を確保。八部署を周り、ノルマを達成した。
タイマーを見るときっちり8時間。よし、定時…
「先輩!助けてください!」
…最悪。
私だけがいた真っ暗な空間に、後輩が飛び込んできた。
「…はぁ…どうしたの?」
「23人分の枠が足りなくて…ノルマが達成できなさそうなんです…」
その後輩は今にも泣き出しそうな声でそう言ってくる。
…ぐ…ぅ…せっかく今日は買った顕現用素体を弄れると…ぅぅ…
「わかった。一緒に頭下げにいこう。行くよ」
「はい!ありがとうございます先輩!」
結局、合計で12時間働くことになった。
…もう寝て起きてシャワーを浴びて、味のないご飯を食べたら次の仕事が来てしまう。
相変わらず…終わってる。下位神って。
帰宅すると何かがポストに入っていた。
取り出してみると、どこかの世界線の郵政部の判子に、メルヘンの雰囲気もへったくれもない封筒。
開けてみると…なんと転属命令である。
死神部勤務歴207年の私にもやっと他部へ転属が?
まぁ…どうせまた他世界線の死神部だろう。
少しだけ期待はしているものの、そんなに信じてはいない。
………って本当に他部への転属命令じゃん……?
…っぇっえぇぇ!!!!??
『転属命令。貴女は本日付で『準上位神職』となり、___世界線の転生部人事課へ転属することとなる。今まで207年間、死神部としてよく頑張ってくれました。168時間の臨時休暇をこちらで取りましたので、良ければご活用ください。
転生部人事課課長、上位神イザベラ』
私は自分が神なのも忘れて両手で手紙を掴み、跪いて、拝んだ。
転生部といえば一番やりがいがあって、しかも出世が近い場所である。しかも…準上位神職となれば、上位神くらいには遊び回れるゆとりがある…!
まずは1週間分の休暇をどう満喫するかの計画を建てることにした。




