76.幼いソフィア
イザベラ視点
とりあえず朝食を与えて、様子を見ることにした。
ソフィアのものを真似たフレンチトーストを作り、与える。
幼いソフィアは嫌な顔一つせず、『ありがとうございます』と言って、ナイフとフォークで丁寧にフレンチトーストを食べ始めた。
「どう?元気出た?」
そう聞くと
「はい。久しぶりの甘味で、とても美味しいです」
「………食事って最後に…いつ食べたの?」
「…?一昨日ですが」
怖…
「も、もっとちゃんと食べなさい!大丈夫?おかわりもたくさん作ってあげるから!」
「あ、っそんな…大丈夫です…私のせいなので」
そう、幼いソフィアは言う。
意味がわからない。子供に『私のせい』なんて言わせる親の気が知れない。
そんな言葉をグッと抑えて、ちゃんと言葉を選ぶ。
「いい?貴女…食事はとても大切なものなの。ちゃんと食べたい時は食べたいって言わないと…死んじゃうわよ?」
そう言って幼いソフィアを抱きしめ、優しく頭を撫でる。
幼いソフィアはピクリと硬直し、しばらくすると啜り泣く声が聞こえ始めた。
何か間違ったことを言ってしまっただろうか。
「ごめんなさい。涙…ご、ごめんなさい…心配させちゃって…えっ…ごめ__
「謝らないの。そういう時はちゃんとありがとうって言いなさい」
「う…あ…ありがとうございます…」
「よし。良い子ね」
「で、でも…何もやってな__
「何もやってなくても、貴女は良い子なの」
「うう…それなら私はどう生きればいいのぉ……」
「どう生きるも自分次第よ。今決められないのなら、決められるまで生きる…くらいの気概で良いの」
その言葉を聞いたからか、数分ほど、幼いソフィアはただ啜り泣くだけで、それが終わると言葉を発した。
「……わかった。イザベラお姉さん」
「よしよし、良い子」
…もうそろそろ良いかしら。
ソフィアに再び魔法をかけて、精神年齢を元に戻す。
数十分もすれば、いつも通りのソフィアが戻ってきた。
「おはよう」
「…おはよう。体調は大丈夫?」
「元気だよ」
「『煙草』と聞いても何も感じない?」
そう聞くと、ソフィアは少し経ってから
「…まだ…少し…ダメかも」
と言った。
「……そう言えただけでも充分よ。今日は安静にしてなさい」
立ち上がり、廊下へと繋がる扉に手をかける。
「…っ………っ……ありがとう……イザベラ」
そんな風にソフィアが言うので振り返ると…静かに涙を流していた。シーツにポタリと雫が落ちる。
…泣けるようになった…らしい。
やっと…やっとやっとやっと…泣けるように…
今までどんなことがあっても泣かなかったソフィアが…
私の中で何か糸が切れたような感覚がした。
「当然よ。私は神、貴女のこと…なんて…っ…」
目が潤んで、視界がぼやける。
頬を伝う雫は幾らか乱暴に拭っても、また流れ出す。
「…ふ…ぁ…っ……心配だったのよ…っ…もう…!」
…貰い泣きしちゃったじゃない!もう!私の馬鹿!
私はソフィアを抱きしめるためにベッドへ駆け出した。




