70.皇帝少女
皇帝って朕が一人称のイメージしかないですけど、私には朕とか言ってる人の喋り方が、さっぱりわからないのでこの世界の皇帝の一人称は『私』とします。
『私の世界ではこうなの』ってやつです。
その後、『具体的な話をしたい』と、皇帝に誘われて、二人で寝室に入った。
ベッドに腰掛けるよう言われ、皇帝の横に座る。
「実は私、転生者なんだよね」
まるで深刻な悩みを打ち明けるかのように皇帝はそう言ってきた。
「私もそうだけど」
そう答える。敬語は寝室に入る際、不要と言われたので止めた。
「だよね…大日本航空2033便の墜落事故って分かる?私あれで死んだんだよ」
JAC2033便……?
「…分かるよ。私の両親もその事故で死んだから」
…こんな因果もあるんだ。
「そう…なんだ。すごい偶然だね」
皇帝がそんな風に言ってくる。
「それで…」
そう話を続けるよう促す。
「でね、死んだ…と思ったら神様がいたの。神様が言うには『数年近く放置しちゃってごめんね』ってことで、この国の王女様になれるらしかったの」
「それで、なったの?」
「うん。当時、貴女みたいに人外になれるなんて神様は言ってなかったし、それが最善かと思って」
「この身体は…まぁ…」
二千人を食べてやっと人型になれた…という話は野暮だろうか。
「…?」
「ごめん。続けて」
「ん。で、なったの…王女に。それで、3、4年くらい前かな。先代が死んで、皇帝になったくらいで、神様が久しぶりに声をかけてくれたの。『貴女を不老不死にしてくれそうな存在を見つけた』って」
「それが私?」
「そう。それで、その後しばらくまた連絡無くて、数ヶ月か前に、貴女の名前を初めて知った。『ソフィア・シヴグラード』…でしょ?」
「…そうだよ」
…時系列的に正しい…けれど……私は常に、その神とやらに見られているのだろうか。
何となく嫌な感じがする。
いつから見られていたのだろう?
…転生前から?
「…ソフィア?」
皇帝が顔を覗き込んでくる。
「あ、ごめん…それで?」
「それで、その頃にはすっかり不老不死になりたいという気持ちが出来上がっていたから…貴女の名前を探した。当時は驚いたよ?Bランク冒険者兼、国民軍大尉なんて…人外なのにすごいって思った」
そう言いながら皇帝は私にグイグイと顔を近づけてくる。
「何故、その時にこっちに呼ばなかったの?」
「ただのBランク冒険者、国民軍大尉を招待するなんて…ちゃんと理由が無いと無理だよ」
そう言いながら、皇帝は『お手上げ』のジェスチャーをする。
「…その『神様』ってさ、いつから私を知ってるって言ってたの?」
結構唐突だけど、そう質問してみる。
「うーん…そう言うことを神様に聞いたことはなかったから、知らないかも」
そう言って皇帝は人差し指同士をつんつんと合わせる。
…何かすごい違和感を感じる。
その神は…恐らくイザベラではないその神は…全て…もしかすると最初から全部が見えていて…今も…こちらを見ている?




