69.拝謁
『新聞ツィタデレ
首都解放!皇帝陛下の安全を確保!
___日、国民軍が統合参謀本部を攻略後、宮殿___皇帝陛下は国民軍兵士らに声を__今回の一件が___ルーシル帝国は国民軍_賞賛___』
「准将、皇帝陛下がお会いになるそうだ。今すぐ宮殿に向かってくれ」
上級大将から簡潔にそう伝えられる。
「はい…しかし…何故?」
「『シュタウフェンベルク上級大将の救出作戦を指揮したと聞いた』のだそうだ」
「…わかりました」
言い方的に初めから拒否権は無いだろうし、実質的に命令なのだろう。
軍帽を被り直し、宮殿に向かう。
周りの人間達は何故か私の方を見ながら何か口走っている。
「___東部方面司令部で大量処刑をやったらしいぞ」
「汚れ___《黒い国民軍》の指導者とか言われ__」
「_聞いた聞いた。人形とか、亜人種とかの名目上の登録がされてない___本人は《銃殺隊》とか呼んでるらしいよ__独自の敬礼とか_」
「でも兵器開発とかも___『第2のオリビア』なんて_____」
…陰口だろうか。まぁ良いのだけれど。
宮殿前には番兵がいた。
「ソフィア・シヴグラード准将、第23旅団長」
そう言うと、番兵は大きく目を開き、焦ったように敬礼して、
「ハッ!准将閣下、陛下がお待ちです」
と言い、奥に案内してくれた。
通されたのは日光が神秘的に降り注ぐ、大きな部屋だった。
見えるのは縦に綺麗に並んだ柱と、敷かれた赤い絨毯、そして背もたれの大きな石製の玉座があった。
「こんにちは!軍人のお姉さん」
後ろからそんな声がした。小さな少女のような声。
振り向くと、少女がいた。金髪ショートヘアで、赤い眼、貴族にしては不健康そうな細い身体と小さめの身長。
「こんにちは」
そう返す。
すると少女はニコリと笑った。
「どうしてお姉さんはここに?」
そう聞かれたので
「陛下に招待されましたので」
そう返す。
「そっか。じゃあとりあえず、玉座のところまで一緒に歩く?」
「はい」
「ねぇ、アレやってよ〜。コインの手品」
少女がそう言う。
どこで知ったのだろうか。
…まあいっか。
「はい…そんなことなら」
収納からパッとコインを出して指の上でクルクルと回してから、少女に渡す。
「わ〜これが収納魔法ってやつ?」
コインを受け取った少女は目を輝かせながら、そう言った。
「はい。一応」
「ソフィアさんって確か人形を飼ってるんだっけ」
…なんで名前を知っているんだろう。
まぁいっか。
「はい。飼ってますよ」
隠すことでもない。
「ふーん…すごいね!」
グイグイと顔を近づけてくる。
「…そうですかね」
そう言って少し退く。
「ねぇ、皇帝ってどんな人だと思う?」
「…決断力がある人…なんでしょうかね。少なくとも、首都に叛乱軍がいる状態で国民軍への支持を堂々と宣言できるような人みたいですし」
「そっか…そうだよね。ソフィアさんが言うならそうかも」
「はい。皇帝陛下」
「あれっ、バレてた?」
少女…いや、皇帝は初めて動揺する。
「まぁ…玉座に誰もいないですし、少なくとも私の名前を知っているのに、最初は、あえてそれを隠そうとしていたみたいです。あと、年齢差がある相手からの敬語に慣れているみたいですし…何より、この宮殿内を自由に歩いているのは貴女だけのようなので」
「うぐぅっ…叛乱軍にすらバレなかったのに」
皇帝は両手で頭を抱えながらそう言う。
…まぁ、私も人間としての先入観があったら見抜けなかったかもしれない。
「それで、何故このようなことを?」
「初対面の人にはいつもこうしてるの」
そう言って、『てへぺろ』と言った風に舌を出し、その後、目の前にまで来た玉座の方へ駆けていく。
「じゃあ、本題に入ろっか。私を不老不死にしてくれない?」
玉座に飛び乗った皇帝はこちらを見下ろし、そう言う。
………これは…どう答えるのが正解なのだろうか。
久しぶりに、とても困った事態になった…




