64.イザベラとの再邂逅
朝、いつものように起きてリビングに行くと、貴族のような服をした少女がそこにはいた。
「おはよう」
とりあえずそう言っておく。こんなのを屋敷に住まわせた記憶は無いのだけれど……
「おはようじゃないわよあんた。知らない存在と出会ったらまずは『誰?』からでしょ」
その少女は両手を肩の高さまで上げるジェスチャーをしながら、そう言う。
声の抑揚や雰囲気はどこかで聞き覚えがあるような…
「………イザベラよ」
「イザベラ?」
「はっ?まさかあんた覚えてないわけ?」
「他人の名前なんてどうでも良いし…」
「はぁ………ほんとに覚えてないのね。『神様』よ」
「なるほど」
合点がいった。
「いや、驚きなさいよ」
「…?」
「生身の肉体で現れたことに驚きなさいって言ってるの」
「でも…もうオリビアが先に生身の肉体で現れてるし」
「はぁ…?もっとこう…無いわけ?いや、無いわよね。あんたは」
身体的特徴を口に出して言ってほしいのだろうか。
…白に近い水色の、艶のある長髪に、それを強調するかのような小さめの身長、前世で言うところのモデル体型に相当するであろう体格に、赤みを帯びた綺麗な碧眼。あと他にあげるとすれば服なんかも__
「ストップ!!そんな事を言ってほしい訳じゃないの!」
そういえば神様って心読めるんだった。
「それで、用件は?」
「………な、何よ。用件が無かったら生身で来ちゃダメってわけ?」
「別に。朝ご飯これから作るんだけど、食べる?」
「食べる!」
即答だった。
神様は人外なので、私と同じ味覚を持っている。
そのため私が好みのものを作って振る舞うことにした。
具体的に言えば、回復薬を使ったフレンチトーストである。
子供達が変に起きてきて、人外食卓に参加しないよう、ササッと作ってササッと出す。
神様は出てくるなり、ナイフとフォークで丁寧に切り分けながら食べ始めた。
「っ〜!やっぱりこれですわ!」
私も遅れて食べ始める。
一口齧ると、元々柔らかかったフレンチトーストが口内に入ると同時にホロホロになって溶けていく。匂いや味も秀逸で、前世でもなかなかありつけないような一品だった。
神様は何故か、涙を流しながらフレンチトーストを口に運ぶ。
「はっぁぁ〜…癒される…幸せ…来てよかった……」
…神様の仕事は本当に大変らしい。
ただの朝食に涙を流すくらいには。
その後、神様を労うためにお風呂を用意して、背中を流して欲しいと言われたので一緒にお風呂に入った。
あがるとリビングにはオリビアがいて、神様の姿を見るや否や駆け出し、神様に抱きついた。
…相当、仲が良いらしい。
神達の押し問答を眺めながら、そう思った。




