61.オペレーション・ヴァルキューレ
上級大将一家を屋敷に連れてきた。
「ミオ、レオ、いる?」
「「どーしたのお姉ちゃん!」」
2人は駆けてきた。
「新しいお友達のミリアちゃんって子。しばらく居るらしいから仲良くしてあげて」
ミリアというのは上級大将の娘の名前で、ミオとレオとは恐らく数歳差くらいである。
「よろしくお願いします」
ミリアは礼儀正しくそう言って礼をする。
「「よ、よろしくお願いします」」
そう言ってミオとレオも同じ仕草をする。
…仲良くやれそうで安心。
その間、上級大将はメアリーと話していた。
「あの〜閣下、東部方面司令部に行かなくて良いんですか?」
「ふむ、行かないとな。失礼するよ《碧眼の魔女》殿」
「はい」
…碧眼の魔女?
「では、行こうか」
上級大将がそう言うので疑問を引っ込めて、オリビアと共に付いて行く。
「現在、本司令部は非常時につき…封…鎖……上級大将閣下?」
「覚えていてくれたか。ベルダー上等兵」
「も、勿論であります閣下!生きておられたのですか」
番兵は座っていた椅子から立ち上がり、捧げ銃の形を採る。
「まぁな………国民軍総司令官として、東部方面司令部の直接指揮のためここに来た。意味はわかるな」
そう言う上級大将は、今まで見たこともないような鋭い目をしていた。
「ハッ!今すぐに!」
そう言って番兵はキビキビと動き出し、正面門を開けた。
上級大将は堂々とした足取りで正面門を通る。
私達はそれに続いた。
受付の人間達は上級大将を見るや否や直立不動の姿勢を採り、上級大将の『続けてくれ』の言葉で猛然と仕事を始める。
上級大将は階段を登り、東部方面司令部司令室を目指した。
すれ違った将校や伝令兵らはみんな息を呑み、敬礼をする。上級大将は軽く手を振り、降ろすよう指示。敬礼を解いた『部下』らは少し距離を取りながら上級大将に付いてくる。司令室に着いた頃にはかなりの大所帯となっていた。
「閣下!生きておられたのですね!」
司令室にいた面々はザッと敬礼をする。そのうちの一人がそう言った。
「ああ、カルレウスキー少将、墓から戻ってきた。状況を説明して欲しい。何故死んだことにされている?」
そう言いながら上級大将は敬礼を解くように軽く手を振って指示を出す。司令室の人員は仕事を再開することなく全員が上級大将を注視していた。
「ハッ!こちらの新聞記事によるものであります」
少将から上級大将に差し出されたのは新聞ツィタデレの記事だった。
「ふむ。統合参謀本部の公式発表か…事態は深刻だな」
その言葉に私とオリビアを除く全員が固唾を飲む。
「『オペレーション・ヴァルキューレ』だ。西部方面司令部には国民軍総司令官名義で出せ。解錠コードは『19385』、136号命令書を取り出して、実行せよ」
「対象は…」
「帝国軍近衛師団を僭称する蹶起部隊及び、統合参謀本部を占拠した『叛乱軍』だ」
「「ハッ!」」
司令室の全人員の声が揃う。
『国民の敵に裁きを!』
司令室の外では集まっていた将校や伝令兵達が高揚した空気の中で、そんな声が上げる。
取り残されているのは私とオリビアだけである。
…時代はここから急速に動き始めた。




