57.メアリーの前世
メアリー視点
私の名前は石崎亜美、高校三年生。
父は三石財閥のトップで、私は後継者になるのだそう。
正直言って…面倒。
私は親に従順に振る舞い、言われた通りに『経済学』や『経営学』なんかを学びつつも、裏では『mia』という名前でネットゲームにのめり込んでいった。
MMORPG『ジルコニア』…これはハイファンタジーな世界観においてプレイヤーが自由に生きるというコンセプトのゲームで、その特徴はNPCだ。
歴史や政治学、心理学等の『人間に関するあらゆること』を徹底的に叩き込まれた最新AIが、NPCのあらゆる挙動を制御しているのだ。
『戦争』から『村人達の噂』まで、その全てに因果があるため、そこら辺のチープな物語なんかとは格が違う。私はそこに惹かれた。
このゲームにのめり込んでいるのは私だけではない。高校では皆このゲームの話をするし、先生ですらその会話に加わることすらある。
男子も女子も関係ない。休み時間になれば、最近起きた戦争での不満や自慢を皆で語り合い、ジルコニア内のアバター同士で撮った写真をスマホで共有し合う…ジルコニアのおかげで、クラスには共通の話題が常にできて、連帯感が生まれた。
「mia、mia…起きて」
ゲームを起動すると、ロザというプライベートNPCがそう呼びかけてくる。
茶髪に、ケモ耳の小さな少女。
そもそもプライベートNPCというのは、プレイヤーのいわば相棒的存在で、通常のNPCとは違ってプレイヤー自身があらゆる面倒を見て、成長を促す。
プレイヤーのような固有魔法を持っていて、ロザが扱えるのは炎魔法である。
起き上がると、ロザは微笑んだ。
…旅を続けよう。
今いるのは、帝国から王国へと行く街道…の途中にある宿屋。
このゲームの良いところは魔法を日常生活に活用できるところにあると思う。
私の固有魔法は氷で、私はその魔法を使ってロザにかき氷を振る舞った。
「冷たい…!頭キンキン…」
「あんまり急いで食べないの」
「でも…溶けるし」
ロザは相変わらず放っておけない。
宿を出てロザと陸竜に乗り込み、王国の方向へ竜を走らせる。
今日中に王国へと着きたい。
とりあえずそれを目標としつつ、ロザと他愛の無い話をしながら王国へ向かった。
今日のお昼は黒パンと水。あくまでゲームなので味覚や食感なんて無いのだけれど、ロザが『一緒に食べよ』といつも言うので、一緒に食べるようにしている。
ロザは黒パンが好きらしい。硬い黒パンを引きちぎって、美味しそうに食べている。
私にはよく分からないので、さっさと口に入れて、水で流し込んだ。
…ロザと同じ世界で生きれれば良かったのだけれど。
______朝?あ、そうだ…今日はローザと料理の練習をするんだった。




