55.大混乱②
またシュタウフェンベルク上級大将が押しかけてきた。
「一体…一体これはなんだ…!」
「「何って…報告書ですけど」」
オリビアとハモった。
「なんで増えてるんだ!誰だ君は」
「…フォン・グラウエンブルク、とだけ」
「怪し過ぎるだろ!」
シュタウフェンベルク上級大将は頭を抱えた。
「もうオリビア・フォン・グラウエンブルクの生まれ変わりと言われても驚かん!」
とりあえずリビングに招き、落ち着いたところで話を聞くことにした。
「理論上正しい…実際作ったが、ちゃんと強力だ…が、やっとシヴグラード式の量産指示が通せたところに今回の一件だ。こんな調子じゃこっちが過労死する」
「量産性に特化させたはずですけど」
と、オリビア。
「量産性が高いとはいえ、魔術合金自体まだ量産体制を確立していない代物だ。まともに生産開始できるとしても、せいぜい3年後と兵器開発局は結論を出した」
上級大将はそう答える。
「…なら生産工場を」
「本当に作りそうだから言っておくが、やめてくれ。どうせ10でも20でもポンと建てるんだろう。管理が大変だし、人が足りん」
「…なるほど」
「まあなんだ、一応採用はするが、生産はかなり先になるとだけ言っておく。今度こそ…頼むから時代を変えるような兵器設計を量産しないでくれ」
「「最大限善処します」」
「まぁ…もういいか。好きにしてくれ」
「「はーい」」
シュタウフェンベルク上級大将は去っていった。
「次どうしよう?」
オリビアが悪戯っぽく笑う。
「…オストヘルムでも視察しに行く?」
何か知見が得られるかもしれないし。
「賛成〜」
「どう行こう」
オリビアを抱えて飛んでいったりしてみようかな…
「私が神の力で連れてってあげる」
オリビアがそう言い、指を鳴らすと周りの景色が変わった。
そこは戦場だった。
「どう?私の縮地魔法」
「…すごいね」
「でしょ〜」
周りを見渡すと近くにライヒの防衛陣地があった。
横に長い穴が深く掘られていて、さながら『第一次世界大戦』の写真のよう。
砲の断続的な発砲音と、薄い火薬の匂いがしていてリアリティがある。
とりあえず近くの兵士に話を聞こうと塹壕の中に飛び込む。
茶色い軍服姿の人間たちがそこにはいた。
人間たちは一瞬固まったが、すぐに動き出し、
『敵襲だ!』
そんな風に叫び散らし、こちらに襲いかかってきた。私が今着ている服装のせいだろうか。もしやここはライヒ側の防衛陣地ではない?
発砲されても銃剣で刺されても少しも痛くない…というかダメージになっていない。
「このままじゃ話もできない」
『さっさと殺せ!』
「銃を下ろして」
『なぜ死なない!』
「死にたくないんでしょ?」
『化け物め!』
幾ら呼びかけても、未だに人間達は発砲を辞めないので、仕方なく殺すことにした。
空気を操って銃を自分に向けさせて発砲…或いは銃剣を喉元に突き刺し、脳に貫通させた。
「割とえげつないわね?」
「殺そうとしてきたんだしまぁ…」
…当然だよね。
とりあえずちゃんと話を聞けるライヒ側の陣地に向けて私達は歩き始めた。




