50.吸血鬼メアリー
メアリー視点
___知らない天井。
何…してたんだっけ。宮殿でローザとお昼ご飯を…うぅ…頭が痛い。
寝返りを打つとローザが寝ていた。
………赤黒い…髪?
そうだ、思い出した。白だか赤だかの髪をした女に吸血鬼にしてもらったんだった。
窓を見ると日光が入ってきているのが見えた。
…吸血鬼って日光大丈夫なの?
「大丈夫よ。多少、朝に弱いってだけ」
いつもの神様とは違う声が響いてくる。
…上位神のイザベラ様?
「はぁ…全部話されてるのね。まあいいわ、ソフィア…あ〜あんたの言葉で言うところの…『白だか赤だかの髪をした女』から伝言。『しばらく新しい環境に慣れるためにエストブルクに滞在して。"斥候隊"って人形部隊を付けておくから家事の手伝いにでも使えば良い』だそうよ」
あの女はソフィアという名前らしい。
それにしても…ライヒは人形部隊なるものを実用化して、家事に動員させるほど余らせているのか。
私はそのことに驚愕し、恐怖した。
「いや、そんなことないわ。アイツが勝手に作って好き勝手やってるだけよ」
………なるほど?ソフィアは見た目に反して存外、化け物らしい。
「どうしてこうなっちゃったのかしらね〜」
独り言のようにイザベラ様は言った。
『斥候隊』を一目見た時、それを作った存在の異常性が一瞬でわかった。
完璧に揃えられたフィールドグレーっぽい配色の制服に、まるで死者に被せるかのような白い布が顔にはかけられ、その上からまるで当然かのように軍帽が被せられている。指揮官にはその布が無く…ソフィアにとてもよく似せられた、しかし死体のように生気のない顔が、代わりに配置されていた。その人形は元となったソフィアよりも一回り小さく、10代後半の少女のような印象を抱かせる。…それはともかく、全体として、軍服を着たキョンシーと言うべきか…しかもそれらが一糸乱れぬ足取りで私たちの後ろを着いてくる訳だから恐怖しかない。
流石に気味が悪いので、指揮官に言って護衛を少数に絞ってもらうことにした。
指揮官は気を悪くした様子もなく、生気のない顔でこちらを見つめながらこれを頷いて了承した。
元がソフィアなのでこの人形もかなり整った顔ではあるのだけれど、むしろ整った顔の、大きな目で見つめられていると…人間の本能的な恐怖を刺激されてしまう。まぁもう人間では無いのだけれど。
何はともあれ、護衛は指揮官を含めた5人に減って、私とローザは安堵した。
エストブルクという街はノイエ王国の首都なんかよりずっと大きく、そしてずっと冷たい印象がある。
歩いてみて、そう感じた。
ノイエ王国ではみんなが協力しあって色々なことを成し遂げていた。
けれど、この都市ではそれぞれが自分と他人をきっちり分けているような印象を抱く。軍服姿の人間が普通に歩いているのも印象的だった。
そういった状態が競争を生み、発展を生むのかもしれないが…私はあまり良い印象を持てなかった。
それと、どの飲食店に行っても薄味のものしか出てこない。
これについてはどうやらこちらに問題があったようで、イザベラ様によれば『進化したから普通の食事が薄味に感じるようになっただけ。魔力を内包した食べ物や、ソフィアとレナが作る特殊な料理なら美味しく食べれる』らしい。
…人外にも色々不便はあるらしい。




