45.神との邂逅
『新聞ツィタデレ
オストヘルム帝国にてクーデター!
___日、ライヒと南東部にて国境が接している"オストヘルム帝国"にて帝国軍総司令官の職に就いていたシュトゥルム将軍が戒厳令を___を民族主義に基づく中央帝国との連帯"を主張して___カプスブルグ王室は第二首都に移り、内戦を___中央帝国政府は今回の事件に対し、"正統政府への全面協力"を発表___恐らくはシュトゥルム将軍を指す___』
「これは…面白いことになってきたわね」
神様がそう呟く。
…どういう?
「"民族主義に基づく連帯"はオストヘルム帝国において毒薬よ。あそこには11の民族がいるの。皇帝はその11の民族を統治する存在としてそこにいた。でも、シュトゥルム将軍は多数派のライヒ系人による民族主義を主張して、クーデターを強行した」
…つまり、国家分裂の可能性があると?
「そう。それぞれの民族が独立を訴えて、分離するの」
前世の歴史でも、たしかそんなことが載ってた記憶がある。
「こうなった時点で皇帝の復帰は無理でしょうね。逆に将軍は、帝国そのままの形での国家掌握を諦めて、複数民族により分離された国家を、皇帝排斥の名のもとに協力させれば『皇帝による民族抑圧を終わらせた英雄』となりうるかもしれないわ」
…なるほど。
「あとまぁ…明日の紙面にはきっとライヒによる出兵に関する記事が載りそうね」
…そうなんだ。
このあとも何か言っていたけれど、酷くどうでも良かったので、覚えていない。
「そういえば今日、来訪者が来るらしいわ」
神様が何故か唐突にそう告げてくる。
…誰が来るの?
「まぁ…ただの神よ」
神に『ただの』も何もあるのだろうか。
そんな風に思っていると、屋敷の正面扉がノックされている音がした。
「来たみたいね」
…来訪者について伝えるの遅くない?
「アイツはいつもそうなのよ。私にも直前にしか言ってこない」
ため息混じりに神様はそう言う。
とりあえず扉を開けて、来訪者を迎える。
最初に印象的だと感じたのは深緑色の長い髪で、それが情報として頭に入ってくるより先に、抱きつかれる感覚がした。
「ご機嫌よう!私の後継者ちゃん」
知らないはずなのに懐かしく感じる声、容姿…もしかして
「………オリビア…さん?」
「よく分かったね。流石イザベラが見込ん_「言わないで」
…いつもより冷たい…神様の声。
私には何故止められたのかは分からない。
「あ、ごめんね。じゃあ…とりあえず用件を手短に言うから通して」
「はい」
リビングに通して、レナに紅茶を淹れてもらう。
「実は今、私が管理してる子が困っててね。人外になるため貴女のところに尋ねてくるから、吸血鬼にしてあげて欲しいの」
「そんなことなら」
「やぁ〜優しいね…ソフィアは。聞いてた話よりずっと」
「いえ。別に優しくしようとしてやっている訳では無いので」
「それでも、優しいじゃん」
「?」
「…あーね、こういうことか。とりあえずよろしくね」
そう言って、オリビアは手を振りながらパッと消えた。
…あれ…紅茶まだ出てなかったのに。
…レナにどう説明しよ…




