43.過去の記憶の夢
『人間の脳は発達の関係上、5歳までに80%ほどが決まっていて、12歳までに大体90%以上が決まる』
これは確か、中学三年の家庭科で習った話。
5歳より前からピアノをやっている人は絶対音感を持っている…なんてよく言われるのも恐らくこれが理由だろう。
私の父親は研究者として、『後継者』作りのため、熱心に実験体を調教した。
母親は父のパトロンとして元々結婚したという経緯からか、共犯として積極的にこれに加担した。
…神様が助けてくれたのかどうなのか、小学五年生の頃に私は救われた。両親はJAC2033便という航空機に乗り込んで、飛び立ち、そのまま機体ごと帰らぬ人となったのだ。
…重い瞼が開く。カーテンの隙間から差し込む日光が酷く迷惑に感じる。
スマホを確認すれば、時刻は7時48分。
まぁ、冬の日光は7時頃まで寝かせてくれるわけだし…夏よりマシかな。
静かな家の、寝室の中。
整えられた黒いシーツのベッドから起き上がり、キッチンへゆっくりと歩く。貧血気味なせいか、朝に弱いので、かなりキツイ。
キッチンに着いたら、給湯器に水を入れ、ボタンを押して沸かす。
…水分が欲しい。
冷蔵庫の下から一段目を開き、追加で水を取り出して、飲む。
カサカサと酸っぱい感じがした口内が潤されて、そこそこ元気になる。
その勢いのまま、冷凍庫の上から一段目を開いて、昨日買った食材類の入った袋を雑に掴み、取り出す。
…ウインナーとキャベツでポトフでも作ろうかな。
いや、普通にウインナーとキャベツをそれぞれ調理して食べた方が良い。
そんな事を脳内で考えながら、食材達を取り出す。
特に観たいものもないけど、リビングにあるテレビをなんとなく付けた。
『___日、バルト連邦はロシアの侵攻__政府はロシア情勢____』
…どうでもいい。
そういえば前に書いた論文はどうなったのだろう。
スマホでメールを確認。見るとちゃんと国外の研究誌名義で担当者から英文で感謝のメールが入っていた。
まぁ、だからと言ってお金が入ったりする訳では無いのだけれど。
幸い母の遺してくれた遺産のおかげでお金には困っていない。
給湯器からパチッと音が鳴ったので、インスタントコーヒーを取り出し、淹れる。
…朝ごはん作ろ。
朝食を摂り終わり、いつも通りシャワーを浴びることにした。
脱衣所で鏡で自分と睨めっこをする。日本人離れした西洋っぽい顔立ちと、黒い髪、黒い目。
これは母がポーランド系のハーフで、私がクォーターなせい。
黒い髪や目は優性遺伝子がどうこうというのが原因だけれど、正直どうでも良い。
パパっとシャワーを浴び、整えられているタオルのうち1枚を身体を拭くために使ったあと、肩にかける。ドライヤーで髪を乾かし、下着を着て、今日の買い出し用の服に着替える。
外に出ようとしたところで______
______屋敷の寝室で目が覚めた。




