41.ライヒの再興
『新聞ツィタデレ
本日___政府は"中央帝国"の再興を宣言__国王陛下は__戴冠され、823年以来の皇帝が___東方のルシル帝国、皇帝アレスタンドル2世はこれを歓迎_____立憲王国もまたこれを歓迎する声明__しかしながら、南部にて国境を接するリヴォルフ共和国はライヒの復活宣言を非難_弾圧であるとの___』
国の名前が変わって、ライヒ?となったらしい。
わかりやすい名前。
「まさか、こんな時代の転換点に神として立ち会えるなんて…」
神様が感慨深げにそんなことを言う。
…そんなすごいの?
「統一王国が成立した時点で既定路線ではあったけれど、100年以上前には考えもできなかったことよ」
そうなんだ。
国の名前が変わっても、現在の生活は変わらない。
『シヴグラードカ』に滞在している約760人の疎開民もそれは同じなようで、いつまで経っても疎開命令解除の伝達はない。
気になって東部方面司令部に問い合わせたところ、『西部方面司令部に確認を取る』と言われ、何も伝達が来なかったので1週間後再度確認を取ると『現在そちらに滞在している疎開民は身元の確認ができておらず、こちらでは対応ができない』と言われた。
…つまり、今『シヴグラードカ』にいるのは遺された人々なのだろう。
ミオとレオもまた、その遺された人々に分類されるのだと思う。
…その事を伝えるのは、もう少し後にした方が良いのかもしれない。
今日も子供達は、はしゃぎ回って、少ない大人達は環境改善に悪戦苦闘、老人はそれを穏やかに見守る。
まぁ、そんなものなのだろうか。
ミオとレオに帰宅を促し、『シヴグラードカ』から歩き去る。
ミオとレオは満足したような顔で走ってきて、私の手を握った。
…ちゃんと、たくさん遊べたらしい。
「レナさんレナさん!今日の夜ご飯なーに!」
と、ミオ。
「なーに!」
と、レオ。
「今日はパスタですよ」
と、レナ。
「「やった!」」
私の事はお姉ちゃん呼びなのに、レナのことは名前で呼んでいる。レナがメイド姿なのが原因なのかもしれないけれど。
「先にお風呂浸かって来ると良いよ」
そう提案する。
「「はーい」」
ミオとレオは大人しく従って、脱衣所の方へ向かっていった。
「今日も、何も書類来なかった?」
レナにそう聞く。
「それが…ですね。統合参謀本部名義で書類が来てまして」
統合参謀本部?
「内容は?」
「統合参謀本部への出頭命令です。名義は統合参謀本部次長となっていましたね」
…なんだったっけ。
「言ってたでしょ。シュタウフェンベルク上級大将が『戦争が終わったら統合参謀本部に来てくれ』って」
んー…そうだった…気がする。
他人の話した言葉はあまり覚えてない。
「いや、上司でしょ」
それでも、他人。
「はぁ………」
溜息をつく神様を無視してレナに
「わかった。明日ちょっと行ってくる」
と伝える。
「…お気を付けて」
レナはそう応じた。
今日の料理は一般にボロネーゼと呼ばれるものだった。
口に運んでもほとんど味はしない。
けれど食感と風味、匂いは感じられた。
挽肉のゴロゴロとした感覚と、ツルツルのパスタがよく絡み、そこに焼いたトマトや玉ねぎなんかの合わさった濃い匂いが加わって、味覚抜きでも美味しいものだった。
子供達にも大盛況なようで、レオはおかわりもした。
…今日やるのはかくれんぼだろうか、読み聞かせだろうか。
はしゃぐ子供達を眺めながら、そう考えていた。




