37.『失う』ということ
『本日付で以下のリストに記載されている国民への疎開命令を解除する___』
ノイエ王国との戦争にある程度の区切りが付いたのか、6割ほどの国民への疎開命令が解除された。
残り4割は比較的子供や高齢者なんかの割合が多く、恐らくはまだ、あちらでの受け入れ準備ができていないから解除されていないだけなのだと思う。
『シヴグラードカ』には安堵や歓声の声が響く。
私が伝えたその日のうちに帰宅のため、準備を始める一家なんかもいた。
「戦争はもうすぐ終わるんだ」
「勝ったら統一王国はライヒを名乗るのか?」
「知らん知らん。家に帰れて、温かい飯が食えて、ぐっすり眠れるのならそれで良い!」
なんて笑いながら話す声も聞こえてきた。
…良いこと…なのだろうか。
私には分からない。
ただ、ミオとレオがリストに載っていないのを見た時、私は何故か安堵するような溜息をした。
その意味も、よく分からない。
「「おかえり!」」
「…ただいま」
この子達もいつかは父親のところへ帰るのだろうか。
…この子達もいつかいなくなってしまうのだろうか。
レナは…どうなのだろう。
いつか…消えてしまう?
転生なんてしたところで、私の価値観は大して変わらないらしい。
若干前よりも人間から離れている気がするけど…どちらにせよ人間らしいとは形容できない。
私はどうやら周りの人間を『失いたくない資産』のように見ているらしい。
ある意味では正解だろう。人が最も重要にすべきなのは人脈であるわけだし。
しかし、もう私は人間じゃない。
…どう、区切りをつければ。
「あんた、微妙にオリビアに似てるわね。もしかしてダンジョンで残滓を食べたから、それが影響してるわけ?」
…?
「『周りの人を失いたくない』とか、『日常が無くなって欲しくない』とか。アイツはそのために神になって、自分の箱庭に、自分の住んでいた環境ごと根こそぎ持ってった」
私も…そうしようかな。
「それにしても、えらく弱気ね。オリビアの真似をするならとりあえず、前を向いて歩きなさい。あれこれ考えるために余所見して、沼に落ちたらどうしようもないわよ」
そっか。
…ところでオリビアって上位神なんだったっけ
「あっ…いや…オリビアとは…その……………旧知の仲なのよ」
そっか。
今日はミオとレオと一緒に寝ることになった。
…何故そうなったのかは詳しくは覚えていない。
ミオが誘ってきたのかもしれないし、
レオが誘ってきてくれたのかもしれない。
或いは…まぁそんなことはどうでも良い。
「お姉ちゃんの肌すべすべー」
「ひんやり〜」
…やっぱり、私にはまだ2人が居なくなった後のことを考えられない。
「まぁ…あんたもなんとも生き物らしいわね?」
…?
「神は全ての生き物に苦手なことや欠点を用意する。それを克服できるくらい圧倒的な魔力を持った時、神になるという特性を付けるためにね」
じゃあ…神になれば私の感情は消えてくれるってこと?
「…何か勘違いしているようだけれど、感情って欠点じゃないわよ?」
…やっぱり…よく分からない




