33.愛されしシヴグラードカ
「『シヴグラードカ』?」
「そう呼ばれてるみたいですね」
どうやら私の建てたホテルもどきが『シヴグラードカ』と呼ばれてるらしい。
…確かフルシチョフカとかブレジネフカとか、旧ソビエト連邦の住宅の名前に使われてるんだっけ。
「あんたの前世にはそんなものがあるのね?」
確か量産住宅の呼称だったかな。
「お姉ちゃん!一緒に遊びに行こ!」
「友達と遊びたい!」
「じゃあ…あのレンガの建物行く?」
「「うん!」」
…飛ぼうかな。
「ちょっと私のところに来て」
2人はてくてくと歩いてくる。
私はそれを胸に抱いて、
「目を瞑ってて」
と言う。
「わかったー」
「柔らかーい」
「着いたよ」
「「はやー!」」
「今のは周りのみんなに秘密だからね」
「「はーい!」」
そう言って2人は『シヴグラードカ』のところに走っていく。
ミオの方は戻ってきて、
「お姉ちゃんも来て!」
と言った。
「良いよ」
頭を撫でてそう返すとミオは笑った。
「やった」
ミオに手を引かれるままに『シヴグラードカ』に行く。
「おーいミオー!お姉ちゃーん!こっちー!」
「わかったー!」
三棟目の二階の一室からレオは顔を出してそう呼んでくる。
ミオに連れられてそこに着くと、そこにはレオを含んだ5人の子供達と一人の老婆がいた。
「あら将校さん…お若いですね…妹さんですか?」
穏和そうな顔をした老婆が話しかけてくる。
「いえ、疎開に際して親と離れたそうで、一時的に保護している感じですね」
そう言って微笑んで見せる。
「それは…ご苦労さまです」
「お姉ちゃんあれやって!パッてコイン出すの!」
「良いよ」
右手広げて子供達に向ける。
左手の指を鳴らすに合わせて、収納からコインを取りだし右手指の間に挟む。
4つを出して、子供達に柔らかく投げると
「わっ」
「やば!」
「わあ」
「えー!」
なんて言いながらミオとレオを除く子供達は驚きつつもコインを受け取った。
「「ふふーん」」
何故かミオとレオは自慢げで、それに子供たちは羨ましがるような声をあげた。
…?
「…収納魔法ですかな」
「はい。魔法を使った簡単な手品です」
「いやはや…初めて見ましたよ…」
老婆とヒソヒソと会話する。
その間に子供達はコインに飽きたのか、走り回り始めた。
「お姉ちゃん!抱っこしてぐるぐるってやって!」
レオがそう言って両手をあげてくる。
「わかった」
振り落とされないようちゃんと持って、20回、回る。
「う〜ぐるぐる…」
三半規管がやられたのか、レオはふらふらになった。
それを見てミオを含んだ残りの子供たちは走るのをやめて、『私も!』なんて言い始めた。
結局、合計で220回ほど回転することになった。
「いやはや、子供達が楽しそうで何よりです…将校さんは優しいですね」
また老婆が話しかけてくる。
「そうですかね?」
「…それと多分、貴女がこの大きな屋敷を作ってくださったのでしょう?」
「まぁ」
なんでわかるのかよく分からないけど。
「この屋敷はこんな風に子供達が笑えるほど…快適なのです。感謝しかありません…」
「…仕事ですので」
「…それでも、です」
私にはその意味がよく分からなかった。




