32.碧眼の魔女
メアリー視点
「完全に壊走状態です!メアリー様がいてくれたおかげで2割の兵員は残りましたが、もはやまともな戦力たりえません!」
侍女がそう報告をする。
ここは臨時の先鋒部隊司令部でいるのは将校扱いの3人のみ。
私と、侍女と、名前の知らない大尉である。
下士官はそこそこいても、将校はまともにいない。
「今本土に増援要請の伝令馬を送った!増援が来るまで持ちこたえるぞ」
「___ ____、_____?」
神様がそうアドバイスをくれる。
…歩兵が前に来てるんだ。で、迂回すれば良いと…
「…攻めよう。今、敵は側面が薄い」
「攻めっ…そんな事ができるのですかメアリー殿」
「無茶ですメアリー様!」
「___、______。___?___ ______」
あれって砲撃だったんだ。
「今、歩兵部隊が砲撃跡地に派遣されて、掃討をしてる。だから砲撃対象であったと思われる廃村を迂回して、歩兵部隊の護衛が少ないと思しき砲兵隊と、可能なら司令部を叩くよ」
そう言って銃杖を肩に担ぐ。私の目にはもう勝利しか見えていない。
「…!メアリー…様…わかりました!今すぐ準備します」
「お願い」
皆同じ軍服を着ていても、疲労のせいか着崩したり、破いたりしている。私はそんな寄せ集め達を臨時の演説台の上からゆっくりと見回す。
コホンと一拍おき、軍人っぽい口調で話し始めた。
「諸君、我々は今、かなり劣勢な状況となっている。しかしながら諸君らの士気は未だ正規軍と呼ぶに足る高い水準で維持されていると、そう聞く。諸君…栄えあるノイエ王国軍の諸君…!復讐がしたいか!戦友の…親友の、或いは古い学友の!我々はそれを失った!…誰のせいか!それは統一王国の悪辣なる野蛮人のせいである!」
『…そうだ!』
揃ってはいないものの、そう肯定の声が上がる。
「諸君、我々は今、神の導きによってか…はたまたただの偶然か、敵に復讐できる機会を与えられた!偵察によると、我々がこれから攻める敵陣に、歩兵部隊なんてほとんどいない!しかし得られる戦果は莫大であろう!敵の最新兵器と司令部を我々で叩くのだ!疑うのであれば、この私、《碧眼の魔女》が命を賭けて誓おう!それでも不満なら私が陣頭で指揮を取ろう!私に、ついてきてくれるか!」
『もちろん!』
増えてきた。畳かけよう。
「諸君!我々は運命に導かれ、ノイエ王国の命運を決める決戦を選択できる者となった!我々の後にも先にもこんな贅沢な選択を選べるものはいないだろう!私は、神がそれを望まれていると知っている!諸君!これは王国の存亡を賭けた極めて重大な選択である!諸君らは神の導きに従うか!?」
『もちろん!もちろん!もちろん!』
『国王陛下万歳!』
『神の導きに従おう!』
…上手くいった。やっぱりノイエ王国人って異様に宗教色強めだよね。
良かった、口が上手くて。空気は高揚した人間たちの熱狂により暑さすら帯び始める。
「神がそれを望まれる!」
『神がそれを望まれる!』
「全ては王国のために!」
『全ては王国のために!』
「よし!作戦開始!私に続け!」
そう言って私は演説台を飛び降りた。
『オーッ!』
兵士達は私に続いてくれるらしい。
良かった…前世では人の前に立って話すことだけは得意だったわけだし…やっとそれを活用できた。
やっぱり私って神様に愛されてる。




