29.キャラ変をしよう。
「あんたそういえば、今まで馬鹿な令嬢っぽく振舞ってたみたいだけど、今度はどうするの?」
どう…って?
「そのナリで馬鹿な令嬢は無理じゃない?って話」
んー…
「普通に軍人っぽく振る舞えば良いんじゃない?」
そっか。まぁ、頑張ってみる。
『視察の告知【極秘】
統合参謀本部次長たるルドルフ・シュタウフェンベルク上級大将閣下が明日、第23旅団の建設した宿舎を視察なさるとのこと。案内役の将校は準備をすること。くれぐれも無礼のないように。
_________東部方面司令部』
「ど、どうするのよ。視察に国民軍のトップが来ちゃったじゃない」
誰?
「ルドルフ・シュタウフェンベルク上級大将、国民軍総司令官の職を持ち、王の直属。評価は『現場至上主義』とか、『部下に優しい』とか…」
ふーん。つまり可愛がられる部下を演じれば乗り切れると。
「いや、無能には厳しいらしいから、あまり変なことをしちゃダメよ。いつも通りに振る舞えばいけると思うわ」
はーい。
「ようこそ閣下。お待ちしておりました」
銃殺隊式で敬礼をする。
「ああ、君か!この巨大な構造物達を建てた指揮官というのは」
独特の敬礼については、大して気にしていないらしくこちらに握手を求めてきたので微笑で応じる。
「はい。魔法を活用して短期間で仕上げました。これで疎開してくる国民が住居に困ることはありませんね」
「まったくだ。それにしても…第20旅団と比べたら圧倒的に速いな。それにかなり高精度と見える。職人でも大量に雇ったのか?」
「いえ、ここだけの話ですが…私が一人で仕上げたのです」
「な………ハッハッ冗談かね?私が言うのもなんだが肝が座ってるな?」
「その…信じられない、と?」
「ああ、冗談だろう?」
「では…見せましょう」
指を鳴らして、余り物でできた小屋を出す。
「………は?」
「このように、作りました」
「ど、どのようにだ。教えてくれ。なんだ?手品なのか?」
「もっと多くの資材を用意してくださればより大きなものを作れますが…」
「ふむ…キンメル中佐、庶務局にすぐ連絡だ。第20旅団が余らせてる資材があるだろう。持ってこさせてくれ」
「はい閣下」
取り巻きの1人がそう返事をして馬の方に駆けていった。
「で、どうやったんだ」
「収納魔法の応用です」
「収納魔法…?あれか、今第三課の直轄研究部が兵站改善のために研究してるとかいう…」
「…?」
「恐らくその可能性が高いかと。閣下。報告に来ていたものと極めて似ています…しかし、規模が違いすぎます」
取り巻きの1人がそう声をあげる。
「…シヴグラード中佐、これができるのは第23旅団の中で中佐だけか?」
「はい」
「あんた適当に理由でっちあげて誤魔化しなさい」
神様がそうアドバイスをくれる。
「なぜ収納魔法なんて使える?中佐」
「実は私の生家が魔術師の家系でして…代々収納魔法を継承してきていたのです」
「いた…ということは…」
「はい、私以外死んでしまいました」
「…そんなことがあった…いや、そんな家系があったとは…すまんが手を貸して欲しい。資材が用意でき次第、次を建ててくれ」
「同じ設計で良いのですか?」
「ああ、任せるよ。あとその仕事が終わって、こちらの問題も片付いたら一度、統合参謀本部に来て欲しい」
「統合参謀本部…ですか」
「場所についてはまた後日伝える」
「わかりました」
資材が運ばれるまで待って、パッと収納して、建設して見せた。
最初は全員絶句していたけれど、シュタウフェンベルク上級大将は拍手をして、遅れて取り巻きたちも拍手し始めた。
満足したらしい。
追加資材分も全て建てきったのを見たあと、
「君のおかげで救われる国民が増えるよ」
なんて言い、
「命令は命令ですので」
という私の言葉に少し悲しそうな笑顔をした後、取り巻きを引き連れて帰っていった。
「…何とかなったわね」
そうだね。




