106.革命家の日記V
『新聞ナロート
人民、遂に蜂起!悪の政府を打倒せり!
___日、『武装労働戦線』を称する、出稼ぎ労働者を主体とした自由民主主義的な武装民兵組織が蜂起!___ルーシル帝国軍とは違う独自の制服を着用し、最新式の武装によって速やかに、悪辣なる政府の各庁舎を占拠___人民大衆はこれに呼応し、『武装労働戦線』の行動を支持する集会、示威行進を実施!______本紙は人民の味方として、以降『武装労働戦線』の動向を見守って___』
私はこの記事を読んだ時、腰掛けていたベッドの上で笑い転げてしまった。
思った以上の出来だ。
他の紙面も一気に『人民への支持』を表明している。
私の作った私兵である『武装労働戦線』は10年間かけて着々と構築を進めていたもので、総数は約1600人。
中にはライヒの旧帝国軍将校やその部下もいる…というか、中核はその連中だ。
何故そんな人材を得られたか…それは10年前の『ライヒ改造法案大綱』事件において、大勢が決した時点で幾らかの反体制派を亡命させておいたからである。
中には旧近衛部隊の指揮官もいて、全員が私に心酔している…というか、させた。
馬鹿を騙す夢を語るのは得意なのだ。
武装については60%が旧時代的な槍や剣など。残り40%はグラウエンブルク式長銃杖を装備している。
槍や剣はエストブルクの武器屋で何故か大量に安く売られていたので、それを購入。
グラウエンブルク式長銃杖はライヒの国防軍が主力を新型銃杖に換装するゴタゴタの中で、予備に回される予定だったものを内部シンパに接収させた。
ああ、あと軍服についてはライヒの旧帝国軍が使用していたものを国防軍への改編に伴って大量購入させてもらった。
見た目は大事だ。統制に繋がる。
ちなみに、私はこれから自分の政府ではなく、多数の人間が集って構築される民主主義政府を作り出す。
そして国軍として『武装労働戦線』と旧ルーシル帝国軍を統合した『民主解放軍』を作って、無理矢理国家から暴力機構を引き剥がし、私の使える私兵に変える。
民主主義政府は、評議会を中心とした構造とする。
評議会では利害の衝突により、停滞と腐敗が生まれる…と私は考えている。
多分、そのせいで人民に嫌われ始めるだろうから、その間に『民主解放軍』は独断で各地方の行政機関と連携を深める。
これは最悪、内戦になっても良いように…という保険。
ここまでは上手くいったとはいえ、次の計画は頓挫する可能性もある。
常に次善策を用意することも大切。
で、また新聞で政府の汚点を表面化させて、人民大衆を扇動して、今度は民主主義政府を転覆することで、完全な『革命』が成就するってわけ。
…まぁ、途中で頓挫しても、私は『民主解放軍』という世界最大規模の私兵が使えるようになる訳だから、場所を変えて、また革命を起こせば良い。
…え?革命が起こった後?
とりあえず反体制派を弾圧するでしょ?
国家機関を掌握するでしょ?
…ん?それから?
うーん……悦に浸りながら、ワインを飲む…とか?




