105.死神の名前
「貴女の名前って?」
目の前で一緒に紅茶を飲んでいる、死神にそう問う。
よくよく考えてみれば、ミオの契約神であるリムリーも元死神であり、単に死神と呼称していると、何かの拍子に間違えが生まれるかもしれないのだ。
「ふふっ気になる?ソフィアちゃん」
そう言ってニヤッと笑う。
「いや、別に」
気になるわけではない。
「……ふぇぇ?なんで…?」
意図が伝わっていないのか、死神はそんな風に驚いた。
「あ、じゃあ気になる…ってことで」
意図を説明するより、気になると言った方が話が早いと思い、そう口にする。
「…はぁ〜ほんと変わらないね?」
死神は呆れたようにそう口にする。
変わらない…?
「まぁ、いいや。ん〜雰囲気崩れちゃった…えーと…あ〜仕切り直し!もう1回聞いて!」
死神は髪を掻いてそう言う。
「じゃあ…貴女の名前は?」
「ふふっ気になる?ソフィアちゃん」
「うん」
そう言うと死神は吹き出してしまった。
…何故?
小首を傾げていると、こう言ってきた。
「ふふふっあははっ……はぁ…ごめんごめん。前にも似たような事をやったなって…もう1回お願い」
こういう話を知り合いとよくするのだろうか。
その後、先程の『うん』のところまで来た。
「私の名前を知ると、きっとソフィアちゃんは今のソフィアちゃんじゃなくなっちゃうからね。まだ明かせないよ」
「そうなんだ。今の私じゃなくなるって?」
呪いか何かでもあるのだろうか。
「あぁ、普通なら名前を知っても大して変わらないだろうけど、ソフィアちゃんだけはダメって話。思い出しちゃうからね」
死神はそう言う。
「…?特定の単語を言われるだけで…そんなに変わるものなの?」
あぁ…でも私『煙草』って言葉が……うっ…マシにはなったけど…キツいんだった…
「◆◆ちゃんらしい疑問だね。でも、私の名前は…本当にダメだと思う。理由はまだ明かせないけど」
「そっか」
「あぁ、あんたがあの時止めたのって、そういうことだったのね」
声の方向を見ると、いつの間にかイザベラが腕を組んで座っていた。
「トリガーについて伝えて無かったことは謝るよ。ごめんね〜」
隣に座る死神がポンポンとイザベラの肩を叩く。
「ほんっと…今頃ヒヤヒヤし始めたわ。そんな危険な状態だったのね」
イザベラは両手を肩の高さにあげつつ、そう言う。
『お手上げ』のジェスチャーと言えばわかりやすいだろうか。
「私が止めてなかったら、違う状態の◆◆ちゃんになっちゃってたよ」
「そういうことなら『絶対神の導き』とやらの話も頷けるわね」
「…?…何の話?」
「「あんたには関係ない」」
2人は同時にそう言う。
「…そっか」
…結局、死神のことはどう呼べば良いのだろうか。




