102.嗚呼、血が欲しい
ミオ視点。
不老不死になって、一つだけ…欠点が増えた。
それは吸血衝動。
何故か、液体を飲めばある程度抑えられるものの、1週間でやはり限界が来る。
その限界が、今日である。
「多分、私と契約したせい。元とはいえ、死神だったから、死を間近で感じ続けるのと同じ状態になり、本能が暴走気味になってるんだと思う」
目の前のリムリーはそう言う。
「治す方法とか…」
私はそう問う。
「…本能は治せない」
「そっか…」
「その代わり、私の血を飲んで」
「えっ…でも、神様の血って…」
「別に、契約している相手なら良いから…ほら」
そう言うと、リムリーは着ていたドレスを破き、首筋を露出させた。
…神の肌…血…
それは普通の白い肌なのだろうけど、私には高価な…とても高価な肉のように見えた。
「で、でも…リムリーには迷惑をかけたくない…」
そう言って私は頭を抱える。
っ…
『飲みたい。強い者の血を』
『飲みたい。強い者の血を』
『飲みたい。強い者の血を』
…ソフィア姉の血を飲んだ記憶がフラッシュバックする。
頭が痛い。
あの蕩けるような柔らかい肌…歯を突き立てれば流れ出てくる赤黒く濃い血…甘く感じて…どんどん欲しくなる。
「飲んで良いから…私は大丈夫だから」
そう言うリムリーの声が、酷く遠くに聞こえた。
…『喉が渇く』。酷く『喉が渇く』。
…早く…飲まないと…喉が枯れてしまう前に。
嫌!だめ!
理性が幾ら叫ぼうと、行動は変えられない。
「っ……!ごめん…なさいっ!」
私はまるで何者かに操られているかのように、ゆっくりと、一歩一歩リムリーへ近づく。
リムリーの前で立ち止まり、自分の意志に反して、艶かしい手でリムリーに絡みつき、カプリと首筋に噛みつき、血を飲む。
濃厚で…サラサラとしていて…甘く美味しい。
私の最後の理性は…そこでプツリと消えた。
重い瞼を開ける。
「おはよう、ミオ」
そこにはリムリーがいた。というか、現在進行形で膝枕をされていて、顔を覗き込まれる形になっている。
「おは…よう。私…何やらかしちゃったの?」
本能に身を任せてしまったところまでは記憶がある。
「えっと___
リムリーによると、別に獣のように貪っていた訳ではなく、性格と目の色は異なっていたものの、いつも通り会話をできる感じのようで、『昂っている』時の私が一番近いと言われた。
実際、自分の身体を見てみると、纏っていたスーツシャツは第1ボタンが外れ、ネクタイはどこかへ放り捨てられ、少しだけ血が付着していた。
確かに、『昂っている』時の行動に似ている。
「あぁ、そういえば、『リムリーと一生一緒にいたい』なんて言ってた」
リムリーのそんな付け加えに顔が熱くなる感覚を覚えた。
…わざわざ言わないでよ、そんなこと。




