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恋人

「驚かせてしまってごめんなさい。真っ暗の中でどうしたらいいかわからなくて。

そうしていたら光が見えて、そこへ行こうと思ったら引っ張られたんです。」

6畳の和室で、ウエットスーツを着たままの小森優香が正座して頭を下げた。


木製の和室用テーブルをはさんで、優香の向こうに多嘉良、

右側に美和が座っている。


「いえ、大丈夫です。ちょっと大騒ぎしてしまいました。

こちらこそごめんなさい」

肩をすくめて気まずそうに微笑む美和に、優香はニコリと笑った。


「それで、小森さんはどうして迷って?事故に何か疑問でも?」

多嘉良の言葉に優香の表情が暗くなる。


「わたしは…どうしてこんな…こんな事に…。

恋人の晃一と趣味のダイビングで海へ行って、潜ってそして…」



恋人で2歳年下の城田晃一とは社内恋愛だった。

彼にダイビングが趣味だと言ったら「自分もやりたい」と始めて、

いつの間にか付き合うようになっていた。


でも会社は仕事をするところ。

仕事以外では無駄話はしないように気を付けていた。

たまにケンカもするけれど、彼の収入が安定したら結婚しようと約束していた。

会社の人にはまだ何も言っていなかったけれど、幸せだった。


4月。新人さんが入社して晃一は奥村唯という、なんともかわいらしい

女性の指導をするようになった。

その頃から、会う頻度が激減した。



心の中はもやもやしたり、何かが詰まった感じがして苦しかったが

「きっと忙しいんだ」と思って我慢してた。



「別れたい」

そう言われたのは、社内で晃一と奥村唯との関係が噂された頃だった。


「わたしとのことは内緒だったくせに。わたしたち、付き合っていたのに。

みんなに話を聞いてもらうわ」つい、感情的になってしまった。

「待って。まってくれよ」

「イヤよ。奥村さんにもあなたがどんな人か知ってもらうわ」

そう言って別れた。



…いいえ。だめ。こんなのはだめ。ちゃんと話し合わなければ。


翌日、後悔して「ごめんなさい」とメールしたら

「こっちこそごめん。やっぱり別れない。お詫びにデートしよう。

久しぶりに潜りに行こうよ」と誘われた。


優香はこぼれるような笑みで

「そうしてくれるの!?嬉しい」とOKした。


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