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海からの訪問者

「ぎゃああああああああ」

村中に美和の絶叫が響き渡る。


出来上がった炭を運ぶカラス天狗族、隻眼の愛鷹(あしたか)

獲れたての魚が入った籠を持つ河童族の早瀬と梓が声の方向へ目をやる。

その他の村人は老人で耳が遠く、聞こえないために

のんびりといつもの生活を送っていた。


屋敷で植木の手入れをしていた、聴覚の優れた狐族の戸隠(とがくし)が真っ先に滝へ走った。


「どうしました?」

「どうした?美和」

戸隠と多嘉良が同時に滝にやってきた。


「わああああ。出たのー」パニックの美和は戸隠にしがみつく。


「…しがみつくなら俺みたいなおっさんよりイケメンですか?

美和さん、意外と冷静じゃね?」

そう言いながら、多嘉良は川面を見ている。



美和を心配した戸隠たちが、ついでもあって神社に集まっていた。

小さな社務所の奥の部屋の縁側で、美和の話を聞いている。


「川からずぶ濡れの女の人が出てきたの」

「うーん、これかな?」

パソコンでダイビング中の事故死の記事を見つける多嘉良。

多嘉良の言葉に、美和は画面を覗き込んだ。

「あ、この女の人、似てる」



名前は小森優香。28歳。

ダイビング中の事故。死因は水死。

毛先にウェーブのかかった、胸あたりまである髪にしっかりした顔立ちで

優しそうに微笑む彼女の画像がそこにあった。


「海で死んだのに、川にいた美和ちんのトコに出たの?」

縁側に座った梓が誰に聞くともなくつぶやいた。

「川は海に繋がっているからね。それと美和の能力が合わさって

波長が合って呼ばれたんじゃないかな」

多嘉良の答えに「そっかー」と納得する梓だった。


「とりあえず無事でよかったです。わたしはこれで」

戸隠がお辞儀をして去って行く。。

「戸隠さん、ありがとうございました」

美和がお礼を言うと、戸隠は軽く会釈して帰って行った。


「何事もないなら俺も行くよ。これ炭な」愛鷹が縁側に荷物を置く。

「ありがとさん。これで焼き鳥焼くとサイコーなんだよ。あ、そこの野菜持ってって」

多嘉良が縁側に置いた野菜を指さす。


「梓ちゃん、俺たちも行こうか」

「うん。多嘉良さんお魚置いていくね」

早瀬と梓には美和が持ってきた都会のお菓子─チョコとキャンディを渡した。

「ちゃんと歯磨きしなさいよ」

多嘉良は子供には、お母さんのように世話を焼いたりする。



「さて、美和の後ろにくっ付いている小森さん…かな?」

「えええええええ」

多嘉良の言葉に振り返る美和。


集中するとそこに川で出会った女性がいた。

川面で見たときよりも綺麗になっていた。

 「あああああ」

「気が付かなかったか?無意識に視えないチャンネルに変わったのか」


読んでいただき、ありがとうございます。

引き続き、楽しんでいただけますと嬉しいです。

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