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弁えすぎた令嬢  作者: ねこまんまときみどりのことり


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遊園地の完成 その2

 遊園地の屋台。

 そこは長年、少ない食材を使い孤児達の栄養を考え尽くしてきたチェルシーに依頼することにした。

 補佐にはコロネの住む食堂で働いているルトースとカンラ母子に依頼を行う。

 本職の女将さんには余計な負担を背負わせる訳にはいかず、島の秘密は打ち明けていない為、今回は見送りだ。


 本当はこの店の絶品料理を味わって欲しいけれど、それはコロネと常連客の幸福に留めておく。



 ルトースとカンラは、「お役に立てるなら喜んで」「是非、手伝わせて下さい」と快諾してくれた。


 チェルシーの方は遊園地の目的を知っている為、「任せておいて。頑張って腕を振るうから」とこちらも意欲的に返事をくれた。



 希望をなくしている子を救う為に、そして危機的状況な子がいればそのまま保護する為に、コロネ達は動くつもりだ。


 場合によっては拉致に繋がる行為だが、そこは世界に張り巡らせた情報が後押しするだろう。



 ワッサンモフ公爵家には本来の隠密に加え、ミズーレン伯爵家から引き抜いた隠密達も大勢いる。

 来たばかりの時は未熟な部分があった彼らも、レイアー、メロアン、タバサに指導を受け、精進を重ねた結果、優秀な隠密に成長していた。


 コロネが引き抜いた時には、彼らを隠密をさせる気ではなかった。好きな職種に就いて良いと話していた。

 元々の理由が、ミズーレン伯爵家の弱体化を図る為にしたことだったからだ。



 それでも彼らの多くは、隠密としてワッサンモフ公爵家に仕えることを選んだのだ。

 但しその貢献の力は、今までと少し違うものになった。


 チャルメ・エアピゾーラ次期侯爵は、次代の侯爵であり、銀行や複数の商会の運営を任されている。

 ワッサンモフ公爵家は秘密裏に、彼ら(エアピゾーラ侯爵家)と商会業務の提携を図り、人材と物流の交流を行っている。


 ワッサンモフ公爵家が信じる人材(隠密達)は、世界各国の銀行関係や商業関係先に雇われ、身分も保証されていく仕組みが作り上げられた。

 

 そこで得た情報と、モロコシ達が掬い上げた情報を精査し、遊園地に招待する人材を決めていくつもりなのだ。



「まずは現時点で辛い目にあっている子供達を招待し、緊急性のある子供や大人達は保護するわ」



 ただ大人達は遊園地には呼ばずに、現地の保護団体に引き渡す方向だ。声をあげられない事情があるのなら、それを手助けする方向で。


 大人には既にコミュニティもあり、引き離すことだけが救いにならないこともある。親、子、兄弟姉妹、夫、妻、恋人等が絡み、何かしらの事情があっても離れられないこともあるからだ。

 それでももし彼らが望むなら、その後に引き離す援助を行うつもりなのだ。


 ただコロネ達も正義の味方ではないので、目に入ったものだけに限られるが。


 

 本当のところ、他国に介入するつもりはなかった。

 けれどミカヌレのように幼くして味方がおらず、辛い状況に陥る者を見過ごせないと思ってしまったのだ。



 幸いなことにワッサンモフ公爵家や元チェロスト子爵領(引き継いでくれた領主が良い人だった)周辺は、福祉に力を入れたことで人材が育つことになり、著しい貧困は消滅し領地全体も活気がよく税収も上がっている。


 王太子ストビーテの管轄地も安定しており、新しくミントジュレに成り代わった王子も、ストビーテを助け領地の改革を進めている。


 ユゼフィラン国は今、確かな経済活動に着手し始めた。ある意味で王族や貴族の特権を無視した固い改革になっていたが、世界的な風潮がそうなのだから、自国だけ留まる訳にはいかないのだ。


 たとえその原因の一つが、コロネとチャルメの結んだ同盟のせいであったとしても。



 ストビーテはミントジュレやワッサンモフ公爵家の隠密の協力を得て、汚職や領地管理の放棄、他国へ情報漏洩する者達を切り捨てていく。


 国王へ賄賂を渡す貴族がいようとも、証拠が積み上がれば罪は明るみになる。国王付きの隠密が動いても、ワッサンモフ公爵家の隠密に勝てる筈もなく、可愛がっていたミントジュレに縋りつこうとも、今の彼はほぼ他人である。


 恐らく先王か現国王、または血の近しい者の子が新しいミントジュレになっているのだが、容姿が似ているだけで偽物とは気付かれていない。

 国王夫妻にとってミントジュレは、可愛がっていたペットと同じだったのだろう。そうでなければ口調や表情、骨格、身長、ホクロの位置等、明らかに違う部分はたくさんあったのだから。


 違和感に気付かずに「可愛がっていたのに!」と喚く夫妻に、ミントジュレが思うことはない。本当にほぼ他人だから。




 そんな感じでいろいろと改革が進む中、遊園地は完成した。隠密達がやる気になっていた演劇の方も。

 演劇の内容はこうだ。

 苛められ泣いていた男の子を助けたら、実はその子は妖精と人間の子供だった。迷子になっていたその子を探し回っていた妖精とその伴侶の人間はお礼に、保護してくれた者に幸福になる祝福をかけた。それと美味しい果物も。

 逆に男の子は怒られていた。

 いつも黙って冒険だと言い、家から抜け出すからだ。今回のことで反省しただろう。

 そして男の子を苛めた人間には、ちょっとした祝福をかけた。たとえば虫に刺されやすくなる、目覚めたら虫が枕元にいる、歩くと蜂や蛾が自分目掛けて飛んでくる等だ。

 それらは虫が寄ってくる祝福なのだが、たいていの者は喜ばないだろう。中には食べられる虫もいるので、喜ぶ者のいるかもしれないが。その祝福は1年くらい続くらしい。


 ちょっとした勧善懲悪なお話だった。


 前半では街を冒険するワクワクする少年を、そして悪い人間がいる事実を、さらに箒を振り回して男の子を救う優しい少女と、美しい妖精としっかり怒ってくれる優しい父親を隠密達が演じるのだ。

 ラディッシュの魔道具で、街の様子を映し出す映像と音や光の効果を演出し、妖精役の女性をシルフの魔力で浮かせる等、工夫が詰まっている舞台の完成だ。

 衣装はコロネの洋品店が全面協力で、素晴らしいものが出来上がった。



「きっと喜んで貰えるね」


「当然よ。よく頑張ったわね、コロネ」


「みんなで協力したから出来たの。私の力なんて微々たるものよ」


「それでも、ここまで纏めあげたじゃない。私じゃあ、思いもつかなかったわ」


「全部私の我が儘なの。願望なのよ。でもすごくワクワクしているの。お母様も楽しんでくれる?」


「ええ、ええ。コロネがいるからいつも楽しいわ。演劇のあの男の子はコロネみたいね」


「そうなの。私なの。きっと支えてくれる人がいなければ、ずっと苛められ泣いていた筈のもう一人の私。でも私にはたくさんの味方がいたから、今があるの」


「そうね……。親がいない時も、貴女は支えられ立っていた。今までも今回も、みんなのお陰ね。ありがたいことだわ」



 涙を浮かべコロネを抱きしめるミカヌレと、目を瞑り久々の母の体温に安堵するコロネ。


 近くで優しく見守るスライストと、温かく瞳を向けるチャルメ。ラディッシュは兄のように頷き涙を滲ませた。

 


 レイアー、タバサ、モロコシ、チェルシー、ガンテツ達も感無量だった。




 



◇◇◇

 蓄電池の技術は封印した。もし妖精の協力が得られなくなった時の為に、書物として書き記して。

 チャルメは妖精達に協力して貰って出来た魔石で、銀行のシステム及び商会の動力をいつも通り回している。

 現在はワッサンモフ公爵領、エアピゾーラ侯爵領、エルフの国、ニズラッシェリル国が魔石の主な原産地となっているが、実際に採掘はされずに使用済みの魔石を集め再利用している状態だ。


 チャルメ達が多く使用する魔石はすぐ回収できるが、それ以外の魔石はゴミとして捨てられている。


 コロネは魔石を回収するごとに、子供達に賃金を払うことにした。100個で半銅貨1枚(500円)だが、コロネ達は助かり子供達もお菓子が買える良い値段になるだろう。



 この国では金貨1枚……………10万円

 銀貨1枚……………1万円

 銅貨1枚……………千円

 半銅貨1枚………500円 

 が、だいたいの相場である。



 エルフの国でも暖房器具や調理器具、照明等は魔道具を使っている。魔力が減らず疲れないので重宝されているのだ。

 何しろ女王の弟である王子と巨匠ノームの作品だから、安全性や見た目にも優れた逸品だ。



 魔石採掘費用分の浮いたお金は、各国(チャルメだけは侯爵家個人となるが)独自で運用している。


 チャルメは人件費に回し、コロネは福祉に使い、エルフの女王エブラントは貯蓄していた。


「妖精達が協力しに行っているから配当を得たけれど、我が国では特に変化はないわね。ラディッシュの欲しい物があれば買えるように、そのまま取っておくわ」


 そんな感じだった。

 愛され王子は、今日も魔道具の開発を続けていく。移動時は念のために隠蔽魔法を使っているが、コロネのところやチャルメ家周辺、ガシェーラル国では隠れることはなく、変装もしていない。

 それだけでも彼は、とても息が吸いやすくなっていた。世界が広がったのだった。






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