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ワードローブできました

翌日、親方の工房に向かうとワードローブはできあがっていた。それも2つ。

1つは蝶番が普通に留められた物。もう1つは蝶番の金具が飾り彫りしてあり、外に見せる形で留めてあった。

「うわぁ、この外に留めたタイプも素敵だね」

僕のその称賛の言葉にハマスさんが嬉しそうに笑った。

ハマスさん昨日よりクマが濃くなってるけど・・・


ラクストもアレスもワードローブの前に行き扉を開いたり閉じたり、中に見本で入れられたハンガーに掛かった服を掛けたり、取り出してみたりしてる。

「いいな」

ラクストも満足そうにしてる。



そこに親方がやってきた。

そして、アレスに膝をつき、最敬礼の挨拶をした。

「アレス殿下」

「親方、とうぞ立って下さい」

「はい」

親方は立ち上がりはしても顔は上げない。

「親方、今、僕は旅の途中です、冒険者としてです」

「親方、普通でいいってさ」

ラクストの軽いその言葉に親方も顔を上げる。


「親方、話しがきているようですね」

「はい」

「まだ堅いですよ」

アレスが苦笑いしながら親方の腕をポンポンとたたいた。

親方は大きく深呼吸するとお腹に力を入れるように腰の横で拳を握った後で力を抜いた。

「話しは聞きました。王城に向い、衣装部屋の改装とワードローブの設置をして欲しいと」

「はい。よろしくお願いします」

アレスがにこやかにお願いしてる。


僕は最初、意味がわからなくて、でもよく考えて

「アレス?」

「ヒオ、これは素晴らしいアイデアだね。母に話したら即、設置をと言われてね。まだ色々と準備があるだろうし、蝶番などの金具も数が必要たろうから、親方の準備のでき次第でと了解を得たよ」

やっぱりこれってトイレと同じパターン。

「親方、大丈夫?」

「おっ、ヒオ。ありがとうな。今までも考えて作ってきたが、まだこんなに色々とアイデアがあるんだな。頭が固くなってたんだな。仕事がまた楽しくなってきたよ。」

「そう?大変じゃない?」

僕の心配そうな様子に親方がニヤリと笑い

「まだまだ。他の工房の皆とも情報を共有しようと思ってるよ」

「そうなの?」

親方が言うには、ワードローブの蝶番なども、他の工房にも、もっと違う素材を使ってる所もあるし、小物の細工物を作ってる工房でも蝶番を使えば新しいデザインが産まれてくるだろうと。


実は今日も隣のお店の職人さんが商品を持って、この工房にきているらしい。

僕達もその職人さんの所にいってみる。

「あっ、組み木細工だね」

そうそれは、この前見て素敵だなと思っていた組み木細工。

とりあえず自分の商品も持ってきたんだって。



「組み木細工綺麗だよね。今は引き出しだけだけど、この一番上を蓋にして、ここに蝶番を付けるといいよね。そうして、こんな感じで布を貼っていって指輪とかを挿せるようにすれば手に取らなくても指輪やイヤリングが選べるもんね」

ここまで話して僕は皆が話しを止めて僕を見ている事に気付いた。

「な、何?」

僕、またやっちやったかしら・・・


「ヒオ、お前凄いな、この小さな頭にどんだけのアイデアが入ってるんだ」

ラクストが僕の頭を両手で掴んでグリグリする。

「ラクスト痛い」


「坊主、さっきののを紙に描いてくれないか?布を貼るところだ」

「うん。いいよ」

ママも小さなジュエリーケースを持っていて指輪とピアスか入っていたっけ。


今、僕がギルマスに持っていってるケースは布は貼ってあるけど指輪とかを立てて見せるような綿とかは入ってない。どんな形状の物が遺品になっているかわからなかったから。


心が癒えたら遺品だけでなく、その人との大事な思い出の品も一緒に入れて貰えたらいいかなって思うよ。


この後、親方達は専門的な話しになっていって、皆でアイデアを出したり、自分の工房に入って商品を作ってみたりと僕は必要なさそうだったので、ラクストと2人(アレスはまだ親方と打ち合わせがあったので)で他の家具屋さんに商品を見にいった。



僕は前に買ったローテーブルはテントの自分の部屋に持っていって皆でいる部屋用に大きなローテーブルが欲しいと思っていた。

ラクストと入ったお店でテーブルを見てまわるが、ほとんどが椅子に掛けて使うテーブル。

僕の望むローテーブルはない。

「ねぇラクスト」

「ん?」

「ラクストも椅子に座る方が楽?」

「んー別にそこの拘りはないな、ヒオといるようになってローテーブルでの食事もなんの違和感もないしな。元々外での食事は椅子なんてないしな」

そっか、そうだよね。

でもアレスはどうだろうか?

「ヒオ、いいんだよ。お前の好きにすれば」

「ラクスト」

「あのなヒオ、普通はテントの中にローテーブルやらワードローブなんてないんだよ」

あっ、そうか、言われてみれば確かに。

「ありがとうラクスト」

そんな話をしながらお店の奥まで入っていく、そこには綺麗なキャラメル色のテーブルがあった。

木を輪切りにしてあって自然な丸みがあり、木目もとても綺麗に入っていた。

でも残念な事にそれもローテーブルではなかった。

「いいテーブルでしょう?」

お店の人がラクストに話しかけてくる。

「あぁ、ただ残念な事に希望とはあってなくてな」

そのラクストの言葉に店員は残念そうな表情をする。

「どのような、ご希望が?」 

「ローテーブルを探しているんだ」

「ローテーブル?それは珍しいですね」

やっぱり珍しいのか。残念だな。


僕らがあきらめて帰ろうとしたときだった。

奥からその店員さんよりも、もう少し若い人が出てきて僕達に話しかけてきた。

「少しお時間を貰えますか?」

「と、言うと?」

その店員はテーブルを大事そうになでてから

「このテーブルは気にいって貰えましたか?」

と尋ねてきた。

「はい。形も柔らかく年輪もとても綺麗です」

「ありがとうございます。ローテーブルにする為に足を切るだけと思われるでしょうが私にも拘りがあります。最上の状態でお渡ししたいと思います」

そうか、そうだよね。職人さんだもんね。それにしてもあまりにも僕達に丁寧な接し方の気がするのだけど。

僕がそう思っている時だった。

その店員が一度後ろに下がって戻ってきた。

その手には僕が作ったケースが。


「あっ、そのケースは・・・」

「はい。ギルドマスターより頂きました。その時にこのケースの事が気になったので無理に聞き出しました。お名前は教えて貰えませんでしたが、討伐したチームのメンバーの方だとお聞きしました。・・・犠牲となったのは父でした。山に木を探しに職人と入り・・・何も戻って来ないのが普通の中で父の指輪とタグが戻って来ました。そして職人のタグも・・・感謝しかありません」

そう言って深々と頭を下げた。

「そしてこのケース・・・父の遺品を入れて渡された時、父の手に触れられた気がしました。渡された日から私の近くにあります。なぜか暖かいのです」

そう言って僕の作ったケースを優しくなでた。

「母もこの工房にきてはこのケースに触れていきます。とても愛しそうに」

あぁ、僕のケースで癒されてくれている人がいる。

僕は何も言えなくなりラクストの手をギュッと握りしめた。

ラクストは僕の肩を抱き寄せてくれる。

あっでも、遺品はこの工房に置いているのか・・・

きっと工房を継いだ息子さんに預けたのだろう。


僕はお母さんにも癒されて欲しい

「ラクスト、お願いがあるの」

僕のその言葉にラクストがわかってるって感じでポンと僕の頭に手を置いた。

「いいよ。ヒオのいいように」

「うん」

ラクストのその言葉で僕はウサギさんリュックを下ろすと中からケースを1つ取り出した。

「あの、お兄さん」

「はい」

「これをお母様に渡して欲しいの」

僕の手にあるケースを見てお兄さんが慌てる。

「いいえ、いけません。1つ頂いただけでも大変な事なのに、もう1つ頂くなんて」

でも僕はケースを出したままお兄さんの方へ近づく

「あのね、僕が嫌なの。僕は全ての人に癒されて欲しいの。だからもう1つ遺品があるなら、お母様に渡して」


お兄さんは涙を貯めてうつむき、

そして頭を下げて僕のケースを受け取ってくれた。


その後には明日またお店にくる事を約束して僕達はお店を後にした


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