弔いの祭2
皆あちこちで笑い、飲み、食べて楽しそうだ。
雪や毛玉、ラクストもまた食事してる中、僕はウサギさんリュックから出したクッションに寄りかかって、周りを見てたけど、ふと思い立って女神様の像の前に歩いていった。
そしてロウソクを貰い、火を灯した。
「ママ、ママも皆にこうして、偲んで貰えたかな。寂しくない?僕はママと会えなくなって、やっぱり寂しいよ。だから今回沢山の人達が亡くなったのを聞いて、何かしなきゃって思ったの。何か持っていられたら少しは慰めになるかなって。癒されるかなって」
ママに向かって話しかけていた僕。
涙が流れるに任せたまま話し続ける。
「僕には雪や毛玉、ラクストにアレスもいる。皆本当に優しいし、楽しいんだよ。ママはどう?
ママも寂しくないといいな」
「ヒオのママもきっと寂しくないにょ」
急に横から声がして毛玉に頬の涙を舐められた。
「毛玉」
「ママはとっても優しかったから、いろんな人に愛されて寂しくなんかないよ」
「うん」
僕は毛玉をギュッと抱き締めて顔を埋めた。
そんな2人のところに雪がやってきた。
「ヒオ、お前に話しがある」
雪が改まって話しかけてきた。
僕は涙をふきながら顔を上げた
「今回我は先程この弔いの為に力を解放し、神との道を開いた。その時に神より預かりし物がある」
「えっ?」
「いつヒオに渡すか考えていた、タイミングによってはかえって傷つけてしまうのではと思ってな。しかし、やはり今が良いと思う。ヒオ、手を出しなさい」
雪にそう言われて、僕は手をさしだした。
その出した手の上に雪がそっと置いた物がある。
それは、前の世界で見覚えがある物。
いつも母の胸元にあった物。
「あっ・・・」
僕はそれしか言えずに涙が溢れた。
「ママ・・・ママ」
それ以外何も言えず座り込んでしまった僕。
ラクストがそっと僕を抱っこして僕達のテントに戻る。
「雪、これ・・・」
「あぁ、女神様がヒオのママの亡骸を清めた時に胸元にあるのを覚えていらして、もう一度時を戻られてその鎖を持って来られたそうだ」
そう、それはママのロザリオ。
ママがいつも神様への祈りを捧げていた物だった。
「良かったなヒオ」
雪が慰めるように頬の涙を舐めてくれる。
毛玉も僕に寄り添ってスリスリと頬を寄せてる。
その後の僕は流れる涙を止める事もできずにロザリオを握りしめていた。
僕の近くにはアレスやラクストもいて何度も髪をなでられ、頬の涙をそっと拭かれた。
「眠ったようだな」
ラクストが涙の残るヒオの頬をそっとぬぐいながら上着をかける。
「ヒオがこのように泣いたのを初めてみました」
「あぁ、俺も初めてだな」
アレスもラクストもヒオが泣く姿を見た事はなかった。
それでもヒオの年齢を考えれば親が恋しくても不思議ではないのだ。
雪からヒオの母親の事は聞いていた。
そしてヒオがこの世界の者ではない事も。
だからという訳ではないが、そんな素振りを見せる事のなかったヒオがこのように母親の事を思い涙を流した事で、ヒオの遺族への思いに思い至った。
そして、ヒオに母親の遺品が届いた事に心からの感謝の祈りを女神に捧げた。
「おっ、なんだチビッ子はもう寝たのか?」
ギルマスが酒瓶を手にやってきた。
「あぁ、今寝たところです」
アレスが雪に寄りかかり、眠りにつくヒオの頬をそっとなでながら返事をする。
「ここで話すのはうるさいか?」
「かまわぬよ」
雪がそう返事をする。
「子供というものは一度眠りにつくと眠りが深い。それに我がともにいる故な」
「そうか」
そう聞くとギルマスはどっかりと絨毯に座り、アレスとラクストに新しいグラスと酒を渡した。
「雪様、少しお話が」
「ふむ、ではしばしシールドをはろう」
雪がテント周りにだけシールドをはった。
それを確認しギルマスが話しだした。
「今回のオークの討伐、そして遺品の回収、改めて礼を言います。本当にありがとうございます」
深々と頭を下げた。
「ギルドマスターよ、今回の討伐に置いて、その後の処理そして、この弔い祭と数々の働きご苦労であった」
「はっ、恐れ入ります」
ギルマスは再度頭を下げ、次にアレスに向き直ると、また深々の頭を下げた。
「アレス殿下、遺品の回収という我らでもきつい仕事にお付き合い下さり感謝申し上げます」
「ギルマス、頭を下げる必要はない。私は今回の討伐、初めての経験であった。そして、これ程の犠牲の場に居合わせるのも。私はこの国の皇族として、このような現実も知らなければならない。人々の悲しみも・・・な」
「はい、それでも今回、新たにメンバーの犠牲が出る事もなく無事に終える事のできた事、感謝にたえません。そしてラクスト、この場にお前程の冒険者がいてくれた事、雪様や、アレス殿下と供に戦ってくれた事、感謝する」
ラクストはその言葉に酒を上に掲げただけで返事とした。
「もう、改まった話しは良かろう。全て終えたのだ、後は弔い祭を楽しめばよかろう」
「そうだぜ、ギルマス。うまい酒持って来てくれたんだろうな?」
「おう、一番の上物を持ってきた」
「よし。アレス飲むぞー」
「はい、ラクスト今日はとことん付き合いますよ」
「おーついてこれんのかー?」
それからの2人、街の人達の輪に加わり酒を酌み交わして、遺族とも泣き笑いしながら弔い祭を過ごした。
そして、翌日、昼過ぎまで2人が起きてくる事はなかった。




