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Dawn of Champions(ドーン・オブ・チャンピオンズ)  作者: LÉO LIMA


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第9章:告白と羅針盤

リサンドラは大剣を夜の影(ナイト・シェイド)に向けたまま、静かに言い放つ。


「で、どうする?ローグさんよ。どっちにしてもアタシはアンタの秘密を暴く。でも、自分の口から言った方が、お互いにとってマシだろ?」


(夜の影)「さっき、自分の加護を使うのはリスクだって言ってただろう」


「そうさ。でもね、そのリスクよりも、このまま何も知らずに任務を続ける方が危険だって判断したんだよ。だからこそ、やる価値はある」


(夜の影)「少しは考えろ。仮にこの中に内通者がいたとしたら、今この瞬間にその情報を与えてしまったら――俺もお前も任務をぶち壊すことになる。世界を救うためには、冷静に、戦略的に動くべきなんだ」


その言葉を聞きながら、エロウェンはふいに一歩下がり、大きな木の下に腰を下ろして皆を見つめ始める。それを見たカルタンが近づく。


「ねぇ、なんか言わないの?意見とか」


「我には人間の存続など関心はない。エルダーグローヴの命に従い、この一団に同行しているのみだ。自然を守ること――それが唯一の目的である。

もしこの仲間たちがその障害となるなら、我はただ一人でも旅を続けよう。そなたらの疑念や混乱に関わるつもりはない」


カエウの背から降りたロリアンが、リサンドラとナイトシェイドの間に歩み出て口を開く。


夜の影(ナイト・シェイド)さんの言うことも一理あります。冷静さと戦略は、今の我々には欠かせません。ですが、情報不足と疑心が共に我々の前に立ちはだかるのも事実です。

そこで、両方を解決する案を考えました。ただし、全員が少しずつ譲らなければなりません」


(カエウ)「なになに、ロリアンくん?どんな案なの?」


「結局、夜の影(ナイト・シェイド)さんの秘密はどのみち明らかになるのですから、今ここでそれを知ることは問題ではありません。それより問題なのは、内通者の有無です。だから、こう提案します」


(ロリアン)「夜の影(ナイト・シェイド)さんは、自らの意志で我々に真実を語ること。そして、リサンドラさんはソフリスの加護を使って、この中に内通者がいるかどうか、誰なのかを見極める。

これで、疑念と情報不足を一気に解消できます」


リサンドラはロリアンを見て、大声で笑った。


「ハハハッ!こいつ、やるじゃないか。アンタ、戦士より参謀の方が向いてるんじゃないのかい?」


そう言いながら、大剣を背中に納める。


「アタシはその提案、乗ったよ。信じ合うためにはアタシもリスクを背負う必要がある。それを示すには、この加護を使うのが一番手っ取り早い。

ソフリスの加護を使えば、アタシは24時間戦えなくなる。つまり、その間は丸腰で無防備。アタシの命を、アンタたちに預けることになるのさ」


(夜の影)「……そんな無茶をすれば、ただでさえこの戦いで皆が負傷し、疲れ、魔力(マナ)も尽きかけてるってのに、一日中一番の戦力を失うことになる。そんなの、あまりにも危険すぎる」


(カエウ)「でも、夜の影(ナイト・シェイド)さん……僕たちはもう危険の中にいます。もし誰も信じられなければ、今ここでチームは崩れます。

仲間がいなければ、疑う相手もいないけど……頼れる人もいない。そんな世界を救う意味って、あるんですか?」


夜の影(ナイト・シェイド)は返す言葉もなく、まだ血の滲む脇腹を押さえたまま、沈黙を保った。


(夜の影)「……わかった。じゃあ、戦略的に動こう。まずは荷馬車に戻って、しっかり休んで回復を始めるんだ。その間に話を進めよう。

そしてリサンドラが一時的に戦えなくなるなら、その準備もしておかないとな」


一行は馬車へと戻っていく。ただ一人、エロウェンだけが森の方へと歩き出す。


(カルタン)「あれ、エロウェン?どこ行くんだよ?もう旅しないのか?」


「薬草を探しに行く。我らの隊には治癒士がいない。ならば手を打たねばならぬ」


(カルタン)「そ、そっか……でもさ、君も治癒魔法使えるんじゃない?カエウくんもそうだろ?」


(カエウ)「僕、今は魔力(マナ)がゼロなんです。まっさら」


(エロウェン)「我も残りはわずかだ。さらに《エルダーグローヴの樫の杖》の魔力(マナ)も使い果たした。今ある魔力(マナ)を治癒に費やせば、我も行動不能となろう。それに、全員を癒すには到底足りぬ」


―――――


数十分後、エロウェンが森から戻ってくる。手にも腰にもマントにも、採取した草が詰められている。


その後、皆は馬車に乗り込む。カエウが馬の手綱を取ると申し出る。


(カルタン)「カエウくん、ほんとに大丈夫?馬を操れるの?」


(カエウ)「うん、僕、もともと農村出身だし。それに今は一番軽傷だしね。回復に魔力(マナ)全部使っちゃったから、身体は元気」


(カルタン)「ごめんよ。ぼくはこの中で唯一の無傷だけど……馬の操作とか、まったくわかんないや」


馬車の中では、エロウェンがカルタンの荷物の中にあった魔導調理キットを使い、薬草を煮始める。

平たい金属板の中央に小さな赤い魔石がはめ込まれ、それが加熱魔法を起動し、まるでIHコンロのような役割を果たしていた。


同時に、エロウェンは草を潰して軟膏を作り出す。そこへロリアンがそっと近づく。


「あ、あの……エロウェンさん……えっと、僕、応急処置の勉強してて……本当に基礎だけですけど、手伝えます、たぶん……」


(カルタン)「おいおい、ロリアンくん、おまえどんだけ勉強してんの!?図書館丸ごと読んだんじゃねぇの?」


ロリアンは真っ赤になり、視線を泳がせながら小声でつぶやく。


「う、うん……まあ……そんな感じです……ギルドの試験に受かる前は、図書館司書だったので……」


エロウェンは黙って頷き、彼に手順を教える。夜の影(ナイト・シェイド)の脇腹の傷をまず洗い、縫合し、薬草の軟膏を塗って包帯を巻く。ロリアンにはリサンドラの肩の貫通傷の包帯と薬草処置を任せた。


さらに、ロリアンの腹部の打撲にも軟膏が塗られ、最後に三人には温かい薬草茶が配られた。カルタンはその一杯をカエウのところに持っていく。


(エロウェン)「……あとは身体次第だ。休息と食事が回復の鍵となる。我も魔力(マナ)の回復が必要だ……」


馬車の中にはしばしの沈黙が流れる。そして、夜の影(ナイト・シェイド)が衣の下から何かを取り出して、床に置いた。それは、一つの羅針盤だった。


(夜の影)「この羅針盤は、教団が例の文書と一緒に見つけたものだ。奴らはこれを『破滅の羅針盤コンパス・オブ・ドゥーム』と呼んでいた。おそらく、教団が探している魔法のアーティファクトの方向を示すものだ」


(夜の影)「つまり、翻訳が終わる前から『禁断の地フォービドゥン・ゾーン』にそれがあると確信できていたのは、この羅針盤のおかげってわけさ。これがなければ、教団は何もわからない」


(夜の影)「だからこそ、奴らは何がなんでも俺を捕らえようとしているんだ。逆に言えば、俺はこの羅針盤があるから地図がなくても進むべき方角がわかるってわけ。

ただし、地図なしで未知の領域を進むのは無謀だがな」


カルタンがしゃがんで、コンパスをじっと見つめる。材質は金のようでいて、鈍く錆びたような色をしており、通常の方位磁針とは異なる謎の文様が刻まれていた。


(カルタン)「うおおっ……これ、すげぇな!」


(リサンドラ)「なるほどね。アンタが教団の動きを遅らせたせいで、あいつらは焦ってアンタを狙ってんのか。アンタが都市を避けて急いで移動してた理由も、ようやく合点がいったよ」


(カルタン)「でも、なんでここまで秘密にしてたんだ?」


(夜の影)「こういう状況下じゃ、普通は羅針盤を別の場所に隠したり、俺が死んだら自動で壊れる仕掛けを用意したりするもんさ。

実際、そう思わせることで安全が保たれてた。魔法の封印、個人しか解除できない呪文、やり方はいくらでもある」


(夜の影)「だから教団も、俺の信頼を得て情報を引き出すために密偵を送り込むってのは、十分あり得る手段なんだ」


(ロリアン)「なるほど……つまり、夜の影(ナイト・シェイド)さんが今もその羅針盤を持ってるか、あるいは誰かに託したのか、それとも罠が仕込まれているか、教団側には判断できないからこそ、情報収集のためにスパイを送り込んでくるってわけですね」


(リサンドラ)「ま、とにかく分かったことがある。それは、今後も教団は何としてでもこの『破滅の羅針盤コンパス・オブ・ドゥーム』を手に入れようと、どんどん強力な兵を送り込んでくるってこと。

今回みたいな手ぬるい手じゃ、次は済まされないよ」


リサンドラは背中から大剣を外し、それを馬車の中央にそっと置く。


(リサンドラ)「……さて、アタシの番だね。これからアタシはまる一日、戦闘不能の荷物になる。だから命を預けることになるけど……アタシを裏切ったら、ただじゃ済まさないからね!」


リサンドラは静かに座り、脚を組んで瞑想のような姿勢を取る。


《――叡智の女神の祝福ブレッシング・オブ・ソフリス!!》


次の瞬間、リサンドラの全身と瞳から藍色の光があふれ出す。

風が吹いていないのに髪がふわりと舞い、鍛え上げられた筋肉がみるみる萎んでいく。肌には皺が刻まれ、顔はまるで八十代の老婆のように老け込んでしまう。


「――知恵と真理の女神・ソフリスよ!お願いだから教えてくれ! この中に裏切り者はいるか?『ブラック・ハンド』の密偵が紛れ込んでいないか?

たとえ本人が知らなくても、操られていても、魔法の策略で真実を認識していなくても!」


その姿に全員が息をのむ。ついさっきまで誰よりも屈強で頼りがいのあった戦士が、まるで生気を失った老婆のようになっているのだ。


ロリアンが、彼女の言葉選びに感嘆する。


『……リサンドラさん、すごい……!裏切り者本人が気づいてないパターンや、操られてる可能性まで考慮してるなんて……!』


やがて藍色の光はゆっくりと消え、空中に舞っていた髪も*ふわりと落ち、元の位置に戻る。リサンドラは目を開けると、ゆっくりと立ち上がった。


(リサンドラ)「……よし、終わったよ、夜の影(ナイト・シェイド)。確認済みさ。――この中に密偵はいない。誰も操られていないし、知らずに裏切ってる者もいない。

……これで、もう少しは仲間を信じられるようになったんじゃない?このまま疑心暗鬼でいたら、倒される前に自滅するよ」


ロリアンは顎に手を当て、リサンドラと夜の影(ナイト・シェイド)を交互に見つめながら考え込んでいた。


『……これは予想以上に巧妙な計画だった。たとえ夜の影(ナイト・シェイド)さんがリサンドラさんの『祝福』が嘘だと疑っても、彼女がこんなにも無防備な状態を一日も続けるなんて、信頼がなければできるわけがない。

……狂戦士がこんな姿を晒すなんて、それこそが何よりの証拠だ』


カルタンは深いため息をつき、ホッとしたように体を伸ばす。


「はあ~……よかった~!本当に誰かが裏切り者だったら、心臓止まるとこだったよ……じゃあ、これで一件落着ってことでいい?

……あ、そうだ!この機会にさ、君の本当の名前って教えてくれない?『夜の影(ナイト・シェイド)』って……ぶっちゃけ、名前ってよりコードネームっぽいし。いや、失礼だけどね!」


外からカエウの声が響く。


「僕も知りたーい!!」


夜の影(ナイト・シェイド)は沈黙しながら、床に置かれた羅針盤を静かに拾い上げ、それを再び服の中にしまい込んだ。そして一言、短く名乗った。


「……俺の名前は、『ディミトリ・ステラノックス』。この名を隠していたのは、単なるローグ稼業の都合だけじゃない。今回の任務とは無関係な理由がある。

だから――くれぐれもこの名は他人の前では使わないでほしい」


(カルタン)「了解です、ディミトリさん!その秘密は、ぼくの墓まで持っていく所存ですっ!」


その一方で、ロリアンの表情が強張る。目を見開き、唇がわずかに震える。


『……ディミトリ……ステラノックス……!?』

やっとおおおおおおおお!!!!ようやく夜の影(ナイト・シェイド)の本名を出せたーーー!!


ローグ/盗賊としてはもちろん、ディミトリの過去を考えても「夜の影(ナイト・シェイド)」ってコードネームはしっくりくるんだけど、正直ずーっとこの名前で書くのがしんどかったんだよ!日本語だとそれっぽくてカッコいいかもしれないけど、ポルトガル語の「Sombra da Noite」は書くのも呼ぶのも、正直めちゃくちゃダサいし、違和感すごくて…(;´Д`)


カルタンのあのセリフ、あれ完全に僕の気持ちそのまんま(笑)。これからはたまに使うくらいになると思うから、書くのも翻訳するのもだいぶ楽になるはず…( ´ ▽ ` )

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