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Dawn of Champions(ドーン・オブ・チャンピオンズ)  作者: LÉO LIMA


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第8章:武の慈悲と疑念

森の中の街道の上。


カエウの前に一体のオークの死体。


ロリアンの前には、棘だらけの太い根と蔓に絡め取られた三体のオークの死体。


そしてリサンドラの周囲には、彼女が倒した八体のオークたちが転がっていた。


その中には、最初に夜の影(ナイト・シェイド)が倒した一体と、指揮官と思しき者の姿もある。


唯一まだ生きているのは、一人の重傷を負ったオークのみだった。


森の左側から、エロウェンとカルタンがその様子を見守っていた。状況が収束したのを確認すると、二人は森から姿を現し、カルタンは心配そうにロリアンのもとへ駆け寄った。

一方でエロウェンは手をかざし、根と棘の蔓を地中に戻しながら、巻き取ったオークの死体を共に埋めていく。


「ロリアン!? 大丈夫かい、坊や!?」


「……体中が痛いけど、骨は……折れてないと思います……」


そのとき、森の右側から夜の影(ナイト・シェイド)が現れた。胴の脇腹から血を流している。


(カルタン)「夜の影(ナイト・シェイド)!? き、君も森にいたの!? 何があったのさ!?」


(ロリアン)「夜の影(ナイト・シェイド)さん……怪我を……」


「あぁ、矢での奇襲を狙ってた狩人のオーク共が森に潜んでた。カエウの光に乗じて気取られずに森へ踏み込んだが……6体相手は、予想以上に手間取ったな」


(カルタン)「ろ、6体も!?」


その時、エロウェンがゆっくりと近づいてきた。


「……奇妙なことだ。この森の反対側にも、ちょうど六体の狩人がいた。我も命を落としかけた……倒すまでにな」


その言葉を聞いたカエウが近寄ってきて、エロウェンの服のあちこちに空いた穴に気づく。胸元や心臓のあたりには、自分と似たような傷跡があった。


「エロウェンさんも……? ねっ、夜の影(ナイト・シェイド)さん、見たでしょ?エロウェンさんみたいなすごい人でも、あの狩人たちにはやられそうになったんですよ……」


そして彼は、リサンドラが最後の生き残りのオークの前に立っているのを見つけ、そちらへ向かった。夜の影(ナイト・シェイド)とエロウェンも後に続く。


(リサンドラ)「……よく戦ったな、オーク。貴様は他の連中や指揮官とは違って、勇敢で、腕も立つ戦士だった。ポレメイアの慈悲を示してやろう。ブラック・ハンドを捨てるというのならな」


「な、なにっ!?」


(夜の影)「やめろリサンドラ、それは最悪の判断だ。奴を生かせば、我々の構成、カエウの正体、エロウェンの存在まで、すべて奴らの耳に入る」


「アタシは哀れんでるわけじゃない。名誉の話をしてるの。アタシはカリストリアの戦女として戦ってるのよ。

こいつはここで最も手強い敵だった。アタシの攻撃をいくつも耐えやがったし、生き残ってるってだけでも価値がある。指揮官なんて、一撃で沈んだってのに」


(夜の影)「その『名誉』とやらのせいで、命を危険にさらすことになるかもしれないんだぞ!」


そこにカエウがロリアンを背負いながらカルタンと共に合流する。


(カエウ)「僕は、どちらかといえばリサンドラさんに賛成です。もしかしたら彼にも……違う道を歩むチャンスがあるかもしれませんし」


(夜の影)「……聞け!ブラック・ハンドは狂信的な闇の教団だ。奴らは脅されて加わったわけじゃないし、洗脳されてもいない。全員が、自らの意思で血と死と闇の世界を作ろうとしてる。あの邪悪な神のためにな」


(夜の影)「……奴らは残酷で非道な儀式や殺戮、犠牲を、太陽神殿がおぬしのように善なる儀式を捧げるのと同じぐらい、信仰と忠誠心を持って実行している。

己の命すら惜しまず、すべてをその信仰のために捧げる覚悟がある」


「だから言ってるだろ、アタシは哀れんでるわけじゃねぇし、改心を期待してるわけでもねぇ。アタシは狂戦士として、いつかまたこいつと戦ってぇのさ。

違う状況でな。生き延びて強くなったら、アタシと対等にぶつかれる戦士になるかもしれねぇだろ」


リサンドラは大剣をオークの目の前の地面に突き立てる。


「さぁ、どうする?今ここで教団に忠誠を誓って死ぬか、それとも捨てて強くなって、いつかアタシをぶっ倒しに来るか?名誉ある決闘を望むんなら、アタシは受けて立つぜ」


オークはしばし黙り込む。そして数秒の沈黙の後、ゆっくりと口を開く。


「……もし、俺が受け入れたとして……どうして俺が生きるために嘘をついてるだけじゃないと分かる?」


「簡単なことだ。アタシには『ソフリス――カリストリア』の守護たる知恵の女神の加護がある。知りたいことは、何だって知ることができるんだ。

嘘をつけば、アタシには分かる。そしたらその場でぶっ殺すだけの話さ」


その言葉に、仲間たちは驚いた。誰もその力の存在を知らなかったのだ。


オークはゆっくりと立ち上がる。剣を杖のようにして、苦しそうに身体を支える。


「……分かった。戦士として……命は、敗れた相手の意志に委ねるもの。生かされるなら、それを受け入れる。

俺は誓う。オークの戦神クリッグスの名にかけて――ブラック・ハンドを捨て、再びお前を倒すために鍛え直し、いつか名誉ある死闘を挑みに戻る。リサンドラ、オーク殺しの名に懸けてな!」


「……いいぜ! 楽しみにしてるからな。その時が来たら、ポレメイアとクリッグスがアタシらの闘いを見届けてくれるだろう……で、あんたの名前は?」


「……ゴルガク」


「ゴルガク、北西のほうに『グラッシュ=トア』って集落がある。エルドールの領域外で、かつて悪しき軍や教団の兵だった連中……つまり、負けて命を拾ったオークたちが身を寄せてる場所だ」


「オークってだけで『生まれながらの悪』みてぇに見られるこの世界じゃ、そこにさらに闇の側についた過去があれば、どこの国にも、オークの部族にすら居場所がねぇ。

だからこそ『グラッシュ=トア』は、お前みてぇな流れ者の居場所なんだよ」


そう言ってリサンドラは手を差し出す。ゴルガクはその手を握り、ふらつきながらも立ち上がり、エロウェンが戦っていた方向――森の奥へと歩いて行き、やがて姿を消した。


その様子を見届けた夜の影(ナイト・シェイド)は、どこか苛立ったように黙り込んでいた。カルタンがリサンドラのもとに近づき、興味津々に尋ねる。


「ねぇ、本当に何でも分かるっていう女神の加護って持ってるの?それともハッタリ?」


「両方だな」


「えっ?どういうこと?」


「アタシには確かに、ソフリスの加護がある。けど、それを使うには『発動』が必要でな。しかも、発動すっとアタシにとっちゃちと厄介な『代償』がある。

今みてぇな状況で気軽に使えるもんじゃねぇのさ。だからはったりかましたってわけ」


(夜の影)「つまり……奴が我々を裏切らないという保証は、どこにも無いということか。こんな寄せ集めの少人数で任務にあたってるのに、余計なリスクを抱える余裕があると思っているのか?」


リサンドラは大剣を持ち上げ、背中に収める。


「心配してんのは分かるけどよ、だったら安全圏に入った時にでも、加護を使って調べてやるよ。……ま、それでもうちら、もうとっくに『丸見え』だと思うけどな?」


夜の影(ナイト・シェイド)は黙ったまま、それに何も返さなかった。カルタンとカエウは顔を見合わせ、きょとんとする。


(カルタン)「へ?ど、どういうこと? まだ危ないの?」


カエウの背中に乗ったままのロリアンが口を開く。


(ロリアン)「あの、カルタンさん……やっぱり、教団は僕たちのことを詳しく知っていたように思います。この待ち伏せ、かなり綿密に計画されてたはずです。

二手の狩人が、正確な位置で待機していて、さらに別方向から二つの部隊が挟み撃ちに来るなんて……」


(ロリアン)「彼らは、どうして僕たちがこの街道を通ることを知っていたんでしょう?どうして、今このタイミングでここに現れたんでしょう?

つまり……教団は、僕たちがジェナヴラへ向かってることを、すでに知っていたってことになります。

ってことは……僕たちが何らかの方法で追跡されてるってことか、それとも……」


(夜の影)「……この中に、情報を流してる者がいる」


その言葉に、場が凍りつく。


カルタンは明らかに動揺しており、カエウは困惑したような顔で口をつぐむ。リサンドラとエロウェンは表情を変えず、静かに事態を見守っていた。


(夜の影)「この正確な場所に、これほどの戦力で待ち伏せするためには、詳細なルート情報が必要になる。俺はレイヴンテイルから細心の注意を払って行動していた……にもかかわらず、こうなった。

つまり、間違いなく、この中の誰かが教団に情報を流してる」


(エロウェン)「……我ではないと断言できる。つい先ほどまで死にかけていた身だ。いまだ癒えきれてもいない。包囲の初動で、味方のふりをした者が殺されかけるとは考えにくい」


(カエウ)「ぼ、僕もです。夜の影(ナイト・シェイド)さんとリサンドラさんが証人ですし……そもそも、夜の影(ナイト・シェイド)さんの支援がなかったら、あのとき僕、死んでました」


(リサンドラ)「アタシはエルドールであの教団の部隊を追ってたのさ。そもそもアンタらと合流することになったのも、それが理由だったんだよ。

もしアタシがスパイなら、とっくにカエウと夜の影(ナイト・シェイド)の二人っきりの時に片づけてるっての」


(ロリアン)「……僕だって、皆さんが家に訪ねてこなければ、そもそもここにいませんでした。それに、どこに向かってるかを知ったのは、旅の途中からですし、その間もずっと誰かの目がありました」


場が静まり返る。


カルタンは汗をかきながら、慌てて声を上げる。


「ま、ま、待って待って!まさか、ぼくがスパイだなんて思ってないよね!?ねぇ!?違うって信じてるよね!?」


しかしロリアンが、カルタンの言葉をさえぎる。


「……でも、それだけじゃないんです。僕が気になるのは、教団がこの作戦のために、わざわざこんな大軍を動かしてきたことです。

たとえ夜の影(ナイト・シェイド)さんが邪魔だとしても、ここまでやるのは過剰すぎます」


(ロリアン)「教団って、ヘスペリア全土に何千人も信者がいるって聞いてます。それなのに、こんな精鋭部隊を、たった三人を倒すために送り込むのは、どう考えてもおかしいです。

しかも……彼らは、僕やカルタンさん、エロウェンさんのことをまだ知らなかったはずです。なのに、完璧な包囲を仕掛けてきた」


(ロリアン)「さらに言えば、カエウくんの正体も知らなかった。となると……」


(カエウ)「あ、でもさ!リサンドラさんって『オーク殺し』で有名なんでしょ?もし僕が教団だったら、彼女のせいで大部隊を送るって決めるかも……じゃない?」


(ロリアン)「リサンドラさんは、オークを単独で討ち取ってきたわけじゃありません。彼女の名声はこの二年、人間の軍に所属して、前線で戦った功績によるものです。

一人で何百体も倒してきたってわけじゃありません」


(エロウェン)「……それで、少年よ、何を示唆しようとしている?」


(ロリアン)「……つまり、その……僕が思うに、きっとこの戦力を投入するに足る、別の重大な理由があるんです。教団が夜の影(ナイト・シェイド)さんを……どうしても消したいほどの理由が」


(リサンドラ)「ははっ!で、告発者が告発される側に回ったってわけかい?ガキの言ってることは筋が通ってるよ、夜の影(ナイト・シェイド)

アンタ、まだこの任務について何か隠してることがあるんじゃないのかい?今までの話じゃ、教団がここまで本気になる理由が見当たらないよ」


(夜の影)「……言えるのは、『理由はある』ってことだけだ。それに、それを言えない理由もな。

もしこの中に内通者がいるとすれば、そいつに情報が渡るだけで、任務は終わりだ。だからこそ、俺は真実を語らない。任務を守るためだ」


(カエウ)「でも……それじゃあ、僕たちはどうすればいいんですか?同じ目的で集まった仲間なのに、命を懸けてるのに、何のためかもわからないままで?

じゃあ聞きますけど、僕たちを信じてないくせに、どうして僕たちが君を信じられるって思うんですか?……そんなのじゃ、このチームはバラバラになります!」


リサンドラがカエウに近づき、その肩に手を置く。そして夜の影(ナイト・シェイド)をまっすぐに睨みつける。


「よく言ったねぇ、神の子。だったら、アタシがいい方法を教えてやろう」


彼女は背中から大剣を抜き、夜の影(ナイト・シェイド)の方へと突きつける。


「さぁどうする、ローグさんよ。アタシらと一緒に世界を救いたいって気持ちがあるなら、その秘密を今ここで話すんだ。

でなきゃ……アタシがソフリスの加護を使って、自分でその秘密を突き止めるまでさ。

どっちにせよ、アタシは知ることになる。あとは……アンタの選択次第ってことさ」

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