第7章:街道の戦い ― 第三部
「な、なにぃぃぃ!?た、戦うって!?ロリアンくん、相手はオークだよ!?しかも部隊丸ごとだよ!?一体なにをするつもりなの!?さっきは有利って言ってたじゃん!それなのに、なんで急に――!?」
「まさにその『有利』を保つためです。僕たちの人数が少ない状況で有利を失えば、それは敗北に直結します」
「で、でも……それ、ちゃんと考えてる!?めちゃくちゃ危険じゃない!?」
「危険ですし、無茶もしてます。ですが、それでも計算された必要なリスクなんです。
信じてください、カルタンさん。僕はこの任務に死ぬために来たんじゃありませんし、無謀な行動をとるために来たわけでもありません」
「でも……夜の影さんが言ってたよ。ぼくたち二人と文書がなきゃ、この任務は終わりだって……だからぼくたちが生き残ることが大事なんじゃ……」
「仲間が全滅して、僕たちだけが生き残っても、任務は失敗です。一緒に旅を続けられなければ、同じことです」
ロリアンは穏やかな微笑みを浮かべ、カルタンに向き直った。
「すぐ戻りますよ、カルタンさん。僕は死にません。みんなで生き残るんです」
ロリアンは静かに森を抜け、街道に戻る。そして、視力を取り戻しつつある四人のオークにそっと近づく。
『今が唯一のチャンス。オークたちはまだ視界が不完全だ。この一瞬を逃せば、僕には何もできなくなる……』
ロリアンは、仲間の攻撃で傷を負ったオークに狙いを定めた。
『あのオーク……剣で切られた傷がある。誰の攻撃かわからないけど、最初からあの傷があったなら、そこを狙えば僕にも勝機があるかもしれない』
『しかも急所を突けば、僕のような力のない攻撃でも致命傷になるはず。ヘスペリアの様々な種族の生理構造を勉強したのは、このためだったんだから』
ロリアンは全速力で駆け寄り、コリシュマルドを引き抜いて構える。遠くから見ていたカルタンは、その光景をスローモーションのように見つめていた。
『お願い……当たって……!死なないで……!』
ロリアンの剣が、オークの背後から突き刺さる。腎臓にはわずかに届かなかったが、過去の傷跡のすぐそばを深く貫いた。
「ぐあああああっ!!くそっ!!」
その瞬間、4人のオークたちは視力を完全に取り戻し、ロリアンが目の前で剣を突き立てているのを見た。
「このガキぃ!俺を刺しやがっただと!?こんな爪楊枝みてぇな剣で!?ぶっ殺してやる!!」
***
一方、森の中――5人の狩人オークたちは、夜の影を嗅覚と狩猟本能で追い詰めようとしていた。
5体の「夜の影」が現れたにも関わらず、彼らは迷うことなく一体だけを狙って攻撃してきた。
『……なるほど、こいつら……予想以上に厄介だ。影分身を使っても、幻に引っかからなかった。狩人としての本能で、本体を見抜いたってわけか』
夜の影はバク宙して後退し、四体の分身の後ろに回り込む。そして腰のポーチから新たな爆弾を取り出し、地面に投げつけた。森は一瞬にして、濃くて臭い煙で覆われる。
『もう遊んでる場合じゃないな……ここらで片を付ける!』
彼は煙の中を無音で駆け抜け、忍のような動きで一人のオークの喉をその小太刀で突き刺す。すかさず振り向き、別のオークの額の中心に刃を突き立てる。二人の狩人は、声も出せずに倒れた。
***
街道では、リサンドラが大剣を高く振り上げ、7人のオークめがけて突進する。彼女はそのまま敵陣の中心に飛び込み、猛スピードで広範囲を薙ぎ払う一撃を放つ。
一体のオークは攻撃範囲から素早く脱出して回避に成功する。
すでに負傷していた3体のオークはこの一撃に耐えきれず、その場で絶命。他の2体は吹き飛ばされ、大きな傷を負って地面に倒れ込む。
最後の一体は防御しようと試みるも、攻撃を完全には防ぎきれず、衝撃を受けながらも致命傷には至らなかった。
最初に回避したオークがリサンドラに向かって突撃し、攻撃を仕掛けるが、彼女は紙一重でその一撃をかわす。
残る3体のオークも負傷しながら攻撃を続けようとするが、その傷のせいで動きは鈍く、精度も落ちており、リサンドラは難なく防御を続ける。
***
一方、ロリアンはゆっくりと後退しながら、先ほど刺したオークの反撃に備える。
「このクソガキがぁ!ぶっ殺してやる!!」
怒り狂ったオークが棍棒を振り上げ、ロリアンに襲いかかる。その速さにロリアンは反応できず、守護の幕は一瞬で粉砕され、棍棒が彼の腹部に直撃する。
「ぐっ……!!」
ロリアンは1mほど吹き飛ばされ、地面に転がって倒れる。腹を押さえながら、息ができずにうずくまる。
「ロリアーーーーン!!」
カルタンが絶叫する。
しかし、オークがとどめを刺そうと踏み出したその瞬間――地面から棘のある根が次々と飛び出す。
《棘の抱擁!》
カルタンの背後からエロウェンが現れ、再び強力な自然魔法を発動。彼が以前、狩人たちを倒すために使った技だ。
無数の棘の根が2体のオークの体を貫き、拘束する。
中には、カエウの太陽の光線で既に負傷していたオークも含まれており、彼は完全に串刺しにされて即死する。もう一体のオークも、内臓を貫かれて地面に倒れ、のたうち回る。
もう一体のオークは異変に気づき、すんでのところで大きく後退して回避に成功。ロリアンを攻撃したオークも、素早くその場を離れ、根の包囲から逃れた。
「エロウェン!!助かったぁ〜!!どこに行ってたの!?」
「狩人どもと戦っておった。……危うく命を落とすところであった」
その場を見ていたカエウが、素早く両手を構え、後ろに飛んだオークに狙いを定める。
《太陽の光線!》
しかし、オークはその攻撃を読みきっていた。
「ガキが!今のは見たぞ!そんな手には乗らん!」
オークは叫びながら突進し、カエウに向かって襲いかかる。だが、今回はカエウも落ち着いていた。
『僕はもう【神の子供】じゃない。今は――勇者への道を歩む者なんだ!』
カエウは横に飛んで回避し、オークの足を蹴り上げる。その衝撃でバランスを崩したオークは、顔面から地面に倒れ込む。
***
一方、森の中では、残された二人の狩人オークが煙の中から逃げ出し、森の異なる方向へ分かれて隠れる。
『くそっ、あのローグめ……だが、必ず戻ってくるはずだ。煙から出て攻撃を仕掛けてくるだろう。それが奴の最後の瞬間だ……』
彼らはすかさず弓を構え、わずかな動きも見逃さぬよう狙いを定める。
その時――煙の中から「夜の影」が二人現れ、まるで狙ったかのようにそれぞれの方向へ向かってくる。オークたちは即座に矢を放つ。
二人の「夜の影」は心臓を射抜かれ、そしてそのままかき消える――幻影だった。
だがその時、木の上――オークの一人が隠れていたその真上から、本物の夜の影が降ってくる。小太刀を頭に突き刺し、即座に絶命させる。
そしてもう一人のオークに向かって、後ろのポーチから手裏剣を数枚取り出し、投げつけた。しかし、仲間の死に気づいていたオークはすばやく木の陰に隠れ、攻撃を回避する。
***
街道では、リサンドラが再び大剣を振り上げ、残った4体のオークの中へと突撃する。今度は敵の数も少なく、3体はすでに負傷しているため、彼女の薙ぎ払い攻撃はより集中し、威力も高まっていた。
3体の負傷したオークは、その攻撃に耐えきれず、次々と斬り伏せられて絶命。最初の攻撃を避けた一体も、今回は回避しきれず、腹部の鎧が粉砕されて重傷を負い、地面に倒れる。
***
ロリアンの近くでは、「棘の抱擁」で拘束されたオークがもがきながらも大量出血し、そのまま息絶える。
その瞬間、エロウェンが再び根の領域を操作し、ロリアンのそばにいるもう一体のオークに向けて根を伸ばす。
オークはまさかの奇襲に対応できず、棘に貫かれて即死する――仲間に斬られ、ロリアンに傷つけられ、さらにエロウェンの棘を受けたことで、ついに力尽きた。
***
カエウの目の前では、オークが怒り狂って立ち上がる。
「このクソ神童がぁ!ぶっ壊してやる!!」
カエウは拳を構え、ボクシングのような体勢を取る。そして、拳に魔力を集中させていく。
《太陽の強化!》
『この魔法は僕の太陽魔力を拳に集中させて攻撃力を強化するために作った。僕はなぜか生まれつき強いけど、これで常識外れのパワーになる。そしてこの魔法は、拳に光輝属性の追加ダメージまで与える!』
オークが斧を構え、一気に距離を詰めてカエウの腹に一撃を食らわせる。カエウはかわそうとするが、間に合わず、直撃を受ける。しかし――倒れない。
「なっ、何だと!?あんな一撃受けて立ってるだと!?お前、鋼鉄でできてるのか!?」
「さあね」
カエウは拳で反撃しようとするが、オークは素早く後退してその拳をかわす。
***
森の中では、煙の中からさらに二人の「夜の影」が出現し、オリジナルと合流して3人編成の攻撃態勢を取る。
狩人オークは弓を構えて次の一矢に備えるが、その瞬間、3人の「夜の影」が一斉に高速で突撃してくる。
オークは冷静に狙いを定め、真正面の「夜の影」に矢を放つ。矢は額に命中し、確実に仕留めた――かと思いきや、それはまた幻影。すぐに霧散する。
新たな矢を放とうとするが間に合わない。左右から残る「夜の影」が迫り来る。どちらが本物かも分からず、反応もできない。
その一瞬の迷いを突いて、背後から夜の影の小太刀がオークの心臓を貫く。オークはその場で崩れ落ち、動かなくなる。
『やっと終わったか……思ったより時間がかかったな。奴らは狩人だけあって、勘が鋭かった』
夜の影はわき腹を押さえる。そこからは、斧で斬られた傷がじわりと滲み出ていた。
***
一方、街道ではカエウと斧のオークが一対一で激しく交戦していた。オークが再び襲いかかり、今度は首を狙って振り下ろすが、カエウは素早く避ける。
『なるほど、これが【経験】ってやつか。……いいね!まだ二分も経ってないのに、もう攻撃のパターンが分かってきたぞ』
カエウは拳を握りしめ、オークの腹に渾身の一撃を叩き込む。その瞬間、拳から光が迸り、腹部が眩しく輝く。
オークは腹を押さえ、膝をつきそうになるが、踏みとどまる。もう一度攻撃しようとするが、その動きはすでにカエウに読まれていた。すばやくかわし、距離を詰める。
そして、左右の拳を同時に引き絞り、二連打を叩き込む――
《太陽の拳!!》
拳から放たれた光は極めて強烈で、まばゆい輝きが戦場を照らす。オークの胸当てが砕け、彼の体は三メートルほど吹き飛び、そのまま地面に叩きつけられて、息絶えた。




