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Dawn of Champions(ドーン・オブ・チャンピオンズ)  作者: LÉO LIMA


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18/29

間章:カエウ

夏至の未明――


暦776年、カレンディス(七月)24日、P.A.(Post-Aurelio、アウレリオ後)において。


スマルデン――

エルドール王国北西部の国境沿いにある、小さな農村。ヘスペリア大陸の穏やかな心臓部に位置している。


村人たちはすでに眠りにつき、明け方からの畑仕事や牧場の準備に備えていた。


その晩、村では夏至の祭りが行われ、焚き火を囲んでの踊りや、太陽神「ソラリウム」への収穫の供物が、彼の小さな礼拝堂に捧げられていた。


祭りのあと、若い農夫とその妻が、草原の上で夜空を眺めていた。


「ヘリート、今夜の空……すっごく澄んでるね。星がいっぱい見えるよ。綺麗じゃない?」


「うん、マエラ。星の向こうで暮らすって……どんな感じだろうなぁ」


「神様たち、みたいに?」


「ああ、まぁ……そういう想像さ。『どうなってるんだろう?』ってな」


マエラはヘリートの手を取り、指を絡めた。


「ねえ……今度こそ、ソラリウム様が赤ちゃんを授けてくれるかな……?何度も試してるのに……まだできなくて……」


「そんな顔すんな、マエラ。悪いのはお前じゃない。きっと、神様が何かしら考えてくれてるんだよ。

ほら、こうしようぜ。流れ星が見えるまでここにいよう。そしたら二人で一緒に、赤ちゃんをお願いしよう」


「えっ、それでお願いの力が二倍になる?」


「どうかな。でもさ、今日の祭りでも願ったろ?なら、三倍になるかもしれねぇよ」


――――――


二人は草原に寝そべりながら、穏やかな夜を過ごした。そうして一時間ほど経ったころ――


「見て!ヘリート、あれっ!すごく綺麗!」


「うおっ……あんなに強く光ってる星、初めて見たぞ……」


だが、その星はますます輝きを強めていった。


「ヘリート……これ、変だよ……」


やがて、星の光は村中を照らすほどのまばゆさとなった。その光に驚いて起きる農民たち。空を見上げると、星が――いや、「何か」が――落ちてくる。


それは空を裂き、光の尾を引いて地上へと降下し、ついに遠くの大地に衝突した。すべては、一瞬で静けさに包まれた。


「うわっ……!見たか、マエラ!?マエラ!」


ヘリトは辺りを見回すが、妻の姿はない。すぐに、家の中からマエラがランプを手にして飛び出してくる。


「ヘリト!一緒に見に行きましょう!」


「……ま、待てよ。ほんとに大丈夫なのか?」


「もちろんよ!あんな現象、きっと神の御業に違いないわ。自分の目で確かめなきゃ!」


――――――


ヘリートは急いで馬を用意し、マエラを背に乗せて光の落ちた方角へと向かった。


広がる高原を、およそ五キロ駆け抜けた先で――彼らは、巨大なクレーターを見つけた。


それは直径三メートルほどの、見事なまでに真円の穴。その中心には、小さく輝く球体があった。


「な……なんだ、ありゃ……」


「星って……こんな姿してるのかしら……?」


マエラは馬を降り、ランタンを手に持ったまま、ゆっくりとクレーターへと足を踏み入れた。穴の深さは、およそ一メートル半。


「マエラ、危ねぇって!なにしてんだよ……!」


マエラはランタンをかざし、光の玉を照らした。中には、かすかに人影のようなものが見える。


マエラがそっとその光の玉に触れると、それはまるで光のタンポポのように、静かに消え去った。


そこに残っていたのは――真っ白な楕円形の奇妙な物体と、その中で眠る赤ん坊だった。


「赤ちゃん……?」


ヘリートもクレーターの中へ降り、マエラの隣に立つ。


「この赤ちゃん……あの空から落ちてきた光の中にいたのか?」


「うん……やっぱり、あの光は星だったんだと思う。空から落ちた星の中から、赤ちゃんが現れたのよ」


ヘリートがランタンを掲げ、マエラが赤ん坊をそっと抱き上げる。その瞬間、赤ん坊が目を開ける。


その肌は淡く光る真珠色、目は輝く黄金。そして微笑むと、全身がやさしい光を放った。


「ヘリート……これってもしかして……ソラリウム様が私たちに授けてくれた赤ちゃん……?」


「おいおい……こいつは……人間じゃねぇぞ……きっと、神の子だ……でもさ、ソラリウム様がこんな神聖な子を、俺たちスマルデンの農民なんかに……くれると思うか?」


赤ん坊はヘリートの言葉にくすくすと笑い、手を伸ばすように動かした。


「ほら……泣きもしなかったわ。この子、私たちを見て嬉しそうにしてる。それに……笑うと光るの。

ヘリート、私の胸が教えてくれるの。ソラリウム様は、ちゃんと私たちの祈りを聞いてくださったのよ。

――きっとこれが、あの方が用意してくださった運命なんだわ」


「……わからない。俺たちなんかに、そんな恩寵を受ける資格があるのかどうか……」


「この子の名前……『カエウ』ってつけようかな。ねえ、ヘリート、苗字を付けてよ」


「えっ……?俺たちの苗字を使わないのか?」


「やめておこうよ。私たちはすでに、神々の恵みとして聖なる赤ん坊を育てるという名誉を授かっているの。これ以上神々の御心を試したり、不敬なことをすれば罰が当たるわ。そう思わない?」


「そ、そうだな……じゃあ、苗字は……『ドーンスター』なんてどうだ?だってこいつ、文字通り『星』から来たんだし」


赤ん坊は大きな声で笑い出し、夫婦を見つめて手をばたつかせた。


「ふふっ、気に入ったみたいよ、ヘリート」


*****


スマルデン、紀元782年――


長く逆立つ金髪の少年が、白と金の刺繍が施された神聖な法衣に袖を通されている。


「母さん、こんな格好しなくてもいいじゃん……僕、ただの子どもだよ?」


「ダメよ、カエウ。あんたはただの子じゃないの。神父様も言ってたでしょ?あんたは太陽神ソラリウムの御子。この世に光と清めをもたらすために降り立った、神の存在なのよ」


「違うよ。僕は……お父さんとお母さんの子どもだ」


マエラは優しく笑い、カエウの額にキスをする。


そして二人は家を出て、村の小さなソラリウム礼拝堂へと向かった。到着すると、白を基調に金の装飾を施した法衣を纏う神官が、司祭と並んで彼を待っていた。


「おお……若きカエウよ。こちらが、枢機卿『ドム・アウーレクス様』です」


神官――ドム・アウーレクスは、鋭い眼差しでカエウを観察していた。


村人たちは手を組み祈りを捧げるようにその場に立ち尽くし、随行する太陽教団の神官たちもまた、少年の姿に目を潤ませていた。


ヘリートは畏れ多くもひざまずき、ドム・アウーレクスに尋ねた。


「枢機卿様……どのようにして、この子が神の子であることをお確かめになるのでしょうか……?」


「……彼を《ヴェリタス・ソラリスの儀式》にかけるつもりです」


――――――


村人たちは、この出来事に興奮し、衝撃を受けていた。


「おお……なんということだ……!太陽神ソラリウムの御子が、こんな貧しい村に降臨なさるとは……!それに加えて、太陽教会の最高位の一人、ドム・アウーレクス様まで遠路はるばるお越しになるとは……!」


「でもさ……その儀式、ほんとにうまくいくのか?」


「何言ってんの? カエウは空から星に乗って落ちてきたんだよ? しかも身体から光が出てるし、太陽の力を操れるんだ。誰にも教わってないのに!」


「魔法使いだって、生まれつき魔力持ってるんじゃねぇの?」


「……けどよ、星から落ちてきた魔法使いなんて聞いたことあるか?あの夜、村のみんなが見たんだぞ。我らは、カエウの到来とその聖なる力、そしてそれにまつわるすべての出来事の証人なのです」


スマルデンの村人たちは、質素な礼拝堂で行われる儀式の準備を、敬虔な面持ちで静かに見守っていた。

彼らは枢機卿ドム・アウーレクスや神官たちから一歩距離を取り、まるでその偉大な存在に近づくことを恐れるかのようだった。中には、そっと祈りを捧げる者もいた。


神官たちは、草原の真ん中に祭壇を設けた。


円形に並べられた数十枚の鏡が、ちょうど三メートルの直径の円を描き、全て中心にある祭壇へと光を反射するよう向けられていた。


ドム・アウーレクスはカエウの手を取り、祭壇の前まで導いた。


「ねぇ、おじいさん、これなぁに?」


「恐れることはない、小さき者よ。ただお主の力の源を見極めるための聖なる儀式だ。痛くも怖くもない。ちょっとだけ退屈かもしれんが、我慢してくれればすぐに終わる」


ドム・アウーレクスはカエウを座らせ、向きを整えた。


「ずっとこの方向を向いていなさい。何があっても、視線をそらしてはいけない」


「どうして?」


「そこは『太陽が昇る方角』、すなわち東だ」


カエウは円の中央に座り、足をぶらぶらさせていた。ドム・アウーレクスが結界の外へ出ると、四人の神官が円を囲むように四方に立ち、祈りを始めた。


「これより《ヴェリタス・ソラリスの儀式》を開始する。今より太陽が天頂に至るまで、我らは聖なる術をもって、幼きカエウの出自を確かめる。

見ることは禁止ではないが、直視はするな。術によって放たれる光は極めて強く、太陽そのもののように、視力を奪う恐れがある」


円の周囲には四つの大きな杯が置かれ、それぞれに油が注がれ、火がともされた。杯は四人の神官が立つ方角とはずれた位置に配されていた。神官たちは声を合わせて詠唱を始めた。


「おお、全能なる太陽神ソラリウムよ!我ら、謙虚なる(しもべ)たちは願い奉る――我らに悪と偽りを焼き尽くす力を授けたまえ」


神官たちの身体が、やがて眩い光を放ち始める。ドム・アウーレクスもまた、静かに祈りを捧げた。


儀式は長く続いた。


カエウは少し退屈そうに足を揺らしていたが、最後までおとなしく座っていた。夏の朝、真昼の太陽の下、長衣を着ているにもかかわらず、彼の額には一滴の汗も浮かばない。


物の影が徐々に消え、太陽が天頂に達したことを告げる。祭壇の上でカエウの影が完全に消えた瞬間、ドム・アウーレクスは高らかに詠唱を始めた。


「光よ、我が目から偽りを払いたまえ!真実のみが、ソラリウムの(しもべ)の前に立ちはだかることを許されん!あらゆる悪を焼き尽くし、神聖なる真理を示したまえ!」


《――第百詩篇:啓明の眼アイ・オブ・イルミネーション!!》


ドム・アウーレクスが呪文を唱えると、彼の身体から巨大な光球が放たれ、鏡の円の中心──カエウの頭上へと飛び出した。球が彼に触れた瞬間、目も眩む閃光が走り、数秒のあいだあたり一面が真白に包まれた。


やがて光が収まると、カエウの全身がまばゆい輝きを放っていた。その光は鏡の輪に反射し、線を描くようにして繋がり、やがてカエウを中心とした複雑な太陽の紋章を形作った。


ドム・アウーレクスはその光景を目の当たりにし、言葉を失う。


「おお……神よ……!」


再び光が爆ぜた。今度はカエウの身体そのものから溢れ出し、周囲の人々、さらには村全体を包み込んだ。誰もが内側から焼かれるような熱を感じたが、不思議と恐怖はなかった。


やがて光が消えると、全員が無傷のまま立っていた。


彼らがカエウを見ると、少年の髪と瞳は金色に輝き、その周囲には鏡の反射が集まり、無数の光が混ざりあって巨大な太陽の姿を描き出していた。


ドム・アウーレクスはその場に膝をつき、震える声で叫んだ。


「まさか……まことだったのか!彼は……彼は神そのものだ!この少年の中に神の火花が宿るのではない。彼こそが神なのだ!」


他の神官たちも次々とカエウの方へ跪く。ドム・アウーレクスは老いた身体を引きずるようにして進み、少年の目前で再び膝をついた。老齢の身にもかかわらず、一瞬のためらいもなかった。


「おお、カエウ・ドーンスターよ!汝こそ、太陽神ソラリウムの御子。神の御意思により、この地上に遣わされた救い主なり!汝は我らの導き手、我らの光なり!」


彼は立ち上がり、村人たちへ向かって高らかに宣言した。


「聞け、スマルデンの民よ!この御方こそ太陽の御子、カエウ・ドーンスターなり!その御姿こそ、新しき『時代の夜明け(The Age of Dawn)』──人類の新たなる夜明けである!」


「……あの、もう降りていい?」

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