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Dawn of Champions(ドーン・オブ・チャンピオンズ)  作者: LÉO LIMA


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プロローグ⑰:誰にも求められない冒険者

ロリアンは、試験に合格して以来、毎朝ギルドに足を運ぶようになっていた。

掲示板を確認しては、銅や青銅ランクの新しい依頼が出ていないか目を光らせ、参加希望の意思表示をしていた。


同時に、深紅の盾(クリムゾン・エジード)の戦士たちについて調査を進め、指導をお願いできそうな人物を探していた。アドバイスを求めることも忘れずにいた。


――だが、一週間が経っても返事は一つも返ってこなかった。


冒険者に合格してからちょうど一週間。


その頃になると、父アルヴェドロスもロリアンがいまだに依頼に出ていないことに気づき、再び皮肉を言うようになった。


「で、どうしたんだい、お姫様?あの紋章を手に入れて、結局出発すらしてねぇのか?在宅で冒険でもするつもりか?ハハハハ!」


ロリアンは言い返せず、唾を飲み込んだ。彼の日常は大して変わっていない。ただ、ギルドへの立ち寄りが日課に加わっただけだった。


その後はいつも通り図書館で働き、帰り道には「ロリアンのダンジョン」へ向かい、剣術や魔法の訓練、勉学に励んでいた。


***


――十日が過ぎても、冒険者になった実感が湧かないままだ。まるで合格が、何の意味も持たなかったかのように。


そんなある日、ロリアンの元にオマックから手紙が届く。


「やあロリアン。あまり手紙書けなくてごめんな。まだ書くの苦手だけど、ちょっとずつ上達してるべよ。

今日は知らせがあって書いたべ。トルガと一緒に初めての依頼に出発することになった。場所はバヴァリンの近くだってさ」


『……オマック。僕たちの中で最初に依頼に出たのは、彼だったんだ』


***


次の日、ルミが図書館に本と巻物を返しに来た。


「ロリアン、聞いてよ!私、受かったの!IPELに!」


「IPEL?」


「『ヴェリス魔術学院』の『光魔法発動現象研究所』よ!光魔法研究者として働けることになったの。これでようやく生活費が稼げるし、ギルドからテスト依頼も来る可能性あるって!」


「すごい……おめでとう、ルミさん!」


***


その翌日、今度はロッドから手紙が届いた。


「よぉロリアン!元気か?俺?まぁまぁ元気だわ。今月の小遣いで『サリオン砦』まで行くことにした。格闘の訓練施設があるんだってよ。

戦士か拳士、もしくは聖騎士になれたらいいなーって思ってる。魔法とか俺には無理だしな、あはは!」


『……ロッドさん、文字でも喋り方がそのままなんだよな』


「でさ、ベトリックのほうも、師匠が現役引退しちゃったから、新しいメンター探してもらったらしいんだ。紹介されたのは、『リゼン・ヴェルコラ』っていう……まぁ超絶美人らしいぞ。

その体のことを詳しく説明してやるよ――」


ロリアンは手紙を読むにつれ、顔が真っ赤になった。何度も中断し、周囲をキョロキョロ確認しては、結局最後まで読み進めてしまった。


「……ってわけで、この手紙はベトリックの分も兼ねてる。あいつ、もう依頼に出てるから、しばらく帰ってこないんだってさ。それじゃ、そっちも頑張れよ、ロリアン!」


『オマック、ルミ、ロッド、ベトリック……。みんな、たった十二日で次のステップに進んでる。なのに僕だけ……何か、しなきゃ……』


***


そして翌朝。いつものようにギルドへ向かっていたロリアンは、ギルドの大広間で一人の戦士の姿を目にした。


逆立った髪、金色の王冠、背に大剣――

まるでRPGから飛び出したかのような、典型的な『勇者』のような男。


ロリアンは――彼を知っていた。


『ま、まさか……あの人は……!ダイだ!【王冠の騎士】!銀ランクの有名な戦士……!こ、こんなチャンス、逃せない……!』


ロリアンは緊張しながらも、ダイに歩み寄って声をかけた。


「あ、あの……失礼します。ダイさんですよね?僕はロリアン・フェアチャイルドと申します」


「今はダメだ、坊主。いちいちサインなんてしてられねぇんだよ」


「い、いえっ!僕は……ファンってだけじゃなくて……ギルドの銅ランク冒険者で、戦士のメンターを探していて――」


「お前が……戦士?そのヒョロガリな体で?カルブレヒトは一体何を考えて、そんな貧弱なガキを合格させたんだ?」


「おい、ダイ。知らなかったのか?このガキ、毎日ギルドに来て掲示板見て、青銅ランクの依頼に応募しようとしてるらしいぜ」


「マジかよ?ハハハハハ!」


ロリアンは縮こまり、顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。


「いいか、坊主。まともな冒険者なら、そんなヒョロヒョロな奴を雇ったりしねぇよ。せめて魔術師なら、まだワンチャンあるかもな。けど戦士?オレの婆さんより弱そうな戦士に何の意味がある?」


「そうそう、ハハハハ!それにもし、あわれみ深い奴がいてお前を弟子にしたとしてもな、任務中にガキを死なせたら責任問題だろ?そんなリスク、誰が負いたいんだよ」


「まあつまりだ、坊主――

深紅の盾(クリムゾン・エジード)の連中で、お前みたいなひょろいガキを任務に連れて行きたがる奴は一人もいねぇってことだ。

お前が死んじまったら、雇った連中が責任問題に巻き込まれてえらい面倒を見ることになる。逆に生きてても、任務中に邪魔になって結局足手まといだ。誰がそんなリスクを負うってんだよ?」


「他の仕事探したほうがいいんじゃねぇの?仕立て屋とかさ?ハハハハ!」


ロリアンは、顔を伏せたままギルドを飛び出した。


『……やだ、やだ、やだ!こんなの……嘘だ……!』


***


――その日の午後、図書館にルミが現れた。


「ロリアンくん。今日、フェクサーから手紙届いてたよ。信じられる?あのバカ、私たち二人に一通しか書いてないのよ。『同じ街に住んでるからまとめた』んだって。どんだけズボラなのよ……ったく。

はい。私は明日、ヴェルカレスへ出発する予定。しばらく顔出せないけど、元気でね」


「うん……気をつけて、ルミさん」


ロリアンは手紙を開く。


「やあ、ダンロレン在住の諸君!同じ街に住んでるってことで、まとめて書くぞ。

オレは今、『アウリオン』の広場で腕相撲やってたところなんだが、始まる前に酔っ払って寝てた兵士に小便かけちまってさ――」


『な、なに言ってんのこの人!?どんな状況だよ!?』


「で、その腕相撲の相手が、首都支部所属の我らがギルドの狂戦士、ドロガー・ヴァルコスってやつでな。

そのあと二人で飲みまくって、15人くらい巻き込んで酒場で大乱闘して、また同じ兵士に小便ひっかけたあとで……弟子にならねぇかって誘われたんだわ。

今は北の方へ行って、夜明けまで誰かぶん殴る予定!」


『……フェクサーさんまで、もう進んでる……。それなのに僕は……』


――――――


その日の晩、「ロリアンのダンジョン」での訓練を終えて帰宅したロリアンを、父アルヴェドロスが夕食の席でまたも皮肉る。


「おう、チビ。今日も『想像上の冒険』は楽しかったか?在宅冒険家ライフってやつか?ハハハハ!」


ロリアンは無言で、テーブルの下で拳を握った。


「酒場でな、ギルドの職員が話してるの聞いたぞ。『あのガキは依頼なんて一生来ねぇよ』ってさ。誰もお前の実力を信じちゃいねぇし、最初の戦闘で死ぬと思われてんだと。

結局、冒険者になったところで、誰もお前なんか必要としてねぇって話さ。あの紋章も、ただの飾りだな!ハハハハハ!」


ロリアンは、無言のまま部屋へ駆け込み、ドアを閉めて鍵をかけた。ベッドに身を投げ出し、天井を見つめながら涙を流す。


『なんで……?なんでこんなことになってるんだ……?五年間、必死に頑張ってきたのに……。全力で試験に挑んで、合格したのに……。僕とオマックは、グループの中でも成績トップだったのに……。

それでも……誰も、僕のことを信じてくれないのか?』


ロリアンは起き上がり、怒りと絶望と混乱に任せて部屋の物を次々と投げ散らした。


『全部、なんの意味があったの?冒険者になったって、冒険に出られないなら……意味なんてないじゃないか……!誰にも求められない【冒険者】って、なんだよ……?』


彼は、机の上に置いてあった銅の紋章を手に取り、涙を浮かべながらじっと見つめた。


『……冒険者になる資格なんて、最初からなかったなら……試験に落ちてた方がマシだった……。合格して……冒険者になって……こんなに蔑まれて…………その方が……ずっと……ずっと……辛いよ……』


怒りと悲しみに駆られたロリアンは、銅の紋章を全力で窓の外へと投げつけた。夜の闇に包まれた草むらへ、それは静かに落ちていった。


その深夜、誰にも気づかれずに、一つの影がその紋章を拾い上げた――。


***


翌朝。ロリアンは完全に憔悴しきった様子で目を覚ました。朝食もほとんど喉を通らない。


図書館へ向かう途中、いつものようにギルドへ立ち寄ろうとするが、途中で足を止めて引き返した。


『……どうせ、行っても何もない。誰にも求められてない。僕なんか……誰にも、必要とされてないんだ……。

ヒョロガリで、女の子みたいな顔で、目も悪い。【頭はいい】って言われてるけど、本当はバカなんだ。バカだから、自分なんかが冒険者になれると思い込んでたんだ……』


図書館では、ただ無感情に仕事をこなすロリアンの姿があった。


館内では、周囲の人々が最近の話題をひそひそと話していた。


「そうそう、カエウ様はまだ行方不明らしいわよ」


「マジで?でも天人なんでしょ?きっと神界に行って対話でもしてるんじゃない?そんなに騒ぐこと?」


「いや、でもあのカエウ様が、何も言わずに消えるなんて変だよ。スマルデンの神官たちも『そんなことする人じゃない』って言ってるしさ」


勤務が終わると、ロリアンは「ロリアンのダンジョン」へ向かった。けれど、訓練を始めることもなく、小屋の床に横になって雲を見上げる。


『僕の努力なんて、全部……無意味だったんだ。もう……無理に続ける意味、ないじゃないか。僕は……失敗したんだ。もう、認めるしか……』


***


それから数日が経った。


冒険者試験から、すでに三週間――

何一つ、変わらなかった。


ギルドからの連絡は一切なし。送った十五通の指導願いの手紙も、すべて無反応。銅ランクで応募した依頼は、全滅。新しい銅ランク依頼の掲示もゼロ。


ロリアンは、買い揃えていた本を家に持ち帰り、本棚に片付けた。彼のコリシュマールドも布に包まれ、ベッドの下にしまい込まれた。


ギルドには、もう七日間行っていない。訓練も完全にやめ、「ロリアンのダンジョン」も放棄された。


九日前にギルドの紋章を捨てて以来、拾いに行こうとすらしなかった。


毎日、ロリアンは起きて、食事をして、図書館で働き、そして、何の感情もない目で帰路につく。


父は相変わらず、彼の容姿と成果を嘲笑し、母は依然として無関心。図書館の管理者は、昔と変わらず口うるさい。近所の子供たちは、今もロリアンをからかい続ける。


夜になると、ロリアンはベッドに横になり、星空を見つめながら、泣く。


そして――

マスター・カルブレヒトのあの言葉が、毎晩勝手に脳裏をよぎる。


【冒険を選ぶのは冒険者じゃない。冒険のほうが、冒険者を選ぶ】


「……ってことは……僕は……何の冒険にも、選ばれなかったってことか……」


そして――


ロリアン・フェアチャイルドが、深紅の盾(クリムゾン・エジード)ギルドへ足を運ぶことは、二度となかった。




プロローグ──終幕

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