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Dawn of Champions(ドーン・オブ・チャンピオンズ)  作者: LÉO LIMA


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16/29

プロローグ⑯:現実と別れ

翌朝、ロリアンは早く目を覚ました。


試験の疲れが残っているにもかかわらず、一睡もできなかった。

冒険者になれたという興奮と、夢を叶えた直後に両親から受けた冷たい反応――その思いが一晩中、頭の中を叩き続けていた。


朝食のテーブルには、沈黙だけが漂っていた。昨日のことには、一言も触れられない。


『ヘスペリアでも有数の三大ギルドの一つに、13歳で所属することができたのに……それでも、何の価値もないってことなの?僕は……いらない存在なの?』


ロリアンは静かに朝食を終えた。出かけようとしたそのとき、母親が声をかけた。


「ロリアン、今日も遅くなるなら、せめて連絡くらいしてちょうだい」


ロリアンは寂しげにうつむく。


「……今日は、ギルドに行って登録手続きを済ませたら、図書館に戻ります」


***


ギルドへ向かう道すがら、ロリアンは遠くにオマックの姿を見かけた。

普段の視力では誰かを遠目に判別するなんてできないのだが、オマックの大きな体と青みがかった肌のおかげで、それが誰かすぐにわかった。


「おお、ロリアン!おはようだべ!」


「おはよう、オマック。昨日の夜のパーティーは楽しかった?」


「いや〜、あのウイスキーってやつ、くっそ不味くてさ。それに、おいらはいつも夜明け前に起きる生活しとるから、早めに抜けて帰ったべよ」


「そうなんだ。でも、どこに泊まったの?」


「ロッドがな、小遣いくれて泊まれるとこ探してくれたんだべ。それに、ルミが酔いすぎて頭痛くなってたから、一緒に帰るって言って案内してくれたんだべ」


「……人とも、本当に優しい人たちだよね、オマック」


「そうだなぁ。田舎もんに優しくしてくれる街の人間なんて、そうそういないべよ。

しかも、おいらはハーフオークだしな。でもあいつら、気にせずに接してくれた。金まで出してくれてよ。まだ知り合って間もなかったのにな」


二人はギルドに到着する。ロリアンは案内され、ギルドマスターの部屋へ通された。部屋ではカルブレヒトが書類に目を通していた。


「失礼します」


「おお、小さきロリアンくんよ。そこに座りたまえ」


ロリアンは少し緊張した面持ちで椅子に腰掛ける。


「さて、若き冒険者よ。まずはギルドの仕事、特に銅ランクのことを説明しよう。銅ランクは、いわば見習いのようなものだ。依頼の数も少なく、報酬も安いため、他の手段で済ませることが多い」


「はい、調べておきました。通常、銅ランクの冒険者は、自分のクラスの先輩――いわばメンターと一緒に依頼に参加して、その評価を受けてから青銅ランクに昇格できるんですよね?」


「まさしく。分析が得意な少年だと、オースメルからも聞いておる。ならば、説明は簡単にして、実務的な話に移ろう。銅ランクの間は、図書館の助手としての仕事を続けることを勧める」


ロリアンは意外そうな表情を浮かべた。


「……どうしてですか?」


「ふむ、数字に強い君なら知っているだろう。冒険者という職の――辞める割合を」


「……61%です」


「その通りだ。原因はいくつもあるが……最大の理由は、『現実』だ」


「冒険者という職業の現実を目の当たりにすると、理想を抱いていた多くの若者が、その危険性と厳しさに気づいて、すぐに離れていく」


「……はい。難易度の高い依頼における新人の死亡率は、43%です」


「だが、『現実』というのは、それだけじゃない。実務的な意味でも、『現実』は重くのしかかる」


カルブレヒトは立ち上がり、部屋の中をゆっくりと歩き始めた。


「銅ランクの依頼は少なく、かつ安価だ。だから、手っ取り早くランクを上げる現実的な方法は、メンターを見つけて一緒に青銅ランクの依頼に同行すること。

そして青銅ランクに昇格するまでは、収入面ではとても苦しい」


「さらに、銅や青銅の依頼は需要も限られている。つまり、まともに稼げる冒険者になるまでには、相応の時間がかかるということだ」


「……でも、ランク昇格に一年もかからなかった新人の話とか、すぐに高報酬の依頼を受けられるようになった人もいますよね?」


「それは『天才』と呼ばれる例外だ。ギルドに所属する冒険者全体の中でも、そういう者は1%に満たない。

大多数の現実は、最初は無名のフリーランスとして地道に名を上げ、信頼を積み重ね、経験を積み……それでようやく一人前になる」


カルブレヒトはロリアンの肩に手を置いた。


「君が本気で冒険者になりたいなら、中長期的にどうやって昇格を目指すか、そして昇格までどうやって生活を維持するか――そういう『戦略』を今から考えておくべきだ。

幸運なことに、君はまだ若い。時間は味方についている。だからこそ、ここに合格したからといって、今の仕事をすぐに辞めないようにと、新人には必ず忠告しているんだ」


「……じゃあ、僕は今、何をすればいいんですか?」


カルブレヒトは一枚の書類をロリアンに渡した。


「ここに、自分が興味ある依頼の種類やカテゴリーを記入するんだ。君の適性に合った依頼がギルドや他の冒険者たちから出た場合、こちらから連絡を入れる」


「もし……僕みたいな……タイプを、誰も必要としてなかったら?」


「それでも、ギルドには定期的に顔を出すことだ。依頼は常に、玄関ホールの掲示板に張り出してある。

銅や青銅の依頼が出たら確認して、青銅の依頼については立候補できる。依頼を受けたグループが、その中から誰を選ぶか決める形だ」


ロリアンは紙を顔に近づけて、じっくりと読んでからチェックを入れ始めた。


「それから、ギルドの戦士たちに直接相談したり、手紙を出して指導をお願いするのも一つの手だ。

結局のところ、銅ランク冒険者が成功するかどうかは、その人がどれだけ『冒険に飛び込む覚悟』を持っているかで決まる。

ある意味では、働くうえでの姿勢と何も変わらんよ」


ロリアンはギルドマスターとの面談を終え、部屋を出ようとしたとき――カルブレヒトが、もう一度声をかけた。


「最後にひとつだけ、忠告しておこう。常に備えを怠るな。自分を鍛え続けろ。何かを学ぶたびに、それが君の『履歴書』を豊かにし、依頼に選ばれる可能性を上げてくれる。

そして、絶対に忘れるな。『冒険を選ぶのは冒険者じゃない。冒険のほうが、冒険者を選ぶ』んだ」


その言葉にロリアンは胸を打たれ、深くうなずいてから部屋をあとにした。


――――――


部屋の外では、オマックがマスターとの面談を終えるのをロリアンが待っていた。

やがて扉が開き、オマックが出てくる。

その直後、彼はトルガに呼び止められ、何やら言葉を交わす。


――そしてオマックは、ロリアンの元へと歩いてくる。


「で、どうだった?」


「うん。……トルガさんが、弟子にしてくれたべよ」


「マジか?そんなにあっさり決まるもんなの?」


「うん。筋力と耐久力のテストで目立ったから、トルガさんが『良い戦士か狂戦士になれる』って言ってくれて」


「で、これからどうするの?もうホム・クロスに戻るの?」


「いや、しばらくギルドにいるべよ。みんなにちゃんとお別れ言わねぇといけねぇし、ロッドからもらったお釣りも返したいからな。それから荷馬車で帰るつもりだ」


「……そっか。じゃあ、また会える?」


「もちろんだべ。たまに手紙送るよ。マスターが読み書きを練習しろって言ってたし、大冒険者になるための勉強としても、こうして遠くからでもみんなと話せたら、おいらにもいい訓練になるべ」


ロリアンはオマックを抱きしめ、しっかりと別れを告げた。


――――――


その後、彼はいつもの図書館に向かう。

そこには、相変わらず機嫌の悪そうな老管理者の姿があった。


「昨日の休みは満喫できたようね、ロリアン。今日は地図コーナーを全部整理し直してちょうだい。配置を変えるから。

それと、カルタン・セレリアヌス・ティロフィルスの新しい地図一式が届いたから、それも整理するのよ」


「は、はい……」


『……地図コーナー全体を変える必要あった?』


――――――


午前の勤務が終わろうとする頃、フェクサー、ベトリック、ロッドの三人が図書館を訪ねてきた。


(フェクサー)「アハハ! なるほど、ここがチビの脳みそトレーニング道場か。いや〜鍛えてるな! ガハハハ!」


「しっ!ここは図書館なのよ!静かにしなさいっての!」


(フェクサー)「んだと?今、干からびたスルメが何か言ったか?」


――四人は図書館の外へ出て、話を続ける。


(ベトリック)「ま、短い冒険だったけど、もう終わり……というか、これからが始まりかもな。とにかく、僕とロッドはメルドラに戻るぜ。師匠が元ローグだし、 メンタリングを頼めないか聞いてみようと思う」


(ロッド)「俺は早くクラス決めないとヤベェ。試験に受かった意味なくなるし」


(ベトリック)「だから言っただろ?受ける前に決めとけって。お前、全然聞いてなかったじゃん」


(フェクサー)「オレはターヴェスに戻るぞ。そっから首都に行って、狂戦士のメンター探すんだ。この美しい筋肉を早くクズ共の顔面にぶち込みてぇしな!」


(ロッド)「お前、冒険者っていうか警官みたいだな」


(ベトリック)「ま、ともかくロリアン。頑張れよ。連絡は取り合おうぜ」


(ロッド)「そうだな。新人六人衆が全員昇格したら、俺たちだけのパーティーを組んで、みんなで依頼に行こう。報酬も平等に分ける。最強の仲間達ってやつだ」


(フェクサー)「そうそう! 次に会う時は、オレのビンタくらい余裕で耐えられるようになっとけよロリアン! ガハハハハ!」


ロリアンは三人に別れを告げ、再び仕事に戻った。


――――――


日が傾き始めた頃――

ルミが図書館に現れた。顔はやや疲れ気味で、手には巻物と本を数冊抱えていた。


「やっ、ロリアン」


「ルミ?その顔……どうしたの?」


「ん〜……昨日のお酒がね、ダメだったみたい。しかも、銅ランクの冒険者ってお金にならないって気づいちゃって。急いで魔術師のメンター見つけないと、お金稼げないしヤバいよ、本当……」


「光魔法を勉強するつもりなの?」


「うん。ギルドのマスターに言われたの。『魔術師としてギルド内外で頭角を現すには、専門分野を決める必要がある』って。

だから、前に教えてもらってた魔法の先生に手紙を出して、推薦書もらおうと思ってる。もう半年も金欠のままじゃやってらんないしね」


ルミはロリアンに別れを告げ、出口に向かおうとしたが、その前に振り返って言った。


「ま、私たちってダンロレン出身の二人だけでしょ?だったら、お互いに近況報告くらいはしていこうよ。幸い、私この図書館よく使うし。何かあったらちゃんと教えてよ、坊や?」


「う、うん!」


***


日が暮れ、ロリアンはなんとなく満ち足りた気分で一日を終えた。


『みんな合格したあとでも、こうして連絡を取り合える……試験が終わったからって、誰も僕のことを無視しなかった。僕……やっと【友達】ができたんだ!夢を叶えて、しかも仲間まで手に入れるなんて!』


ロリアンは両手で頬をパチンと叩いた。


『そうだよ、ロリアン!これは始まりにすぎない!明日からはメンター探しを始めて、最初の依頼計画を立てよう。しっかり調べて準備すれば……18歳までに昇格だって夢じゃない!】


「ロリアン!今日の新聞を取って、書庫にしまってちょうだい!」


「はーい!」


ロリアンは新聞を手に取り、見出しに目をやった。


【太陽神の息子消失す──】

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