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Dawn of Champions(ドーン・オブ・チャンピオンズ)  作者: LÉO LIMA


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プロローグ⑫:魅力のテスト ― 第一部

ロリアンが入った部屋は、どこにでもあるギルドの事務室のような、質素で事務的な空間だった。彼が働いている図書館の管理室とも、あまり違いはない。


目の前には、最終試験の試験官が座っている。


『彼は……オースメル・ヴェントリネイ。吟遊詩人外交官、銀ランク。聞いたことがある。

このエルドールでは有名な俳優であり、王国の主要な外交官の一人だ。かつてバヴァリン王国との貿易戦争を防いだこともあるという――』


オースメルは金髪で整った顔立ち。貴族のような華やかな衣装をまとっているが、態度は冷徹そのものだ。書類に目を通したまま、ロリアンを一瞥することさえしない。


沈黙が部屋を支配する。ロリアンの心臓が高鳴り、足が凍りつく。


「座るのに勅令でも必要か、小僧?君に与えられた時間は5分だ。次の受験者が待っている」


ビクッと震え、慌てて椅子に座るロリアン。しかしオースメルは相変わらず書類に書き込みを続ける。


「1分経過した。冒険者になりたいのか、それとも私の美貌を鑑賞しに来たのか?」


「あ、その……テストが始まるのを……待ってまして……」


「テストは君が今朝ギルドの門をくぐった瞬間から始まっていた」


ロリアンの目が大きく見開かれる。


『テストは朝から始まっていた……?ということは……オースメルさんは僕たちがギルドに着いた時から観察していたのか?』


ロリアンは無意識に頭を下げ、明らかに動揺している。オースメルの沈黙と冷たさが彼を押しつぶす。


『落ち着け、ロリアン。これは最後の試験だ。魅力のテストは意志の強さ、表現力、感情の耐久力、コミュニケーション能力を測るものだ。彼は僕が何かを言うのを待っている……だが……何を?』


視線を上げたロリアンは、机の上の砂時計に気づく――すでに砂の大半が落ちている。


『まずい……時間が……。ベトリックさんの言う通り、これが人生最後のチャンスだと思わないと!』


「そ、その……僕は……ずっと冒険者に……なりたくて……」


「まさか。冒険者試験を受けて、すべてのテストを突破した者が冒険者になりたいだって? 君はきっと史上初の志願者だろうね」


鋭い皮肉がロリアンの胸を貫く。筋力のテストや耐久力のテストの痛みよりも深い傷を負った。


『これは……ベトリックさんが説明したのと違う。面接ですらなく……どうすれば……?』


ふと、一つの閃きが走る。


『待て……!オースメルさんは俳優でもある吟遊詩人だ。役を演じるプロだ。【試験は最初から始まっていた】というなら……最初から僕たちを観察し、役を演じているのかもしれない……!?』


無意識に、ロリアンは顎に手を当て、足を組んだ。まるで何かを分析する学者のように。


『もしオースメルさんがベトリックさんと僕で違う態度を取っているなら……役を演じているに違いない。僕の弱点を突くキャラクターで、社会的対応力を試している……! 

彼は……僕が内気なのを知っていて、感情的な弱点を克服できるかテストしているんだ』


ロリアンは顔を上げ、オースメルの目を見る――相手がまだ書類を見ていても。


『これは……友達を作るために勉強したことだ。アイコンタクトか、少なくとも顔を見ることは、非言語コミュニケーションの基本……』


「実は……僕はこの試験に受かるとは思ってませんでした。ただの視力の弱いガリガリ少年で、取り柄は頭だけですから。

でも8歳から、冒険者になるために必要なもの、足りないもの、手に入れられるものを研究してきました」


「つまり、自分が『未熟』だと認めるのか?」


「いいえ……正確には『わからない』です。でも……全力で挑んでいます。真剣なんです。子供の夢だけじゃ……ありません」


初めて、オースメルがロリアンと直接目を合わせる。背筋が凍り、冷や汗が浮かぶが、ロリアンは姿勢を崩さない。心臓の鼓動が耳に響く中――オースメルは書類を片付け、真正面から話し始めた。


「君は確かに並外れて聡明だ。知力のテストの解答速度や、筋力のテストでの工夫……だが、その知性で全ての欠点を補えると本気で思っているのか?」


「完全には……無理です。でも、クラスごとに得意不得意があるし、冒険者はチームで動くものです。僕の知性は……グループでこそ活きるはずです」


「それなのに、魔術師ではなく戦士志望だ。戦士に知性は不要だ。なぜグループが、華奢で非力な戦士を雇う必要がある?」


「僕が提供できるのは……別の戦闘力です。ヘスペリアの知覚種族や魔獣の弱点を研究し、コリシュマルド剣で訓練しました。

たとえ力がなくても、一撃で致命傷を与えられます。派手で破壊的な一撃じゃなくても、ちゃんと仕留められればそれで十分でしょう?」


「ふむ。では君は、必要とあればオークや人間を殺す覚悟があると?いくら勉強しても、口で『やるつもりだ』と言っても、いざという時に動けなければ意味がない」


「そ、そうですね……ごもっともです。でも……実際にやってみないとわからないこともあると思います。

経験豊富な戦士や魔術師でさえ、初めての任務では躊躇ったり、失敗したりするかもしれません。

……でも、それは挑戦してみないと分からないことです」


「つまり、任務の成功を賭けてまで君にチャンスを与えろと? もし失敗したら、チーム全員が詰むわけだ。冒険者として、そんな少年に賭けるのは賢明とは思えん」


「そ、それは……でも……新人冒険者は銅ランクですよね? 命懸けの任務は銀ランク以上の仕事です。僕が失敗するとしても、まずは小さな任務で――」


「また論理で弱点を誤魔化すか。……よろしい。君は判断力と理性に自信があるようだな」


ワイングラスを傾けながら、オースメルが核心を突く。


「では聞こう。任務の中で、どうやって仲間を説得するつもりだ?たとえ論理的に正しくても、人は理性の声に耳を貸さないことが多い。

恥ずかしさや恐れから黙って仲間を見殺しにするか?それとも、勇気を出して言っても無視されるか?誰にも聞かれない『正論』に、どんな意味がある?」


ロリアンは沈黙する――だが、深く息を吸い、答える。


「……わかりません。僕は……まだ子供です。いくら頭が良くても、すべての答えを持っているわけじゃない。

でも、僕は学ぶ意志があります。それは他の受験者、大人たちも同じだと思います。合格したとしても、僕たちはみんなこれから学んでいく。

だからこそ……僕は自分の学習能力を信じています。それが……僕の一番の武器です」


オースメルが立ち上がり、ロリアンの背後に回る。


「君は思ったより理性的だ。だが、この場で理論を聞くつもりはない。それはセンヴァリスが評価したことです。もし僕が模範解答だけを求めていたなら、筆記試験だけで十分だったはずです」


椅子に手を置き、冷たく囁く。


「全ギルド、そして全ての王国の統計によれば、冒険者試験の合格者の年齢層で最も多いのは18歳から25歳の間だ。君にはまだ5年ある――100%の準備が整うまでの時間がな」


「では提案だ。今すぐ退出し、5年後に再挑戦する。君の知性と準備力なら、90%以上の合格率だろう。統計が好きな君にはわかるはずだ」


「だがもし失敗すれば……マスターカルブレヒトに『二度と受験不可』を推薦する」


ロリアンは喉を鳴らし、顔色が青ざめる。


「これは、現実の人生を模した一例に過ぎないんだ、少年。現場の任務では、本当に死ぬことだってある。だが、もしもう少し待って準備していれば、生き延びて偉大な冒険者になれたかもしれない」


「それが私の提案の意味だ。そして、今日の全ての試験と同様に、この提案も実際の冒険者が直面する状況を想定して行っている。だからこそ、我々はその重圧に耐えうる者しか合格させない」


オースメルは机の前に座り直し、ロリアンと向き合う。


「それで、どうする?ここで全てを賭けて挑戦するか?それとも、撤退して、もっと準備が整ったときに再挑戦するか?君ほど理性的で論理的な人間なら、適切な選択が何か、わかるはずだろう?」


ロリアンは頭を垂れ、深く考え込む。


『待って……ベトリックさんは言ってた。オースメルさんは、僕たちを諦めさせるために、その人の弱点を突いてくるって……。でも……彼の言うことにも一理ある。少し待つだけで、何かが大きく変わるかもしれない。』


『僕の夢は……今すぐ叶わなくても、価値は変わらない。

エルドールのギルドの中で、僕が深紅の盾(クリムゾン・エジード)を選んだのは、ただダンロレンに支部があるからじゃない。一番憧れていたギルドだからだ。……このチャンスを失いたくない』


『僕は……自分でも驚くほど健闘した。筋力も耐久力も、落ちると思っていたテストを突破できた。知力のテストは完璧で、敏捷力と判断力のテストもそこそこ。……それが、たった13歳の痩せっぽちの僕だ』


『たった5年の準備でここまで来れたなら……あと5年あれば、数学的には合格の可能性は限りなく100%に近くなる。夢を叶えることを、今の意地で台無しにするなんて……子供じみた頑固さじゃ意味がない』


ロリアンは静かに椅子から立ち上がり、ドアへと歩き出す――

この章では、思春期の頃から最近に至るまで、漫画家になりたいという夢に対する自分の不安をすべて物語として表現しました。オスメルの言葉は、かつて自分自身に対して抱いていた否定的な思いそのものであり、それが夢への挑戦を先延ばしにさせ、努力を避け、いつも全力を出せずにいた理由でもあります。


一方で、ロリアンは、夢にしがみつきながらも、それを守ろうと理屈で自分を納得させ続けていた、自分の中のもう一つの側面を表しています。漫画という夢は、自分にとって「生きる」意味そのものであり、ある意味で本当に自分の命を救ってくれたものでもありました。


この章は、そんな長年の不安や葛藤を、中世ファンタジーの物語という形に落とし込んだものです。

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