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飼育員さんの初めてのお客さん(20)

「な、何!?」

「…………ドラゴン?」


眩い光が収まるとそこには白いドラゴンがいました。

大きさはティーアの半分の大きさもありません。

ドラゴン種にしては小さいタイプのドラゴンのようです。

しかし、そのドラゴンはティーアの目線くらいの高さをふわふわと飛んでいました。

その姿は全身真っ白で美しさすら感じさせました。


「……一体どこから?」

「何だ?このドラゴンは?」


突然現れたそのドラゴンにワイバーンに乗った男も疑問を隠しきれません。


(やっと分かったかい。ようやく出れたよ)

「……誰?」

「どうしました?ルージュ?」


突然、ルージュがワイ周りをキョロキョロしながら何かを探すような表情をしました。


「…………声が……声が聞こえる。でも、どこから?」

「声?何も聞こえませんけど……」


それでもルージュは彼女の言う声の主を探しているようでした。

しかし、そこ声はティーアには聞こえません。


(やれやれ、僕の声が届いてない?)

「もしかして…………この声は白いドラゴン?」

「えっ?声が聞こえる。ティーアにも。しかしこれは……」


ルージュが認識できた瞬間にティーアにも声が聞こえました。

しかし、それは耳に届く声では無いように感じました。

なんというか頭に直接語りかけるようなそんな声でした。


「お、お前ら何を言ってる?この状況でおかしくなったか?」

(彼には聞こえないだろうね。これは君たちにしか届かない声だから。)

「やはり、ドラゴン。あなたですか。」


そのドラゴンと目が合いました。

その時確信が持てました。

この声は白いドラゴンからでした。


(そうだね。やっと、ルージュが僕の望むビーストテイマーとして一歩を踏み出しから生まれることが出来た。君には感謝するよ。)

「あなたが望む?」

(まあね。僕と共にこれから生きるものとしての心得みたいなところかな。)

「…………私と生きる心得……」


白いドラゴンの言葉にルージュはしっくりきていない様子でした。

勿論ティーアも今のところはさっぱりでした。

もう、何がなんだか…………


「ああ!もう何だお前らはこいつが原因か!何だ!こんなチビ!」

「何を!?」

「きゃっ!」


声の届かない男にはティーア達がドラゴンのせいでおかしくなったように見えたのか従えるワイバーンを操るとティーアをくくりつけたまま一旦飛翔すると白いドラゴンに襲いかかりました。

ドラゴン同士の対格差は歴然。

ワイバーンの方が明らかに大きいです。

ワイバーンの大きな爪で一瞬で肉薄します。


(…………僕は僕の役割を果たすよ。守るんだ)

「何!?」

「…………光ってる。」


ワイバーンの爪が刺さろうとした瞬間に白いドラゴンがまた光りに包まれました。

すると鋭い爪が刺さる前に弾かれました。


(君もそんなのと一緒にいない方がいいよ。)

「キーッキーッ!!」

「ぐわっ!おい!どうした?ぐわっ!」


そして、ドラゴンがまた呟くとワイバーンは急に暴れだし男を振り落としました。

その瞬間にルージュがワイバーンに駆け寄りティーアの縄を外してくれました。


「ティーア!」

「あっ、……ルージュ。ありがとう。」

「バカっ!バカバカバカ!こんなことしても誰も喜ばないんだからね!」

「……すみません。」

「キーッ!」


ティーアは思わずルージュを抱き締めました。

ルージュはティーアの胸のなかで涙ぐみながらティーアの胸を叩きました。

まるでティーアが無事なことを確認するかのように。

ティーアが無事に足から降ろされるとそのワイバーンは何処かへと飛んでいってしまいました。

飛び去った後には落ちて頭を打ったのか男が気絶しているようでした。


「ところであなたは……」


ティーアが白いドラゴンに呼び掛けます。

白いドラゴンは既に光りは失っていました。


(君が一生懸命背負った卵さ。君がようやく僕のお願い通りにルージュをビーストテイマーにしてくれたから生まれることが出来たのさ。)

「…………じゃあ、やはりあなたはアスカさんの持っていた卵の…………」

(まあね。生まれたばかりで名前も無いけどね。)


その白いドラゴンはやはりあの白い卵から生まれたものでした。

でも、何故この瞬間に孵化を?しかもティーアがルージュをビーストテイマーにしたとは?


「…………足りないもの。私分かった気がする。」


先に声を上げたのはルージュでした。

目を真っ赤にしてはいますがその顔は少し大人になったように見えました。


「誰かを守りたいっていう気持ち。私、ビーストテイマーなりたいしかなくて本来ビーストテイマーの持つべきその気持ちを忘れてた。でも、さっきティーアが連れていかれそうになったのを見て思い出したの。その大切な思いを。」

「ルージュ…………」

(そう。君はなりたいなりたいばかりだったからね。でも、君のお陰で思い出したみたいだよ。僕からお礼を言うよ。)

「そんな、ティーアは…………」


ティーアのすべきことをしたまでですから。

これもティーアはアスカさんから学んだことです。

そんなに誇ることでもありません。


「ううん。ティーアのお陰。だからもうあんな危ないことしないで。」

「…………そうですね。ティーアもこりごりです。ごめんなさい。」

(じゃあ、早く行こうか。そろそろ彼らが来る)

「彼ら?」

(そこを出れば分かる)


そう言って白いドラゴンは出口を指し示しました。

その指示にルージュが先に動きました。


「行こう!」

「はい。」


ルージュがティーアの手を取ると立ち上がりそのまま扉に向かいました。

白いドラゴンが後に続きます。

そして二人で扉を開けました。


「開けるよ?」

「はい。」

「「せーっの!」 」


重い扉を開けるとそこは外でした。

辺りはすっかり夜になっていて真っ暗でした。


(来た!上!)

「え?」

「あれは…………クオール?」


白いドラゴンの声でティーアとルージュが上を見上げるとそこには大きな塊がありました。

周囲を火の灯りに照らされて浮かび上がるそれは紛れもなくドラグニア王国最強のドラゴンクオールでした。

そして…………


「ティーア!!」

「アスカさん?」


クオールからアスカさんの声がしました。

その瞬間。


「全員突撃!!」

「「「おおー!!」」」


クオールからたくさんの兵士達が降り、クオールの周囲を取り囲んでいた飛竜達が一斉に降りてきます。

その中には兵士に守られながらこちらに来るアスカさんもいました。


「ティーア!」

「アスカさん…………何故ここに?」

「もうバカ!当たり前でしょう!ティーアが心配だったんから。もう大丈夫だよ。」


駆け寄って来たアスカさんに思いっきり抱き締められました。

その横では勇ましい声を上げて兵士達が次々と中に入って敵を捕縛していきます。


「…………助かったみたいですね。」

「ええ、勿論。」

「良かったで…………す。」

「?ティーア!?」


ティーアは一気に気が抜けたのかその場で気を失ってしまいました。

その後の事は全然覚えていませんでした。

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