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飼育員さんの初めてのお客さん(18)

「…………これも、ダメ。結局は出口が分かんないとどうしようもないのよ。」

「まあ、そうですよね。やはりそこが問題です。」


それから二人で幾つかここからの脱出案を練ってはみるもののこれぞというものは中々見つかりません。

今いるところからは何とかなりそうなんですがどこに行けばいいのかそこが問題でした。


「ったく……あいつは何で違う方に行ったの?そして戻ってこないってことは結局捕まった訳?居なくなるなら道を教えてからいなくなりなさいよ。」


ルージュは途中で別れたロックに対して文句を言っていました。

今となっては遅いですがその気持ちはティーアも見に染みてます。


「まさかこんなところでロックの必要性が出るとは…………ティーアもあの時は逃げるので精一杯でここまで考えていなかったです。ロックの話ではティーア達が曲がった十字路を真っ直ぐということでしたが…………もしかしたら時間さえ取れれば探すことは出来るかもしれません。そこに活路を見出だすことにしましょう。」

「…………となると少し粗っぽいけど…………これを使いましょうか。でも、本当にあんたの言うとおりになるの?」


そう言いながらルージュはルージュはティーアがこの部屋で見つけた白い粉を手からさらさらと流します。

その粉は白い岩を削って取れる粉で白石粉(はくせきふん)なんて呼ばれています。

これはとても用途が広くてドラゴンに対しては飼料に混ぜて栄養補助に使ったり、岩竜系のドラゴンには体に擦り付けて表皮を守るのに使ったりします。

ドラゴン以外では農地の肥料なんかにも使ったりするらしいです。

そんな便利な白石粉ですが一つ問題点があります。

水に濡れると発熱するのです。

だから保管も厳重で水気のない場所というのが必須条件の代物です。

ティーアはそこに可能性を見いだしたのです。


「大丈夫です。少ない量ではあまり効果がありませんがここには白石粉はある程度はあります。それとこの大量の干し草を使えばいけるはずです。」

「…………はあ、ここはあんたを信じるしか無いわね。やりましょうか。」


日がすっかり落ちるまでに準備をしてティーア達はその時を待ちました。

積まれた干し草の塊の一つは今、白石粉で真っ白です。


「…………今更ながらこの竜舎が火事になったりしないわよね?」

「ここの壁は石で出来てます。きっと大丈夫ですよ。」


前に白石粉を雨に当たる所に置いてて側にあった材木が焼けたなんて話を聞いたことがありますがここは石の壁ですし、緊張事態です。

だからちょっと壁が焼けるくらいは多目に見てもらいましょう。


「じゃあ、いきますよ。外の確認お願いします。」

「うん。」


ルージュに合図を出し外の状況を見てもらい、ティーアは持っていた水をその白石粉で真っ白になった干し草に持っていた分全てをかけました。

水をかけてから少し間があった後に少しずつ焦げ臭い臭いがしてきます。


「よし。第一段階は上手くいったみたいです。このままどこかに火がつけば…………あっ!」


期待通りに干し草に火が着きました。

白石粉自体は発熱するだけですがとても高温で側に燃えるものがあれば火は着きます。

そこを狙っていたのです。

ティーアはその部分に駆け寄り種火を絶やさないようにしました。


「ふーっ、ふーっ。消えないで。このままこのまま。」


ティーアの願いが通じたのか種火は積み上げられた干し草をエネルギーに次第に拡大していきました。

後は…………


「ルージュ!成功です。外はどうです!?」

「うん。今なら大丈夫。」

「じゃあ、行きますよ!」


後は覚悟を決めて扉を開けたまま部屋を飛び出しました。

勿論通路中に煙を流すためです。

そしてティーアとルージュは声の限りに叫びました。


「「火事だー!!!」」

「「火事だー!!」」



ロックの示した出口の方向へと全力疾走しつつ何度も何度も叫びました。

干し草の部屋から通路に煙が漏れてきて通路が煙に覆われ始めます。

その間もティーア達は叫ぶことを止めませんでした。

すると大声と煙に気がついたのか遠くから多くの足音が近付いてくるのが聞こえます。


「よし。第一段階は成功みたいです。どこから敵が出てくるか分かりません。一旦隠れてますよ。」

「それは分かったけど…………どこに?どこから出てくるか分からないのに…………」


ティーア達はちょうどロックと別れた十字路のところまで来ていました。

まだ運良く誰にも見つかっていませんし、ここまでたどり着いていないということはここから距離のあるところに集まっていた可能性があります。

ということはこの近くは今のところは安全です。


「ルージュ!ここから出口側へ向かって最初の部屋に隠れます。まだここに誰も来ていないということは近くには誰もいないということです。今なら見つかりません。早く!」

「そんなの……ほとんど勘じゃない…………しょうがない。分かったわ!」


ルージュは一瞬困惑したようでした。

まあ、そうでしょうね。

だいぶ推察的な話ですから。

でも、論より証拠です。

と言うよりもう後に引くことなんて出来ませんからルージュも従うしかないんです。

出口方向へと向きを変え再び走り出すとすぐに部屋が一つありました。

ティーアがその部屋の扉に手をかけ開きます。


「ここです!」

「…………もう!一か八かじゃない!入るわよ!」

「入ったらすぐに閉めます。」

「分かってるわよ!」


勢いよく扉を開けるとルージュを押し込みその後にティーアが入りすぐに扉を閉めると二人で息を殺しつつ外の様子を伺いました。

ルージュはティーアの側から離れずにがっちりとティーアの肩を掴んでいました。


「火事はどこだ!」

「うわっ!何て煙だ。」

「すぐに火元を探せ!」

「この部屋だ!応援に来てくれ!」


外では何人いるかは分かりませんが男の人の声が複数聞こえ、たくさんの足音が行き来しています。

その足音は火元であるはずのあの干し草の部屋へ一様に向かっていました。

煙も先ほどの時点でだいぶ通路に満ちてきていました。

あまりの煙の量なのかティーア達が潜む部屋にも漏れ始めていました。


「足音が側で響かなくなりました。皆火事に気が向いています。…………行きますよ。煙が充満してきてます。体を低くして。」

「よ、よし。も、勿論、準備はしてるわ。」


若干声を上ずらせながらルージュが答えます。

ルージュが緊張しているのが手に取るように分かりました。

ティーア自身も外のたくさんの足音を聞いていると怖くてたまらなくなります。

見つかったらという不安感が心のなかに渦巻きます。

でも、今は目の前で自分を奮い立たせているルージュのためにも勇気を振り絞りました。


「…………じゃあ、行きましょう。」


再びティーア達は部屋の外へと飛び出しました。

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