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飼育員さんの初めてのお客さん(17)

「これは…………干し草?ということは……ここは干し草置き場の部屋ですかね?」


ティーア達がロックに指示された部屋に入るとそこはそこそこの広さの部屋でティーアの背の高さの3倍ほどまでに積み上げられた干し草の塊が幾つかありました。

ロックは何故ここに?


「ちょっと!何ボーッとしてんの!?早く鍵かけないと!」


後から入ったルージュが即座に扉を閉めて鍵をかけようします。

確かに鍵は付いているようですが…………


「あっ!もしかしたら…………ルージュちょっと待ってください。鍵はかけてはダメです。」

「何でよ!?見つかっちゃうじゃないの!」


ティーアはルージュに鍵をかけるのを止めさせました。

当然ながらルージュはティーアのその行動が理解出来ずにいました。

だからティーアは提案しました。


「違うんです。今鍵をかけたらこの部屋に誰かが隠れているのが逆にバレます。だからここはやり過ごしましょう。」

「やり過ごす?どうやって?」

「とりあえずこの大量の干し草を使いましょう。早く!追っ手が来るかもしれません。方法は…………」


ティーアはそれが上手くいく自信こそありませんでしたが一か八かで行動に出ました。

これが上手くいけばだいぶ時間が稼げるはずです。

それから二人で急いで準備をして追っ手が来るのを待ちました。

来ないに越したことはなかったのですが運悪くティーア達のいる部屋の外まで二人組でしょうか、声が近づいてきていました。


「………来ますよ。ルージュ。」

「う、うん。」


ティーア達は息を殺してその隠れた場所にじっとしていました。

そしてとうとう外でしていた声が中に入ってきたのです。


「…………ここは干し草置き場か?」

「ああ、そうみたいだな。…………隠れるのにはちょうどいいな。」


その男二人は部屋の中を探し始めました。

ティーアは手に汗が広がっていくのを感じます。

隙間から確認するに手には身長ほどの槍を持ち腰には短剣を携えているようでした。

見つかれば一瞬です。

男達は辺りの物置の裏や用具入れの中をくまなく探しています。

ティーア達のいる場所との距離はほとんどありません。


「どうだ?いるか?」

「…………いや、いないな。」


一通り探して見つからず男達はそんな事をいい始めました。

…………お願い早く出ていって!

ティーアは隠れている場所からそう祈りました。


「…………でも、この干し草の固まりの中はまだだな。」


ビクッ!

ティーアに最大の緊張が走ります。

心臓この音が耳元で鳴るようにドクドクと聞こえてきました。


「じゃあ、この槍で刺してみるか?中にいたら感触があるからな。」

「じゃあ、おれはこっちのを…………」

「「せーいの!!」」


男達は思いっきり槍を干し草に刺しました。


「…………感触無しか。そっちはどうだ?」

「こっちもだ。ここにはいなさそうだな。」


そう言いながら二人とも名残惜しそうに更に何度も何度も干し草に槍を突き立てます。

しかし、帰ってくる手応えはやはり干し草でしかなかったようでした。


「次の所に行くか。」

「ああ。」

「…………」


そう言うとやっととりあえず男達は部屋を後にしました。

ガチャリと、扉が閉まると一気にティーアの緊張が溶け全身の力が抜けました。


「…………はあ。何とかなりました。ルージュ。大丈夫ですか?」

「…………寿命が縮んだわ。干し草を調べられた時は心臓が飛び出るかと思ったわよ。」

「…………もう大丈夫そうですね。降りましょう。」

「ええ、干し草が痒くてたまらないもの。」


ティーア達は身体中に着いた干し草を払いながら中から出ました。

そう。

高く積まれた干し草の塊の上部から。

正確には干し草の影になっていた棚から。


「しかし、こんなのよく成功したわね。」

「完全に一か八でした。あそこの棚は完全に積み上げられた干し草の影になっていたので気付かなければ分かりません。それに普通は人を探すときには上じゃなくて下を探しがちですから。盲点です。」


ティーアの作戦はこうでした。

物が置いてあった棚をティーアとルージュが入れるスペースだけ空けてそこの前に高く積まれた干し草の塊を置きそこの裏に隠れたのです。

その棚は人の目線より高く、見上げて見ないと気付きません。

案の定さっきの男達は干し草の塊の下の部分は気にしましたが上の方までは見ていきませんでした。


「とりあえずこれで当分は来ないでしょう。念のため今度は鍵をかけて扉にこの鋤でつっかえ棒をしましょう。」

「分かった。もう干し草の中は嫌だしね。」


ティーア達は改めて扉に鍵をかけて、更につっかえ棒等で補強をして誰も入れないようにしました。


「ふう。これでよしと。一旦は安心ね。」


ルージュが額の汗を拭きながら言います。

態度には見せませんがここまでの緊張の連続と全力疾走で相当体力を消費しているはずです。

でも、ルージュのことです。

きっとこの状況で自分から疲れたとは言わないでしょう。

だからこちらが先手を打ちましょう。


「少し休憩しましょう。ティーアはくたくたです。」

「……しょ、しょうがないわね。体力ないんだから。少しだけよ。少しだけ。私はこんなとこすぐにでも出たいんだから。」

「はい。助かります。ここ、ルージュもどうです?」

「…………どうしてもというのなら座らないこともない……」

「じゃあ、どうしてもお願いします。」

「…………分かったわ。」


ティーアはそう言って側にあったちょうどいい木のは箱を裏返して腰かけました。

それを見たルージュも口から出る言葉とは裏腹にティーアの誘いを受けてティーアと座る幅を半分にして箱に腰かけました。

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