飼育員さんの初めてのお客さん(9)
「ところで今日私はどこに寝るわけ?私はベッドじゃないとダメだからね。」
晩御飯の後ルージュが尋ねてきました。
さすがに今日1日働いて疲れたんでしょうね。
あっ、そういえば考えてませんでしたね。
どうしましょうか。
あいにくお客様用のベッドとかありませんし。
「うーん。そこのソファーとかじゃダメですか?一晩だけですし。今はベッドが余って無いんですよ。」
「あんたそれ本気で言ってる?この私にそんな固そうな所で寝ろと?」
突然来たのに中々無理矢理な事を言っていますね。
とは言ったもののどうしましょう?
「んー?じゃあ、私のベッドで一緒に寝る?いいよ。私は……」
「それだけは絶対に嫌!」
アスカさんの提案をルージュは即座に拒否していました。
この1日でかなりのトラウマを埋め込まれたようです。
このままでは何を言い出すか分かりませんし…………
…………しょうがありませんね。
「じゃあ、ティーアのベッドを使いますか?」
「へ?」
「だから、ティーアのベッドを使っていいですよ。」
「…………いいの?」
いいかと言われれば嫌ですが仕方がありません。
全く世話が焼けますね。
「ええ。ティーアは……」
「そう!ティーアは私と一緒に寝るの!」
「…………アスカさんは少し黙っててください……」
「……ティーアのいじわる……」
ティーアに煙たがられて拗ねているアスカさんはほおっておきましょう。
どさくさ紛れで色んな事をしてくる人です。
ティーアだってアスカさんと寝るのは怖いですからね。
「じゃ、じゃあどうすんのよ?」
「ティーアは自分の部屋のスペースに寝床を作りますよ。さすがにソファーは無防備ですし。」
前に窓際で寝ててアスカさんに唇を奪われそうになりましたしね。
椅子に丸まって寝れば1日くらいは大丈夫でしょう。
「あ、…………うん。分かったわ…………ち、違う。そ、そうよ!最初からそうすればいいのよ!」
「えー。いいなあ。ティーアの部屋で二人ー」
ルージュは一瞬顔を緩めましたがすぐにまた悪態をついて見せました。
アスカさんは……ほおっておきましょう。
「…………ねえ、ねえってば。」
「……はい?今度は何か?」
ルージュはその後もお風呂は外でティーアが見張っていないとアスカさんが怖いと言ってティーアを外に待たせて、ずっとティーアに声をかけてきて見張っていることを確認していました。
またお風呂あがりには髪が長いので乾きにくいとティーアに髪を拭くのを手伝わせていました。
そして、やっとベッドの中に入ったのです。
ティーアは結局色々と考えましたがやっぱり今日は椅子の上で寝ることになりそうです。
と、思ったところでのルージュからの声でした。
「あんた、本当にそこで寝る気?寝づらくないの?」
「まあ、そうですね。仕方がありませんよ。」
まあ、言っている本人のせいでこうなってるんですが。
でも、部屋の外でアスカさんに襲われるよりはだいぶましです。
「…………そ、そのあなたがもしよければ……その一緒に寝ても……ううん。あなたが私に対して献身的だから特別に!一緒に寝せてあげるわ!」
「……そんな声をあげなくても聞こえますよ。一緒に寝てもいいんですか?ティーアはその方が助かります。」
何をむきになっているのでしょうか?
でも、狭いとはいえやはりベッドで寝たいですしね。
ルージュはそれを聞いて一瞬はっとした顔をしてもじもじしていました。
「そ、そうね。いや、私は渋々よ。そう……渋々。これであなたが体を悪くして明日着いてこれなくなるのも困るというか…………と、とにかく!私が許可するわ。ここで寝なさい!チビなんだから大丈夫でしょ。」
「…………はいはい。ありがとうございます。」
「そうそう。素直にそう言えばいいのよ。」
ルージュはご満悦といった顔でベッドの端をティーアに譲ってくれました。
扱いが難しいのか簡単なのか…………もしかしたらティーアに悪いと思っていたのでしょうか?
とにかく椅子で寝ることは回避出来ました。
「じゃあ、お休みなさい。」
「うん。寝坊したら私がたたき起こすからね。」
少し狭いですが寝るには問題ありませんでした。
とりあえず早く明日になってもらいましょう。
慣れないルージュに教えながらの今日の仕事のせいか疲れきっていたティーアはすぐに眠りに落ちていきました。
誰かと寝るなんて何時ぶりでしたっけ?




