飼育員さんの初めてのお客さん(8)
「あっアスカさんやはりここでしたか。もう、相変わらず集中すると何も聞こえなくなりますね。」
「あっ、ティーア。お帰り。もうそんな時間か。」
散歩も終え戻るとアスカさんは書斎兼研究室で何かに熱中している様子でした。
「あれ?ルージュは?一緒じゃないの?」
「……誰のせいだと思ってるんです。ルージュならここには二度と入らないと外で怯えてますよ。」
「んー?何だっけ?楽しかった記憶しかないけど。」
自分のやったことをどれだけ美化してるんですか?
ま、アスカさんらしいですけど。
アスカさんは何かを観察していました。
ティーアはそれに見覚えがありました。
「あっ!アスカさんそれって前にも見せてくれたドラゴンの卵ですよね?それから何かありました?」
そう。そこには以前見せてくれた白いドラゴンの卵がありました。
しかしこの卵は不思議なことにいくら時間が経っても孵化の兆しがありません。
それどころが中で成長しているのかすらアスカさんにも分からないのだそうです。
「んー。それがね、さっき少しだけ変な事が起きたんだ。」
「変な事?」
アスカさんの一言が非常に興味をそそり中を覗きますが卵は至って変わりなくそこにありました。
「うん。うっすらと中が光った気がしたんだ。こんな現象見たこと無かったから今まで調べたんだけど分からなくて…………」
「アスカさんでも分からないって…………それいつ起きたんです?」
「ん?さっきルージュの着替えを手伝って一旦外に出て戻って来たときかな?ふと見たら光ってたんだよ。」
…………ああ、あの時ですね。
もしかしたらアスカさんが興奮しすぎて見間違えただけかもしれないですね。
でも、アスカさんがそんな事しますかね?
「まあ、もう少し調べるよ。何か分かるかもしれないし。」
「そうですね。ルージュのことは任せて頑張って下さい。」
「おっ!すっかり先輩気取り?」
「…………違いますよ。ルージュがアスカさんに対してトラウマを背負っているのでティーアがカバーしてるんです。」
「そうなの?おかしいな、スキンシップ取っただけなのに。」
…………それが問題であることに気が付いて欲しいのですが。
アスカさんはいかにも自分に非はないといったような様子でした。
「まあ、それはルージュも慣れますよ。ところでアスカさんティーア達は明日どこに行くんですか?ティーアの準備もあるので教えてもらえると助かるのですが…………」
「あっそうそう。さっきそれも返事が来たんだよ。」
…………やたら早いですね。
早すぎて怖いんですけど。
でも、ティーアの知ってるアスカさんの交遊関係からすると選択肢は限られてきます。
「………で?何処なのでしょうか?」
「それはね、…………ちょっと予定が変わったんだけど…………ドラグニア軍。」
「ドラグニア軍?」
まさか、アスカさんが自分が辞めた軍にお願いしてるとは……てっきりフラミーさんの所だろうとティーアは想像してました。
「そう。最初はフラミーの所がいいかなと思ってんだけどフラミーの都合が悪くて急遽ね。大丈夫よ。中を見させてもらうだけだから。変に扱われることはないよ。」
やっぱりフラミーさんが第一候補だったんですね。
都合が悪いとは不運です。
ティーアもフラミーさんの方が安心感がありますし。
とはいえ…………
「よく辞めたところで許可が降りましたね。」
「まあ……ね。ザハスに私からのお願いってしてら…………一瞬だったわよ。しかも、本人が直々に来たのよ。…………さっさと追い返したけどね。大丈夫!玄関すら跨がせてないから。…………はあ。」
「……はあ。お疲れ様です。」
そう言うアスカさんのは思い出したのか少し疲れが顔に出ていました。
…………物凄くその現場に居たかったです。
だって疲れ知らずのアスカさんを疲弊させるなんてティーアには出来ませんから。
「……とにかく丁重に扱うって言ってたからそんな心配しないで。それにドラグニア軍の竜舎を見るのはティーアにとってもいい経験になるからしっかり見てきなさい。」
「はい!分かりました。」
ティーアも話に聞くドラグニア軍の竜舎には興味があってので嬉しいです。
しっかり見てきたいと思います。
…………しかし、何か忘れてる気がしますが……気のせいでしょう。
「アスカさん。これからどうします?一応ティータイムにでもしようかと思ってんですが……」
「あー、そっか…………ルージュと二人でやってて。私は卵の件でもう少し調べたいから。時間もないし。」
「……あっはい。」
アスカさんの珍しい言葉にティーアは驚きました。
普段からドラゴン関係には周りが見えなくなることは多々ありますがこういう団らんの時間はしっかり確保していたんですが……あと、時間はとは?
どういうことでしょうか?
しかし、アスカさんはその後はすぐに調べものに入ってしまいティーアとこれ以上は邪魔出来ないと部屋から出ることにしました。
本当に珍しいです。
結局アスカさんは晩御飯まで出て来ませんでした。
しかも部屋から出てきての開口一番が……
「あー!分かんない!!ティーアお腹すいた!!」
ですから。
とてもアスカさんらしいです。
「はい。準備は大丈夫ですよ。今日はルージュにも少し手伝って貰いました。」
「え?ルージュって料理出来るの?」
「ふふん。当たり前だ。」
ルージュは薄い胸を反らしいかにも私がやったという顔をしていました。
「…………野菜を洗っただけですけどね。」
「な、な、何よ?ちゃんと野菜を切ったじゃないの!」
「あれは切った分類に入りません。」
だって人参を大きく3つにしたのと玉ねぎを2つ切っただけですから。
「あと、玉ねぎを2つに切って目が痛いと泣かないで下さいね。」
「あー!それ、アスカの前で言わないって言ったじゃない!なんで言うのよ!」
「そうでしたっけ?」
「わざとねー!このロリ!」
ルージュは恥ずかしい秘密を暴露され真っ赤になって怒っていました。
だって面白かったんですもん。
切った手で目を擦るから余計に涙が出るのに気が付かないで泣き続けるルージュは。
アスカさんにも見せたかったです。
「ふふっ。仲が良いねえ。ちょっと妬けちゃうなあ。」
ティーア達を見ていたアスカさんが突然こんな事を言い出しました。
でもそう言う割には妬いてるというよりは嬉しそうです。
「はい?別にティーアは…………」
「そ、そうよ。誰がこんなロリと!」
「はいはい。私にも分け前欲しいなあ。それ!」
「ぎゃあああ、放せえ!この変態!」
「うーん。それは無理!」
アスカさんはルージュに抱きつくと両手を精一杯使いスキンシップを取っていました。
ティーアは鍋を持っていたので被害は免れました。
さすがにアスカさんとはいえ鍋には突撃なしないようです。
また一つ学びました。




