飼育員さんの初めてのお客さん(6)
「あーっ!楽しかった!」
「…………」
それからどれくらいたったでしよう。
書斎から元気よくアスカが出てきました。
いつもよりなんだかツヤツヤしていました。
後ろからなんだか弱ったルージュも一緒に出てきました。
「終わりましたか?ルージュ。その格好似合ってますよ。」
「…………ああ。そう。」
「ティーア!ティーア聞いて聞いて!ルージュはね。ティーアよりちょっとだけ小さいわ。私の目で見たから間違いないわ。」
うーん。だいぶやられたようですね。
いい気味です。
というか何が小さいのでしようか?
…………そんな事よりルージュの着替えも終わったので仕事に取りかからないと。
「じゃあルージュ行きましょうか。せっかくなんで仕事はしっかりしてもらいますよ。」
「…………て言うか私がこんなになってるのに優しい言葉は無いわけ?」
優しい言葉?
愚問ですね。
「アスカさんにああやって捕まるのは何もルージュだけでは無いですから。結果としてアスカさんに頼むのがいけないのです。」
そう。
ティーアもアスカさんも悪くありません。
頼んだルージュが悪いんですよ
アスカさんはコントロールなんて出来ませんしね。
ティーアはさも当然のようにルージュに教えてあげました。
「あんた…………ここでどんな教えをアスカから受けてるの?」
「?普通ですけど?」
「…………」
「さあ、行きますよ。仕事はたくさんありますから。」
ティーアは中々回復しないルージュを引っ張るように竜舎に向かいました。
「さてと。ではまずブラッシングから始めましょうか。ドラゴンとのコミュニケーションが大事です。基本的にはドラゴンは頭がとてもいいです。敵と見なさなければあまり危ないことはありません。じゃあ先にティーアがやってみますね。」
そう言ってティーアはドラゴンのいる檻の中に入りました。
今回はルージュが初めてということもあり一番大人しいというかのんびり屋のコックです。
よくブラッシング中に寝てしまうくらいののんびり屋さんなので初めての相手としては絶好の相手です。
「では、コック始めるよ。どう気持ちいい?」
「フーフー」
ティーアが優しく首筋からブラッシングを始めるとコックは気持良さそうに目を閉じ甘えたような声をあげます。
「と。こんな感じです。最初はドラゴンに話しかけながらやるといいかもしれません。」
「ふん。こんなの楽勝よ。」
ティーアが一通りやってみせるとルージュを檻の中に招きました。
ルージュは余程自信があるのかずかずかと檻の中に入りティーアからパッとブラシを取りました。
ルージュはそのままコックに近づくとブラッシングを始めました。
「こうでしょ?簡単簡単。私を誰だと…………きゃ。」
「ブーブーフー」
「わっ!何よ?何?」
ところがブラッシングを始めた途端にコックが怒りだし体を大きく震わせました。
それに驚いたのかルージュが可愛い声を上げて後ろに下がりました。
「それではダメです。もっと優しくしないとルージュだって力一杯体を洗われたら痛いはずです。ドラゴンだって一緒です。鱗に沿ってやらないと。」
「……………ぬ、むう。こう?」
ティーアに注意されるとルージュは以外と素直に言われた通りにブラッシングをし始めました。
さっき驚かされたせいか今度はつきが幾分か慎重になっていました。
「フーフー、フッ。」
「そうそう。その調子です。見てください。コックも気持ち良さそうでしょ?」
「ほ、本当だ。見て見て!とってもこの子気持ち良さそう。」
今度は上手くいったのが嬉しかったのかルージュがとても嬉しそうにはしゃいでいました。
なんだ、そういう顔も出来るんじゃないですか。
「…………な、何よ!?ち、違うわよ!嬉しくてはしゃいでなんかいないんだからね!」
「…………何も言ってませんが。」
ティーアの優しい眼差しに気付いたルージュが必死に弁解してきました。
それって逆に認めてる事を意味してませんか?
「ううう…………とにかくこの子は私に任せない完璧にしてあげるわ!」
「分かりました。お願いしますね。」
とりあえず大丈夫そうなのでコックはルージュに任せてティーアはコクルとヤットのお世話をするために向かいました。
その後は特に問題もなく仕事をしていました。
さすがはビーストテイマーです。
動物に対する対応力はやはり高いようです。
次はドラゴンを連れた散歩です。
前はドラゴンに引っ張られ続けていたティーアですがアスカさんほどではありませんがやっとドラゴン達をコントロールしながら出来るようになりました。
しかも三匹いっぺんに移動できるようになりました。
これが初めて出来たときは本当に嬉しかったです。
今回ルージュにはドラゴン達をティーアと一緒に誘導してもらいましょう。
「ではルージュ今度はドラゴン達を散歩に連れていきます。近くのアスカさんの草原までです。そこで三匹で運動させます。」
「なーんだ。遊ばせるだけ?私はすることないじゃない?」
「いえ、ルージュはティーアと一緒に草原まで誘導してください。ちゃんと案内しないと暴走して危ないですから。」
「はいはい。楽勝楽勝。」
ルージュはさっきのブラッシングが上手くいったためか余裕があるようでした。
今回はどうでしょう。
「じゃあルージュはコックをお願いします。ティーアはもう二匹を担当しますので。」
「余裕ね!任せなさい!」
「では…………行くよ!コクル、ヤット、コック!」
「「「クワーフー!」」」
「ちょ、ちょっとコック待ちなさい!」
ティーアの合図を号令のように三匹のドラゴン達が一斉に草原に向けて走り出します。
それを見て焦ったルージュがコックを追いかけていきました。
…………昔、ティーアにもそういう時代がありました。
でも今は違います。
「コクル、ヤット、コック、止まれ!」
「「「コー!」」」
「はあはあ、あれ?」
ティーアの出す号令に今度はピタリと三匹が止まりティーアが行くまで待っていました。
ルージュはやっとの思いで追い付きましたがピタリと綺麗に止まっている三匹を見て不思議そうでした。
「ルージュー大丈夫ですよー」
「最初からそうしろー!!!このロリ!」
「はいはい。次は気を付けますよ。」
遠くでルージュが叫んでいました。
目的地に着くと三匹を放ちティーア達は少し休憩です。
「とまあ、これで後は三匹を遊ばせておきます。ティーア達はちょっと休憩しましょう。……ルージュ?」
「はあ、なんで…………はあ、私の言うこと聞かないわけ?」
ルージュは既にヘロヘロでした。
それもそのはずコックはあの後も自由に走り回り何度も追いかけていっていました。
いくらビーストテイマーとはいえ最初からドラゴンを扱うのは大変なはずです。
しかもルージュに合わないということですから尚更でしょう。
「まあ、最初から出来るんものじゃないですから。ここまで来れただけでも凄いですよ。」
「はあはあ、でしょ。とりあえず……少し休ませて。」
「ゆっくりしていいですよ。時間は結構ありますし。ほら飲んで下さい。」
ルージュはその場に倒れこんでしまいました。
ティーアは一応用意しておいた。
水を差し出しました。
「気が利くわね。頂いておくわ。……ぶはっ。」
ルージュはここでも口では偉そうに水を受け取り美味しそうに飲んでいました。
まあ、頑張っていたのでここは目をつむりましょう。
その後ティーア達はティーアがいつも座っている石に座り遊ぶドラゴン達を遠目にゆっくりすることにしました。




