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飼育員さんのお師匠さん(12)

「ですから、歩くときはこうです。」

「えっと………こうですか?」

「手の角度が違います。ここはこうです。」


アスカさんの所に行くまでずっとこんな感じでした。

アムルさんはティーアの歩き方がメイドではないと突然言い出し歩き方をいちいち注意してきます。

…………ティーアはメイドではないんですが。


「でも、今はドラグニア王城のメイドです。他からのお客様に失礼のない振る舞いをしなくてはなりません。全ての人がティーア様を見てるとお思い下さい。」

「……はい。」


あのー、顔が知られてないからティーアがアスカさんのメイドに任命されたのでは?

どうやらアムルさんのメイド道が許さないようでもうさっきの目立たないでくれというベールニック皇太子様の指示とは関係なくメイドの作法を叩き込まれています。


「こちらがアスカ様の部屋です。どうやら着替えは終わったようですね。中が静かです。」

「…………この距離がえらく感じました。誰のせいとは言いませんが。」

「…………では入りましょう。」


ティーアの言い分を華麗に流してアムルさんが先に入ります。

ティーアも続いて衣装部屋に入りました。


「アスカ様。失礼します。」

「アスカさーん。ティーアも来まし…………たよ。」

「やっと来た!ティーーア苦しいよー。ってあれ?」


ティーアはアスカさんの姿を見て言葉を失いました。

そこにいたアスカさんは言葉はとにかく、普段よく見るアスカさんとは別人でした。

全身赤のドレスを身にまとい、普段はバサバサの長い髪の毛は頭の上でまとめられ大きな花飾りが着いています。

化粧もとても上品にしてあります。

そこには何処かのお姫様と言っても全くおかしくなく飾られたアスカさんがそこにはいました。


「アスカさん!とても綺麗です。お姫様みたいです。」

「あっありがとう。…………ところで何でティーアはアムルと同じメイド服なの?こういうの着ないの?」


アスカさんが長いスカートをひらひらさせながら聞いてきます。

そうでした。

アスカさんとティーアは別の服なんでした。

しかし、何と誤魔化しましょう?


「えっと…………それはですね……」

「…………ティーア様は初めて見たときからアムルのメイド服をどうしても着たかったそうです。今日の品評会はお祭りでもありベールニック皇太子様からも許可を頂いたのでティーア様は今日このメイド姿で見るとの事です。」


アムルさんが助け船を出してくれました。

でも、今ティーアがメイド服を着たいとか言ってませんでしたか?

これではティーアがメイド服が好きみたいなんですが。


「へえ、ティーアってメイド服が好きなんだ?知らなかったな。」

「そ、そうなんです。ティーアは実はメイド服着てみたくて。アムルさんにお願いしたんです。どうですか?アスカさん。似合います?」


こうなったらアムルさんの言う通りにするしかありません。

ティーアは少し大袈裟にスカートの裾をつまみ上げその場で回ってみたりしてみます。

やはり、少し無理のある気がします。


「…………ふーん。じゃあ、一流のメイドとして私が育てないと。」

「…………はい?」

「大丈夫。初めてのメイド服はそれをもらうわ。後、フラミーに頼んで何着か仕入れないとね。ティーアに似合う可愛いの。大丈夫。ティーア任せなさい。」

「…………はあ、じゃあお願いします。」


あの、変な事態になったんですけど…………

アスカさんが最近見ない顔をしてるんですが…………怖いんですけど。


「申し訳ありませんがアスカ様。その話はまた後でお願い致します。そろそろお時間です。」

「へーい。じゃあ、ティーア行こう。」

「はい。そうですね。行きましょう。」


アムルさんが話を切ってくれたところでティーアとアスカさんはアムルさんの案内を受けて品評会の会場へと向かいました。

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